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【小説】SNSの悪夢

「立花さん有難うございました。」警察から出ると、えりが近づいて話してきた。

「別に携帯を動画モードにしていただけですよ。」自分の中の復讐を外には出さずに言ってのける。

「でも、あれが無ければ信じて貰えなかったかもしれません、立花さんのおかげなんですよ。」

「そんな事は無いでしょ、2人の女性が痴漢被害を訴えているんだから。」そう答えた。

「男の人は解らないんですよね、女性が性被害を訴える難しさを。」溜息を付きながら、えりが続ける。

「そうなんですか?」余り興味なく答えて、えりを見る。

「そうですよ、男性優位で女性が喜んでいると思ってる男が多すぎるんです、女の方は気持ちが悪い思いをしているのに。」憤慨した様子を見せる。

「痴漢なんてそんなもんなんですね。」そんな男が居るんだ、女性の同意なく触っても面白くも無いだろうに。

「でも、証拠が有って良かったです、警察もちゃんと捕まえてくれたし。」そう言って、頭を下げる。

「そんなの関係無いですよ、何か有ったらまた連絡してください。」そう言うと少し離れた。

「立花さんも何か有ったら連絡してください、私で力になれることが有ったら。」言いかけた所で、手を振って離れた。

もう既に問題は起っていて、君には如何しようも無いんだよね。

彼女が出て行ったのがもう忘れるくらい前に感じる、自分の中でそんなに問題視して居ない。

どうでもいいと考えつつあるのに、復讐はしたいと考えている、矛盾する精神はただ単に意地のになっているだけなのかも知れない。


あの男が警察に捕まると、自分としてはもうする事は無い、そうだ音をSNSにアップしよう。

動画で無ければ、問題ないだろう、本人や家族は解るだろうが、他人には関係ない。

それでも、知っている人間には大問題だ。

動画は警察が問題にするかもしれない、だが日本に録音を流して問題になる法律はない筈だ。

早速、自分のSNSで今日の列車で起きたことを書こう。

○○電車の車両の○両目は痴漢が出るので有名だ。
今日も女性に手を掴まれて、警察に捕まった人間がいた、電車は問題が多いな。

『「どうです、この動画で手のほくろが見えますよね、その手が痴漢をしているのも解かる筈だ。」

「大体、チョット触られたくらいで、大げさなんだよ、スカート穿いてたら、触られるでしょう、嫌ならパンツで電車に乗ったら良いんだよ。」』

あの時の自分と、あの男の声が流れる様にした、これで知り合いには解ってしまうだろう。



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