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①10年間悲劇のヒロインやりました

こんにちは。デブスでオタクなままゼロ日プロポーズ、2歳の娘をもつワーママの町田さちです。


本日から三回連載で私の赤裸々・拗らせまくった結婚までの道のりを紹介したいと思います。お付き合いゼロ日でプロポーズされる2015年12月22日まで恋愛拗らせ歴12年。トホホな実態です。


第一話【恋愛拗らせ期】10年間悲劇のヒロインやりました。


高校1年生からオタクの祭典・コミケに出入りをし、オタクな世界にどっぷりの私。主に好きなジャンルは恋愛漫画や恋愛ゲーム。

大学受験が終わるや否や、平安時代へ主人公がトリップする恋愛シミュレーションゲームを買い込んで毎日のようにプレイ。ゲームの中のイケメンたちが、ちやほやしてくれて、可愛いねって言ってくれて、守ってくれる。


いいなー!!私もああやって抱きしめられたい、愛を囁いてほしい!!

よし。大学ではオタク臭を消して、彼氏作って、20歳までに処女脱却する!


どうやったら彼氏ができるかな。男性の多いところに行くか。

大学に入学し、吹奏楽部に入部。部活内には可愛い普通女子もいたけれど、圧倒的に男子が多く、デブスな私でもそこそこモテた。まさに自分の願った通り!このまま脱オタクを決心し、モテ雑誌でメイク・ヘアスタイル・服装を研究、普通の可愛い女子になるべく努力した。


でもさあ、生まれつきの美人や可愛い子には敵わないんだよね。


あの子、薄化粧というか眉毛描いているくらいだよね、何であんなに可愛いんだろう。あの仕草、あれは天然?それともわざと?白のフレアスカートが似合っていいなあ。足細ーい。なんて華奢な指先なんだろう。


努力すればするほど、自分のダメさが浮き彫りになる。落ち込むよね。


そんな頃、同じ楽器担当の身長184㎝のイケメンが気になる自分に気づく。彼が部内の別の女子と話してるとソワソワ落ち着かず、気にしないようにしても「どんな話をしているのか」思わず耳をダンボにしてしまう。やっぱり彼も普通の可愛い女子の方がいいよね、私みたいなオタク女子より…。


クリスマスコンサートの打ち上げで、私は相当酔っ払った。目線の先には気になる彼と可愛い女子軍団。気にしない、気にしないと思ってるのに「きゃははは」と笑う声が上がるたび、思わず見てしまう自分が嫌になって、先輩方からお酒を勧められるままに飲んだ。気づけば日本酒が3本目。美味しかったんだよね、OBがお酒詳しい人で。


美味しかったんだけど、ちゃんぽんしすぎてそりゃもう酔った。で、その勢いで私は彼にメールを送った。「多田さんたちと話してるのを見てイライラしてる自分に気づいた。私、佐伯君の事好きみたい」。


翌日の朝、自分の送ったメールを見て真っ青になった。あーもう自分ダサすぎる。何で普通に上手くできないの!!何でこんな文章?!普通に好きだよって送ればいいじゃん!!


自己嫌悪で布団から起きる気がしない。彼からメールが来ているけど恐ろしくて開くことが出来ない。なんか寒気もするし。ん?寒気?ヤバイ、なんかおかしいぞ。お母さんは旅行でいないんだっけ。ひとまず寝よう。その前にトイレ…。


その夜トイレで倒れているのを父親に発見された。40度超の熱で病院行きになりまして。結果インフルエンザ。彼からのメールは開けずにまだ放置。時間が経ちすぎてヤバイ。開けるの怖すぎる。絶対にドン引きされてる。


3日後。彼から着信がきた。メールをまだ開封できていない後ろめたさと格好悪さからくる恥ずかしさで隠れたくなりながらも「逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ」と言い聞かせ、電話に出た。「直接言ってほしい」とのこと。え?それって期待していいの?引いてないの?


年始に会う約束をして、その時に吐きそうなほど緊張して告白。あっさり「俺も好きだよ」と言われ、お付き合いになったのでした。


嘘でしょー?!この私が?!


