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【小説】SNSの悪夢

ああ忙しい、忙しい。

スーパーのレジって思った以上に忙しい、機械に通すだけでしょなんて言ったやつ出てこい、それだけじゃない。

返品も処理して商品の文句も聞かなければならない、商品はメーカーの問題だし、返品はサービスカウンターでやって貰えばいい。

レジに来なくても良いのに、レジが解り易いからここに来て話しかける、辞めてよーとは言えないから、結局時間が掛かってしまう。

交代して長時間ここに立たなくていいのが、この仕事を続けられる理由、それが無ければやっていられない。

交代して休憩になる、持ってきた弁当を出来るだけ素早く食べると、SNSを見る。

これが昼の楽しみ、ううん今の私の全時間帯の唯一の楽しみなんじゃ無いかと思う。

結婚していると我慢の連続で、子供が可愛いとか夫がたまに優しいとかでは納得できなくなってくる。

子供が自分で大きくなったような顔をしだすと、ストレスはもっと増えてくる。

この仕事も給料の割にストレスが多いとなると、拡散された情報を見て憂さを晴らすしかすることが無い。

先ずはインスタグラム、ここはキラキラさんの宝庫でツッコミどころは無い、Facebookも企業が多いみたいで、下手に文句を言うと問題になりそう。

ニュースを見てみて考えよう。

Twitterのニュースを見ると言っていい文句が見えてくる。

あっなんかある、ふんふん誰か俳優さんが不倫だって言ってるなー、この人知らないけどどんな人なんだろう。

結婚して十年以上の奥さんがいて、若い女優さんと不倫だって、そらいかんわー、この人にもんくいってやろう。

この人の名前と不倫相手の女優さんの名前、調べてインスタやTwitterで投稿してやろう。

貴重な昼休みは何時もこんな風に、自分のストレスの捌け口に充てていて、その時間が夫や子供に声を出して文句を言う私を押しとどめていた。

その頃の私は見も知らない俳優や女優の不道徳とか、政治家の言葉なんてどうでも良かった。

ただ単に自分の状況に文句が言いたかっただけで、その捌け口は何処でも誰でも良かったのだ。

見た事も無い知らない他人は自分のストレスの捌け口には持ってこいで、あちらにもストレスを持った人間が居て、その人間もこちらを見ているなんて考えは頭に過りもしなかった。

彼らのストレスに自分が巻き込まれるのは考えもせずに、そこに在る情報を自分の物として利用してストレス発散をするのしか考えられない。

それが大変なことを引き起こすとは思わなかった。



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