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【小説】SNSの悪夢

立花はマンションを見張っていた、恨みは晴れた気がしていたが、何だか気になっているのだ。

あの男は警察に捕まって、帰って来ないんだろうか?ふと頭に考えが浮かぶ。

痴漢なんて弁護士に頼めば、直ぐに示談になるんじゃないのか、見た所男は帰って来ないけど。

まあ、一般的には痴漢で捕まったと聞いて、直ぐには弁護士に頭が行かないのかも知れない。もう終わった事なので、今は如何でも良い、なのに次を考えられない。

もう1人自分の炎上の原因になった人間は気にして居ないだろう、自分はまだそいつの方は何も調べていない。

あの女は夫が痴漢として逮捕されて、どんな反応をしているのだろう、何だか顔が見たい気がしている。

そんな事が楽しいのかと言われれたら、別に楽しいわけでは無い、自分のSNSでの発言で、夫が捕まったと認識しているのだろうか?

認識は無いだろうな、自分の言葉が正しいと思って居るだろうから、SNSには正義の使者が多い。

そこに居る人間は全てが、自分が正義たと思って発信している、ストレス発散より正義を貫くためだと考えているのだ。

今回、身内が晒される立場になって、正義の定義を考えただろうか、音声を出されただけでも、相当なダメージだ。

まあ、本人が何もしていなかったら、自分も発信は出来なかったのだから、自業自得だとも言えなくない。

どちらにしろ、家族に大変な負担にはなる、前のマンションに住んでいると言ってもローンだろう、払えなければ何処かに越すのか。

前は人の不幸を喜ぶ気にはならなかったが、自分が騒がれて妻や仕事が去っていった時から、少しずつ変わってきた。

自分の自尊心を棄損されると、他人の不幸が面白くなる、自分がこんな思いをしているのは、あいつらの所為なんだ、あいつらも不幸になれと考えてしまう。

この事態でやっと人間には自分では如何にも為らないことが有ると思った。

あの女も今まさにその気持ちを味わっているのだろうか?

前のマンションを見つめながら、スーパーで買ってきた弁当を食べている、昔は健康の為に作ったり、作って貰ったり、買っても健康な物だった。

それが如何だ、今は唐揚げ弁当を掻き込んでいる、仕事が戻ってもこれでは人前に出れないかな。

シャツを捲って自分の身体を見る、『まあ、いいか未だ身体は垂れてない。』以前より少しなまっているだけだ。

後で走ろう、見つめても変わらないだろう、自分の目的も自分の生き方も違ってきているのを感じながら、薄ぐらくなる部屋で、向かいを確認していた。

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