恋愛初心者の私、それから毎日ワクワク。憧れていた「駅まで一緒に帰る」「手を繋いで出かける」「見つめあう」にドキドキきゅんきゅん。週末のデートでどこに行くのか考えて舞い上がり、何着て行こう、何準備すればいいのかなと大騒ぎ。今年はバレンタインデーにチョコを渡せる相手がいるんだよ。あーもう幸せ。これよこれ、私が求めていたのはこの世界!


ゲームの中のイケメンたちと同じく優しくて面白くて気が利くお洒落な彼氏にメロメロ。やった、普通女子最高!私、いけてる!


でも、付き合っていながらもずっと不安だった。「本当のオタクな私を知られたらいつか幻滅されるんじゃないか」「やっぱり普通の可愛い子がいい」って振られるんじゃないか。どうしよう、彼が思っているような女の子じゃないってばれたら終わりだ。


ばれたら終わり。だから必死でいろいろ隠そうとした。

でも、隠したくても暴かれるのが恋愛。恋愛っていうか、リアルな雄の部分に触れた時。


ある日。彼氏が雄モードに入った瞬間に、いよいよこの時が来たと思った。でも、思ったほどドキドキしない。むしろ怯んでる。なんだこれ、どうすりゃいいんだ。同人誌やBL小説で見てたじゃん、知ってるじゃん、大丈夫だよ、大丈夫。そうそう、キスして、舌入れて、で、で、で。嘘でしょ、マジで?え?ヤバイこれこんなとこまで。ヤバイ、化粧と服と余裕が無いと私、ただのデブスでオタクなことがばれてしまう!!


ダメだ。私、こんなリアル求めてない!!!!


「20歳までに処女脱却する」目標は達成した。達成したけど、リアルな雄を知って現実を知った。ヤバイ、これ、私の思っていた世界と違うぞ。


遠くから眺めていいなあと憧れ、一緒にいて心をときめかせ、ライバルの存在に悔しい思いをし、告白して付き合って、それでエッチして、二人は幸せになりました。自分が求めていたのはこの状態なんだよね?なのになんで?


混乱した私はその後なんだかんだと理由を付けて彼を避け始める。お母さんが体調不良だから。バイトが忙しいから。おばあちゃんの介護をしないといけなくて。

部活も休部した。彼の方から「何で避けるの」「いつ会えるの」と連絡が来ていたけど、今は時間が欲しかった。時間があれば考えがまとまって解決すると思ってた。ま、結局数か月経っても答えは出なかったけど。


そして、彼の方から別れを告げられる。「何を考えているのか分からない」
その言葉を聞いて、悲しくなった。でも同時にほっとした。もう逃げなくていいんだ。あんな恥ずかしい思いしなくていいんだ。


私、恋愛はしたかったけど、生身の人間とガチで向き合ってお互いを受け入れるっていうことがどういうことか、わかっていなかった。自分を全てさらけ出す勇気が無かった。デブスでオタクな自分をさらけ出したら嫌われると思ってたから。


デブスでオタクな自分が嫌われたら自分じゃなくなる。

だからそれを彼に晒す事になる前に別れて良かった。


そして私は、「体の相性がイマイチだったんだよね」と自分に適当な言い訳をして、振られたことに酔った。振られたけど執着しないですぐ手離したイイ女の振りをすることに酔った。


イイ男だったけど振られちゃった。いろいろ忙しくてね。相手できなかったし愛想つかされちゃった。「復縁しよう」と言われたこともあったけど、でも私、一度別れた人とはもう付き合えないなって、虚勢張っちゃったんだよね。彼ならぴったりのイイコがすぐ見つかるよ。彼が他の女の子と幸せになるのを陰から見守るわ。


私ってね、そういう女なの。誰かと付き合うなんて、無理なんだー。


そんなことを言いつつ、SNS上で彼の情報を探したり、吹奏楽仲間から彼のその後の噂を聞くたびにドキドキしていた。半年後、どうやら2歳年下の後輩と付き合い始めたらしい。その後輩は私の高校の後輩でもある。まだ私に未練あるのかも。

