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そのインサイトは作られたものかも

よく企画書に「インサイト」という言葉を見かけます。定量、定性調査が元になっていたりするのだけれど、「ユーザーが本当に求めているものはそれなんだろうか?」と思う事が、ここ最近増えたように感じたので筆をとった次第です。

カスタマージャーニーは万能ではない事実

インサイトと一緒によく使われるカスタマージャーニー。インサイトとカスタマージャーニーは切り離せないものだと考えているので、少し触れさせてください。まずは“認知”すること、そして“欲求”が“行動”を起こす一番重要なフェーズだと考えているからです。
カスタマージャーニーがどういう場合にも役に立つかというと、そうではないかもしれないと思っています。例えば、コンビニでおにぎりを買うまでには果たしてジャーニーが存在したのか?

個人的には、消費財には「AIDMA」ではなく、Googleが提唱している「パルス消費」がしっくりきます。


パルス消費とは?

少しだけ横道にそれます。昔と違い、スマホで様々な情報が簡単に得られ、そして購入まで簡単にできるようになった現在では、従来の消費行動と変わるのは必然かもしれません。
コロナ禍により、ECの利用者が増えた今、「ネット検索→店頭購入」よりも、より「ネット検索→ネット購入」が進んでいるのは間違いなさそう。そうなると、ジャーニーはギュッと短時間に、認知・欲求・行動といったジャーニーがひとつの行動の中で起こるんだろう。

Think with Googleで掲載されていた図が分かりやすいです。

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出典元:従来の購買行動はもう当てはまらない、情報探索行動を分析してわかったこと:バタフライ・サーキットと 8 つの動機

また、パルス型消費のトリガーは、以下の6つの「直感センサー」に分類できると言われています。
(1)セーフティ:「より安心安全なもの」に反応
(2)フォーミー:「より自分にぴったりだと思うもの」に反応
(3)コストセーブ:「お得なもの」に反応
(4)フォロー:「売れているもの」や「第三者が推奨するもの」に反応
(5)アドベンチャー:「知らなかったもの」や「興味をそそるもの」に反応
(6)パワーセーブ: 「買い物の労力を減らせること」に反応

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出典元:消費者が「ピンとくる」6 つの直感センサー:買いたくなるを引き出すために:パルス消費を捉えるヒント(3)

以下の商品ジャンルごとに、直感センサーの反応のしやすさを比較した、下の図は面白いですね。同じ記事の中に商品カテゴリ別の直感センサーの特徴が詳しく解説されていますので、ご興味ある方はそちらをご覧ください。

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出典元:商品ジャンルごとに購入のトリガーを比較:買いたくなるを引き出すために:パルス消費を捉えるヒント(4)


インサイトの正体

話をインサイトに戻します。ところで、インサイトとはなんだろうと調べてみると、こんな文章がでてきました。

インサイトとは?
インサイトは直訳すると「洞察」や「物事を見抜く力」などを意味します。そして、マーケティングにおけるインサイトの意味としては、「人を動かす隠れた心理」を指しています。消費者自身も気づいていない無意識の心理ですが、認識すれば行動を起こすでしょう。

無意識の状態ということで、インサイトは「潜在ニーズ」と混同されることがありますが、これは正しいとは言えません。例えば、「痩せたい」という顕在ニーズがあると仮定します。なぜ痩せたいのかさらに掘り下げると、「健康になりたい」「おしゃれな服が着たい」「自信を持ちたい」などといった理由、潜在ニーズが見えてきます。潜在ニーズは欲求があるのにそれに気付いていない状態を指し、対してインサイトはまだ欲求さえない状態を指しています。

商品やサービスを利用してみて初めてわかる感情だったり、当たり前のこととして見過ごしている課題だったり、インサイトはさまざまなところに存在しています。

「消費者自身も気づいていない無意識の心理」「インサイトはまだ欲求さえない状態」だとすると、定量調査でも定性調査でも分からないんじゃ…って思ったのは、私だけでしょうか?
特に定性定量問わず、調査というのは厄介で、意図した方向に回答を誘導できることもあるし、果たしてインサイトが分かるんだろうか……

マーケターは最良の消費者と言った人がいるとかいないとか。自身が商品を買う時も、なんでそれを買ったのかを買い物帰りに考えたりします。仕事を離れると私もいち消費者です。なんで、コンビニでこのトマトジュースを買ったのか?目に入った瞬間にかごに入れてたのは何故かを考えると、そこにはジャーニー型消費行動は存在しない可能性が高そうです。

この前テレビで面白い話を聞きました。
確か、元ネスレ日本CEO高岡さんがイノベーションについて語っていたことですが、
「諦めている問題の解決こそが、イノベーションにつながる」
「だが、そもそも諦めている問題って、自身が無意識に諦めているものだからこそ、市場調査には出てこない」

「声を聞くことも大事だけど、声なき声を聞くことが大事」

そう「声なき声」こそ、インサイトなんだと思います。


インサイトの見つけ方

顕在化しているものは、すでにインサイトじゃないかも……って話などを長々と書きました。

誰が言ったかすっかり忘れてしまいましたが、iPhoneが登場した後で多くの人たちが「あー、これが欲しかったんだよ」と言ったとか。これ発売前の市場調査からは探り当てられなかったんだそうです。

結局、市場調査では直接的なインサイトは分からないかもしれない。ただし、ユーザーの生活背景や属性、趣向の傾向は分かります。そこから“声なき声”を想像し、未来への文脈を読み解いていく事が、インサイトを見つけるヒントになるのではと思います。

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