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【小説】SNSの悪夢


「社長が?」一瞬言葉が止まった。

「そう、自分なんだよ、君には悪いけどマスコミに発表って訳にはいかないな。」

「何故です?」怒りの籠った声になっている、相手にも解るようにわざと大きな声になる。

隣で聞いていた妻が少し体をずらして、耳をそばだてて居るようで、顔は動かしてはいないが、身体の位置が違っている。

「今はドラマの方が大事だろ、自分と彼女の恋愛が表に出てはいけないじゃないか。」尤もだが納得のいかない言葉だ。

「私のスキャンダルにするよりは良いでしょう、社長は目下独身だし。」放り捨てた言葉が響く。

「私は独身だけど会社の社長だから、色々書かれたりするじゃない。」

「私なら良いんですか?私は結婚しているからもっと不味いじゃ無いですか。」言い訳などまっぴらだ。

「今はドラマが控えているから、君と付き合ってると言った方が得策だと思う。

「私の事はどうでも良いんですか?」大声になる。

「もう少しして、ドラマが終わったら考えよう。」

「解りました。」

本当はちっとも解っちゃいない、今すぐに解決できるのに何故しないんだ、ブツブツ言いながら電話を見ている。

「どうしたの?問題が有ったみたいだけど。」様子を聞いていた妻が首を傾げ乍ら言う。

「彼女と付き合っているのは社長らしい、でも今は発表したくないらしい、ドラマを終えるまではこのままみたいだ、信じてくれるよね。」最後は懇願みたいになった、撮影となると家に居ない時間が多くなる、妻が信じられなくても文句は言えない。

「解っているよ、仕事なんだもんね。」いまひとつ納得していない顔で彼女が答える。

社長がハッキリ言ってくれると良いんだが、今は言えないって言ってるんだ、本気なのかもしれないな。」呟く。

「本気ならマスコミに発表したらいいのに、良く分からないわ。」彼女も解らないらしい。

「まあチョット待ってみよう、その間SNSはしない方が良いかもな。」

「そうなの、私もしない方が良いの?」

「そう君も名に書かれるか分からないからね、僕はどっちでも良いけど、君はショック受けるだろ。」

「そう言うなら私はしないけどね。」何時もSNSで料理を載せて、料理で仕事をしたいと言っていた彼女には嫌な言葉だったらしい。

「きっとドラマが終わったら、問題も解決しているだろうから、チョットだけ待っててよ。」

何だか彼女は納得はしていないみたいだけど、今はこんな風にするしかない。

自分のSNSの炎上の方が問題だと、心の中で考えていた。

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