大学院を出て一流企業に就職したけど、その後転職した関係で彼女と喧嘩別れしたらしい。なになに?転職というかお笑いの学校に入ったの?あー、それで彼女は一緒にいられないって判断したのね。佐伯君だったらきっと成功すると思うよ。あの見た目だし、面白いし。一度給料が落ちるのはしょうがないと思うけどさ。

あーあ、私だったら彼のやりたいことを応援してあげるのに。私がバリバリ働いて支えるのに。糟糠の妻っていうの?彼の事、本当にわかってあげられるのは私だけかも。復縁したいとは思わないけどー。ま、向こうが付き合いたいなら考えてあげなくもないかな。あーあ、また会う機会ないかなあ。


彼のTwitterのつぶやきから、出るらしいイベントや番組をチェックする。某お茶の間アイドルたちのコンサートに行ったとか、年末は母親と過ごすらしいとか、そういう動向を見て、今頃何しているのかなと妄想していた。


そうして、気が付けば10年。拗らせ悲劇のヒロイン女子は28歳を迎える。


その頃、私の周りは結婚ラッシュ。吹奏楽仲間たちの結婚式にも多く呼ばれた。吹奏楽仲間の結婚式には元彼も招待されているので、毎回会えるかな、話せるかなと期待していた。先週のTwitterの感じだとまだ彼女はいなさそうだし、きっと彼もフリーだよね。仕事順調かな、面白い話聞かせてもらえるかな。


最初の1回目の結婚式では話す機会があった。でも、「元気?」「うん」その程度。ぎこちない。思ったほど話せないな。でもまた再来週も結婚式あるしその時に話せるかな。


でも、次の結婚式では話す機会がなかった。結婚式だけ参加して帰っちゃった。別の結婚式では披露宴での席が遠かった。


今日の結婚式でも結局話せないんだろうか。もしかして避けられてるのかな、私…。遠くの席からでも見える彼の姿。同じテーブルの他の人と楽しそうに話しているなあ。私も話したいのになあ。


折角可愛くして来ているのにな、と不貞腐れながら早くも4杯目のワインを貰う。高砂で幸せそうな笑顔を振りまく新郎新婦の姿。同じようにワイングラスを受け取る隣の席の同期が私に向かって言った。「ねえ、知ってる?新婦、まだ社会人2年目なんだよ。22歳。まだ遊びたい時期だろうに。よく結婚するよね」


言われて手元の案内のプロフィール欄を確認する。おいおい、28歳の男。お前オタクだったよな。昔から年下のちょっと素朴系の素直そうな可愛い子が好きだったけど、結婚相手は6つも下か。ため息が出る。「男って何でそんなに年下が好きなんだろう」という言葉が漏れ、ハッとする。


あれ?もしや私、売れ残り?


そういやこのテーブルにいる女子の中で結婚していないのは今話している同期と私だけ。その同期も付き合って3年目になる彼氏がいる。そして、同期の男子は元彼以外全員結婚した。結婚できないだろうと言われていたオタク男が今日結婚したんだ。しかも可愛い年下女子と。

そうか結婚できないと言われていたオタク男でも年下女子から見たら「頼りになる」「結婚してもいい」相手なのか。そりゃそうだよね、彼はおそらく30代で年収1000万円超えるだろうし。同期から見たらただのアホで痛い奴なんだけど…。


ちょっと待て、私、結婚なんていつでもできるなんて思っていたけど、もしかしてヤバイ?この会場には独身男性が何人いる?気が付けばいつの間にかみんな私以外の他の女の子と結婚してる…。


え?私が元彼がどうしているかなーってTwitter見ている間に、みんな結婚したの?私一人残った?ってことは私は誰と結婚すればいいの?元彼?元彼にアタックするしかない?


