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そんなにライターになりたい?

2月はやたらと色々なことを頑張ってしまった。「夢に向かって」は全然進んでいないけど、なんか色々やった。そして疲れてしまったのか、一歩進むのが怖いのか、3月に入ってから脱力しきっている。

noteをのぞく頻度もガクッと少なくなり、そして気づいたら私のタイムライン(って言う?)は「毎日書き続けるコツ」みたいな投稿で埋め尽くされていた。

そういう時期なのかな。楽しく読ませていただいていて、勉強になるお話も多くて、でも別のところでふと思う。みんな「何かになりたくて」書いてるんだなあと。小説家になりたい!ではなくても、書くことで、何かを得ようとして、何かになろうとしている。

創作とは少し違うけれど、noteに限らず世の中には、「ライター志望」という方や、「本業ライター」「副業ライター」という方がたくさんいる。なんでだろう。なぜ「書く」ことを仕事にしたがるんだろう。

私はどうかと言われると、まあ「書く」ことを仕事にしたがっているうちの一人ではある。ただ、厳密には「書くことで稼ぎたい」ではなく、「やりたい仕事のなかに書く”作業”もある」。そして、ライターなんて「絶対やりたくない仕事」の一つ。だって、すっごくつらい仕事だと思うもん。

今回は、あくまで、実用書の編集者としてライターさんと関わっていた立場からの見方だけれど、あえてドライに、失礼を承知で、本音を書いてみようと思う。

ジャンルやメディア、出版形態などなど、色々な要因によって「ライター」という職業の性質・実態が異なってくるのはわかっています。そして私がいた会社がブラックすぎただけという可能性もあるので、あくまで私が直接見てきたものだという点はご了承ください。


■ライターという仕事

ライターって、下請けの下請けの下請け。原稿を書く、ゼロから1を生み出す張本人であるのに、立場は一番下で、発言権も与えられなくて。予算が足りなくなったとき、まずカットされるのがライターのギャラです。

職業ライターにとって書くことは、基本的に自己表現ではない。自分が書いたものを、編集や著者、そして読者にもボロクソに言われるし、何万字という原稿を全部リライトさせられることだってある。

私みたいな、ひよっこで企画立案もディレクションもまともにできない編集者に当たったらさらに大変。取材執筆はもちろん企画構成も全部、実質的にはライターがやってくれた、なんてことも、私の経験上、あります。

そして、こんな若輩者にすら、「明日の夜まで会議室取っておくので今からパソコン持って来てください。私、目の前で読んで直すので」って脅される中年のライターさんもいた。

「プロであるとは試合に出続けることである」という言葉があるけど、書こうと思ってもいつでも書けるものではないのだろうし、文章力も簡単に鍛えられるわけじゃない。そもそも、文章がうまい・普通・下手と分類したときに、下手も何も、文が「成り立っていない」人、多いと思う。プロでも山ほどいる。一緒に仕事するの、つらい。本人はもっとつらいと思う。


■ライターになりたがる人

実際、ライターになりたがるのは、どんな人なんだろう? ツイッターやnoteではよく見かけるけど、明確にライター志望という知り合いはあんまりいない。

私のイメージと独自の調査によると、ライターに憧れる人の志望理由は、「自由に働きたい」「書くことが好き」「あなたの文章が好きと言ってもらうのが好き」……うーん、うがった見方をしすぎかな。

働き方という意味でライターに憧れる人は、どちらかというとフリーランスとか副業という側面を重視してるような気がする。書くってシンプルな作業だから、カフェでゆっくりパソコンに向かって、好きなときに休みをとれて……みたいなイメージなんだろうか。

私も書くことは好き。ただ、書けるようになるための努力がいまだできていない。自分のことや舞台、漫画の感想を書くのは好きだけど、書くと一言で言っても実用書なのかインタビューなのか、テーマは何なのかとか……全然違うし。


■ライターをやっている人

私が実際に見てきたプロのライターさんたちは、大きく3つのタイプに分けられると思う。複合技の人もいるけど。

・売れるほど価値のある情報を持ってる
ライターである前にまず、その道のプロであって、とにかく知識量が半端ない。または、それについて書ける人がその人しかいないというレベルで唯一無二の存在である。著名人も含む。

・取材が好きで人と話すのがうまい
新しいことに関心があって、人と仲良くなるのが早くて、深く・広くネタを引き出すのがうまい。構成力とか書く能力よりコミュニケーション能力に長けているタイプで、書籍より、インタビュー記事とかコラムが得意。人柄も文章も感情表現に富んでる。

・話を再構成してわかりやすい文章にできる
本の虫とか、執筆中毒の部類に入る人。そもそも知識があるし、よく調べるし、情報を整理して、構成を組み立てて、言葉を丁寧に矛盾なく、並べていく。ツールとして言葉を扱うので文章の温度感は低め。

共通しているのは、誤解を恐れず言い切ると「組織で働けない人」であること。ただ、「協調性がない」とか「社交性がない」みたいな「マイナス要因」でもなくて(人と関わることに後ろ向きだったらライターってかなり難しいと思う)。いろんな意味で、「就職するという考えがなかった」「就職しようと思ったけど気持ち的に無理だった」「会社員になってみたけど1年しか持たなかった」という感覚の人が多い。


■ライターになれない人

ライターになれない人って、いないと思う。ぶっちゃけた話、下手くそなライターはたくさんいる。むしろ、一緒にお仕事してきたなかで「うまいライターさん」って、5人に1人もいないんじゃないかな。

ライターのうまさにも種類があって。取材が上手、構成力がある、企画意図をくみ取るのがうまい、みたいな、書く前段階の能力。文法の間違いが少ない、内容が正確である、っていう、書く上で基本的なこと。そして、平易な言葉で書き下せる、難しい表現を使いこなせる、感情が伝わる文章を書ける、っていう表現のテクニックの問題もある。

企画によって、どういうライターさん当てるか、どこの弱さには目をつぶるか、というのも重要だったりするんですよね。インタビュー書いてもらったら絶品だったのに、他はまったく使い物にならない、とか。そして編集者と著者との相性がいいかどうかも大きい。


■ライターをやれる人

お金を稼ぐ以上、ライターも同じ「仕事」なんだけど、なぜか楽しくて、好きなことを仕事にしてて、自由で、みたいな、そういうイメージがつきまとう。

書くことが好き、と、楽しく書けることについて書いてほめてもらうのが好き、は、まったく別物。自分のためじゃなく、人のために書けるか。書きたいから書く、読んでほしいから書くではなく、読みたい人のために書けるか。

でも結局のところ、ライターです、って、言ったもんがち。だって本読んでてもオンラインニュース読んでても、へたくそな文章いっぱいあるでしょ。仕事もらえたらライターだから、うまいか下手かじゃない、仕事にするかどうか、なんだと思う。


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