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【小説】SNSの悪夢

「行ってきまーす。」食べないんならと娘にお金を渡すと、さっきの不機嫌は無かったような声になる。

「行ってらっしゃい、ちゃんと買って食べるのよ。」そう言って送り出して、やっと一息つける。

食べないで、小遣いにしているかも知れないとか、遊びに行っちゃっているかもとか、疑い出したらキリが無い、もう考えない事のすると決めて1年以上だ。

若い時期に親に反抗して、「あんたも親になったら解かる。」と言われた、いまだにその言葉は理解できないが、反抗期は大変なのは分かった。

夫も子供も難しい、好きでパートで働いているんでは無い、出来たら正社員で働きたかった。

それを喜んでくれるだろうとの気持ちもあった。

「自分が勝手に仕事しているだけじゃない。」と娘に責められた時には、自分の気持に従ったら良かったと思った。

それでも、家庭の為にと思ってきたのは無駄だったのかも知れない、子供の頃、人は何故生きるのかと考えた時期がある。

今はそんな事より毎日の生活だ、ご飯は如何しよう、家が汚れているから、掃除をせねば、仕事と一緒で業務をこなす感覚だ。

そんな事は考えていないで食事を作ろう、自分と夫の食事は居る、最も食べて帰って来る可能性もある。

自分だけなら常備菜で済ますのに、無駄かも知れない料理を作る、食べなかったら違う料理にリメイクしよう。

この頃ではそんな小手先の家事が上手くなったな、自嘲気味に自分に向かっている。

夜ご飯だったのを朝や弁当の料理にして、使いまわしていない様に見せるテクニックだけが手に入って居る。

でも、今日は早く帰って来るかも、疲れた気持ちと体を引き摺りながら、夕ご飯の用意を始めた。



虚しさを噛みしめてから、マンションのあの女の部屋を見る、子供が出て行ってから、誰の出入りも無い。

『シングルマザーなのかな?』考えたが、もしシングルだったとしても、あのマンションに入って居るんだから、充分裕福なんだろう。

それとも、夫は毎日帰りが遅いのかも知れない、それでストレスの捌け口をSNSに求めているのか。

どちらにしろ、自分がした事には責任を取って貰おう。

言葉は勝手に発せられるんじゃない、自分で認識をして分かったうえで書き込んでいるのだ。

それがどんな状態を作るとか、どんな風に人の生活を壊すのかは、想像すれば解かる筈なんだ。

暗い家の中から、見つめながら考えている、きっと世の中が悪いとか、ネットのニュースが取り上げたとか、言い訳をするんだろうな、もし文句を言いに行ったら。

自分はそこ迄優しくない、同じ様にSNSで晒して、困らせてやる。



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