どうする。この避けられている状況でどうする。ひとまず今日話さないと。話して今度会う約束取り付けないと。私の焦りなんて知らず、今回も披露宴が終わった途端に元彼は消えてしまった。帰っちゃったんだ…と呆然とする私に、相変わらず派手め美人の多田さんが答える。

「え?佐伯君?なんか仕事が忙しいみたいだよ~。この前イベント見に行ったんだけど」え?見に行ったの?「そう~。なんだかんだ連絡取りあってて」え?なに?連絡取りあってるの?!


「一人残る」「結婚できないかも」という事実と「私以外の女の子と連絡取りあっている」という現実に焦った私、元彼にメールを送る。


「話せなくて残念だったな。仕事忙しいらしいね?今度ご飯行こう!」


今度は変なメールじゃないよね。でも期待させたらどうしよう。別にがっついているわけじゃないんだけどさ。ほら、話せなかったし。ね?ご飯食べながら仕事の話聞くだけだし。別に重くもなんともないでしょー。


そわそわしながら送ったメールへの返信は一週間待っても来ない。アレ?どういうこと?返信もしたくないって?多田さんとは連絡取りあってるっていうのに?


その時、夢見る夢子はようやく現実を見る。


私、もしやなんも脈ナシ?あいつの動向気にしてたのは私だけ?


あんなメール送らなければよかった!!!


10年間、こちらからは何も連絡を取っていなかった。で、今回勇気を出してメールを送ったのよ?ご飯行かない?って。ちょっと話したいなーって。でもそれにあなたは何も反応しないの?!そんな程度なの?私の存在って?!


完全な逆ギレ。分かってる。これはただの逆ギレ。彼にとってはもう終わったことで、過去の彼女なんてどうでもいいだけ。メールが来たけど「いきなり気持ち悪いな」程度にしか思ってないのよ。


分かってるけどね、分かってるけど。私にとっては大きな勇気がいる行動だったのよ!!今まで遠くから見ているしかなかった、あなたの挑戦を見守るお姉さん的な気持ちだった。彼女と別れて、今後もしかしたらまた付き合う可能性がちょっとはあるかなとか思ってそわそわしてた。


メールぐらい返しなさいよ!!


妄想の中では「夢を追いかける彼とそれを支える糟糠の妻の図」が完全に出来上がっていた私。現実はただの結婚できない売れ残り女。そのギャップが受け入れられなくてぶち切れた。


勿論こんな自己中心的な怒り、当たるところなんてどこにもない。結果、過食に走った。毎日コンビニに寄ってスイーツとスナック菓子を買う。夕飯後に恋愛小説を読みながら食べる。はー、小説の中での男女は再会したときにぎこちないけどそれなりに会話してるわよ。それに比べて何なのよあの男は。挨拶しかしなかったわよ。


そしてどんどんと体重が増えていった。正確に言うと10年の間にじわじわ増えていた上で、過食してどんどん増えた。気づいたら18歳のころに比べて10㎏も増えていた。まあどうにかなるでしょ、全然平気でしょ!


…嘘だ。全然大丈夫じゃない。


ある日いきなり冷静になった。というか落ち込んだ。猛烈な怒りが消え、目の前が真っ暗になった。ダメだ。どうしよう。私、結婚できない。まずい。やばい。恥ずかしい。何してたんだろう。イイ女ぶってたけど、ただの痛い女じゃん。ただの売れ残りじゃん。ただのオタク女じゃん。


もうやだ。穴があったら入りたい…。


その頃転勤と転属があり、慣れない仕事にもストレスをため込む毎日。とにかく面白くなかった。仕事も嫌だった。「売れ残り女」「一人で生きていくために仕事を頑張らなきゃ」と思うのに頑張れない。だって彼氏がいないんだもん。だって結婚できないんだもん。


毎日暗い顔で仕事をしている私に当時の上司が勧めてきたのが他の支店で開催される「勉強会」でした。「僚店の人と交流してリフレッシュしてきなさい」という配慮だったんでしょう。


その勉強会がきっかけで、私は変わる決意をすることになります。


ということで次回は実際婚活を始めたお話。

第二話:デブスでオタクな女に近づくのはダメンズだけ!!

お楽しみに。


2020年12月14日 町田さち

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