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【小説】SNSの悪夢


会社に入ったら、直ぐには出てこないだろう、こちらもカフェでも入ってゆっくりしよう。

そう考えてビルの見える位置にあるカフェに入ってゆく、昨今の流行りの明るくて注文しやすいカフェで、ビルが見える側に大きな窓が有った、中ではホンの小さい音でポップスを掛けていた。

「いらっしゃいませ。」女性が水と使い捨てのおしぼりを持ってくる。

この店にはモーニングセットがある、それを注文する人が多いのか、直ぐに「お決まりですか?」の声。

「後で良いですか?」座ったばかりなのにと思いながら答えた、窓の近くが開いていて良かった、そう考えながら座っていたので、何を頼むか考えて無かった。

窓からビルを見ながらコーヒーを頼む、5階だったな、どんな仕事をしているんだろう、窓からでは何もわからない。

自分が不倫しているって騒いでも、あいつには本当の事が解らない様に、俺にもあの中は見えない、仕事してるんだろうくらいしか解ってないのだ。

あいつはそれでも騒ぐんだよな、コーヒーが来るまでボンヤリと考えていた。

「お待たせしました、ご注文のブレンドコーヒーです。」さっきの女性が持ってきた。

「ありがとう。」声を掛け乍ら見続ける、何の仕事かは知らないが、出てきたら付いていって調べてやる。

意外と本人が不倫してたりして、同族嫌悪ってあるからな~、暇だからゆっくりコーヒーを飲む。

これを飲み干したらどうしよう?

長時間粘るのも問題だしな、取り敢えず一度出て昼頃また来るかな、考え事で味も解らない。

問題が起きてから、食べ物の味を云々考えた時間が無いと気付く、人間は何が在っても食べて寝ないといけないが、ただ単に食べて寝るってだけだと、生きている感じがしない。

生活が奪われるってのは、生が奪われるって言っても良いんだな、ぼんやりした頭で考え、コーヒーを飲む。

朝早いし人を付けなければならないので、ここは出て違いところでビルの出入りを見るとしよう。

「ありがとう。」とレジを済ませると、次の場所を探しに出て、ビルの入り口を見つめている。

「あの~、もしかしたら俳優さんじゃないですか?ドラマで見かけた気がするんですが。」と歩いていると声を掛けられた。

ファンは有り難いが、名前も覚えて貰ってないんだから、俺はまだまだだな、これで長期に休むと、忘れ去られるのが目に見える。

それでも、ここは俳優だと知られない方が良い、声がした方にゆっくり振り向いて、こう言った。

「誰かとお間違いじゃないですか。」

「すいません、そうだよね、テレビ出てる役者さんが、こんな所に居る訳ないよね。」と返ってきた。


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