見出し画像

アラブの小学校の制服と、シンデレラ。共通点はロングスカート

「学校指定の制服は白シャツとグレーのロングスカートです」

長女はアラブの子供達が多く通う小学校に通いました。入学あたり、制服についての指示が冒頭のセリフ。どうしよう、困ったなと思う自分がいました。小さな子供がロングスカートを履いて元気に遊ぶイメージが持てなかったからです。

まず、学校の校則も臨機応変なのがアラブ流。家族ごとに何が大切かを判断します。先生のあのメッセージで我が子にとって大切なのは、「白いシャツと、グレーのボトムス」と決めました。「指定」の制服もありますが、素材が悪く価格は高い。どの人に聞いてみても、当然の様に、各家庭ごとに揃えていいとの事でした。地元のモールやスーパーでも、季節になると制服コーナーが特設されます。シャツは白、青、ピンク。パンツやスカートも、紺色、グレー、黒と色分けされ、デザインや素材、丈の長さも何種類かありました。私はここで、長女が自分で着られる事と、暑さ対策&動きやすさ重視で娘の制服を決めました。白いポロシャツに、グレーの膝丈スカートだったと思います。


びっくりしたのは、ママ達が自分でデザインし、テーラーで生地を選び、制服を誂えていた子供たちが多くいたこと。子供が好きなリボンがあったり、ボタンが工夫してあったり、見てすぐに兄弟姉妹がわかることも面白いなと思いました。


ロングスカートを履く子たちも多く見かけました。これは学校指定の制服がロングだから、最も正統派。一瞬、その服でどうやって遊ぶの?と思いたくなるくらいの長さ。ぴったり床まであるスカートで、「かわいそう」という気もしたのですが、本当にかわいそうなのか?答えはNO!これは、アラブの学校に行かなかったら分からなかった事の一つですが。器用にヒョイと捲し上げて遊具を駆け上がる子供達。見ていてハラハラするのですが、何てことなくロングスカートを扱っていました。


小さい頃からロングスカートを履くというのは、むしろ、ロングスカートの英才教育なのかもしれません。

世にはロングスカートを履く大人達は沢山います。当地では、床まで擦りそうなくらいに長いのが好まれるようですが、スカートに足が絡まったり、階段でつまずきそうになったりしている人を私はこれまでで一度も見たことがありません。

むしろ、私は一度小学校の門の前で、すってーんころりんした事があります。(ロングスカートではないのに!)「まあ!」普段大きな声を出さない女性たちが、驚いた声で即座に助けに来てくれました。恥ずかしかった~。

きっと小さな頃から、ロングスカートで遊んできた人たちなら、道を歩くのも、階段も、何でもできるのだと思います。



例えばシンデレラを思い浮かべてください。

彼女は階段で靴を落としてしまいます。その後、ガラスの靴がぴったり合うということが証となり、王子様がシンデレラを見つけ出すという大切なシーンがあります。

ここで、もしもこの時に、ドレスが足に絡んで、彼女が大階段から転げ落ちていたらどうだったでしょうか。ガラスの靴はおろか、ストーリーは悲劇へ。その場合は、こんなにも多くの人の心をとらえるシンデレラストーリーにはならなかったかもしれません。


舞踏会の会場で王子の手を振り切って、その後時計の針の音を聞きながら、馬車へと走り切ったシンデレラ。彼女は、どれほど焦っていた事でしょう。だって、魔法が解けてしまうのだから。いや、焦りなんて、感じなかったのかもしれません。ミッションを可能にしたのは、彼女の強い意志、そして、それまでに鍛えられたドレスへの耐久性があると私は思います。


「美しいドレスを着た人」か、「ドレスを着た美しい人」か。
例え優雅なドレスであっても、もしシンデレラがその場の雰囲気に気後れしたり、心から楽しめてなかったなら、会場を圧巻させることはできなかったでしょう。星屑を撒くように、会場の皆の羨望を浴びながら、全てを楽しんだシンデレラ。それができるだけの心の大きさがあったからこそ、王子様も恋に落ちたのでしょうね。

美しいは、全てを越える。だって、辛い生活の場面で、自棄になっていたら、鳥達やネズミ達と友達になる心の余裕はなかったでしょうし。魔法使いをも味方につけられるだけの、魂の美しさ。シンデレラからは、潔く生きる強さの様なものを感じました。

ドレスの水色から私が受けた印象は、冷たい湧水に触れた時の様な、澄んだ空気、素直さ、信頼感。

シンデレラが元々準備していたピンク色のドレスだったら、王子様に振り向いて貰えたのかな?また違った話になったかも知れませんね。ロングスカートの制服から、シンデレラまで、ファッションを基にすると、色々話が膨らみました。


アラブの学校では、校則を100パーセント守ろうなんてそもそも、思っていない所からのスタート。自分にとってどうなのか、家族はどう思うかが1番。学校にもよるかと思いますが。私は「制服を理由に怒られた」と聞いたことは、今のところありません。

イギリスのインターナショナルスクールに通う現在は、むしろ、「左右で違う靴下を履く日」や、本のキャラクターになる日、憧れの職業の日、、、など、学校もカラフルな行事が多いです。幼稚園から高校生、そして先生達も、其々が工夫をこなし、ファッションからも学校へ通う事を心底楽しんでいる様に見えます。

髪の色も、皆違うのが当たり前。髪の毛の色に関する規定もありません。確か「厳しいんだよ」と子供達が話していたのは「ジュエリー」について。ピアスは一個、ネックレスも一個まで、との事。重ね付けしたいのに一個だけなんて、、、との事でした。

他に子供達に校則を聞いてみると「靴の色については、真っ黒一色の革靴であること」を「厳しい」と感じた様です。他の色が入った靴だった場合、気に入っていても諦める?どう乗り越える?と聞いてみると「油性ペンで塗る」との答え。各生徒の工夫次第。「黒い革靴」もきっと様々なのだろうなと思いました。

長女はユニセックスなデザインを好み、制服のスカートは持っていません。どの生徒も、パンツ(ズボン)、スカート(膝丈)、ロングスカートから自由に選んでいる様です。スカーフをする子、しない子、それも本人次第です。多様性という言葉を使う必要がないくらいに、選択肢があることが当然な社会。もし困ったことがあったら、きっと、ディスカッションを重ね考えを出し合っていくのだろうなと思います。色んな人がいて色な意見がある。まずは話してみないと始まらないですよね。


また次回も、アラブの生活×ファッションを軸に、考えてみたいと思います。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。よい一日を!




この記事が参加している募集

#みらいの校則

846件