【小説】SNSの悪夢
夜になると不安が押し寄せてくる、夫が逮捕されると、それまで安全だった家がまるで安心できない。
急に強盗が来るわけでは無い、それでも安心できる場所が無くなった気持ちが根底に流れ続けている。
自分の夫に期待をしていたわけでは無いが、問題を起こす事はしないだろうと思う程度には信頼はしていた。
その信頼は根拠のないものだったのだ、不信感で絶望的になる、それにしても丁度良く動画撮影していたなんて、流れた音声にも不信感がある。
考えても自分に出来る事は無い、これまではSNSはストレス発散に使っていたけど、今は見るのも怖い。
明るい内に実家に連絡を入れた、夫はその内帰って来るのだろう、だけどここではもう生活できない。
子供が引っ越そうと言ったからには、ここには居たくない、先ずは実家に帰って仕事を探そう。
彼には悪いが、待ってなどいられない、ここで家族で生活するのは難しいだろう。
実家の近くの職場を探そう、ここまで来れなくはないが、出来る限り離れたい。
新しい職場、新しい学校、そう考えると希望が見えてきた、離婚するとかは後で考えていこう。
そう決めたら、携帯で仕事を探しながら、荷物を片付け始めた、思った以上に物が在る、早い目に終わらそう。
それでも、今の仕事も続けなければそれ程の貯えは持っていない、きっと誰も分からない、そう云い聞かせて明日は仕事に向かおう。
娘は学校に行けるのかしら、何もできないのに考える事由が多くて、優先順位が付けられない。
頭の中を整理しながら、片づけをしてゆく、こんな事でもなければ片付けなかっただろう場所をわざわざ探し出して。
マンションを見ていると、誰も出て来なくなった、きっと仕事を休んでいるんだろう。
信頼出来た人間が逮捕されたら、人間はどう対処するのだろう、立花は考えていた。
自分はまだ罪も確定して居ないのに妻は出て行った、裁判なら推定無罪と言うのに、人はそうはいかないのだ。
信じていたから裏切られたと思うのか?信じていなかったから、直ぐに罪を犯したと思うのか?
自分なら本人が罪を認めなければ、信じていようと考える、考えるのではなく考えたいというべきかな。
暗くなって誰も出てきそうにないから、少しジョギングをしてから、食べ物を買ってこよう。
どんな時にも人間は食べなければ為らない、本当は出来合いの弁当では無く、前に食べていた健康的な物を食べたい、チラッと脳裏によぎる。
だが、その考えを今は考えるなと言い聞かせておく。
きっとあの女は悪夢を見ている気になっているだろうな、SNSが自分に生活を脅かすなんて考えても居なかった筈だ。
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