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【小説】SNSの悪夢

食事を終えて、明日もあの電車に乗りましょう、今度は動画を撮っておきましょうと、話し終えると、後はすべきことも無い。

「もう出ましょうか?」そう言って、透明の伝票入れから、レシートを取った。

「自分の分はお支払いします。」えりが慌ててレシートを掴もうとする、立場上、女性が払っているのは、見られたら恥ずかしくなる。

「いえ、私が来ていただいたのですから、私が払うのが当然でした。」えりが言葉を言い直した。

「今日は私が払って置きますよ、もしまた食事する事が有ったら、その時にはお願いします。」そう言った。

「そうですか、有難うございます、次は高級レストランって言うのは、無しですよ。」嬉しそうにえりが答えた。

男に奢って貰って当然という女たちを大勢見てきたから、珍しい女だなと感じていた。

明日また会う事にして、今日は別れて家に帰る、またあの箱に帰るのか、こんな時に人は酒を飲みたくなるのかも知れない。

寝ている時間まで、飲んで騒ぐ人たちの帰る所は、自分と同じで家では無く箱なのかも知れない。

自分は酒で紛らわすのを良しとはしないから、そのまま誰も居ない場所に帰るとするか。



身体の為にも早く寝て早く起きる事にした、あの一家を見ていると寝不足になる。

誰もがこんな生活なのか?自分が基準だと思っているから、普通の家庭の生活ってのが解っていない。

だけど誰もがこんなに寝不足じゃあるまい、皆が自分を苦しまている、こんな生活をしているから他人に当りたくなるんだ。

心の中でぶつくさ言いながら昨日は早く寝た、あの一家を見ていなくても、ほぼ昨日と同じ時間に出かけるのだろう。

早めに起きたので、ランニングで体を整える、以前はジムに行くのも欠かさなかったが、今はそれどころじゃない。

身体が変わっていっているのが自分でも解る、身体に鈍感になると、自身にも鈍感になる。

せめて走るかと考えた、シリアルにヨーグルトを掛けて、口に入れながらプロティンを飲み干す。

状況が変わると、人間は簡単に習慣を手放す、米に拘っていた自分は過去のいずれかに去った。

向かいのマンションを見ながら家を出る、明かりが点いている部屋も多い、オイオイまだ5時半だぞ、寝不足になるぞ。

顔も知らない住人に念を送ってから、ゆっくりしっかり走り出す。

走ると体が直ぐに暖かくなる、身体は運動した時の事を覚えていて、自分に従ってくれている様だ。

ゆっくりだった走りを早くして、足を広めに開けて、走って行く、20分ほど走った所で、戻って来た、そろそろあの男が仕事に出る時間だ。




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