見出し画像

猫になる旅

散歩がしたい。
知らない土地を歩きたい。

そんな声が聞こえてきて、
仕事の帰りに、いつもとは違う道を通って帰ることにした。
気にはなってたけど、通ったことがない道。
道はとても細く、人ひとりが歩けるくらいの細さ。
先はカーブをしていて何があるのか見えない。
どこに着くかもわからない道。
少し怖く感じていた。

けど、急に思いついた。
猫になった気持ちでいけばいいかと。

よーし、猫になるぞと思いながら、
その細い道がある場所まで歩いていると・・・

「本物の猫だ・・・」

まるで、私に道案内をしてくれるかのように
目の前に本物の猫が現れた。

「あの子に着いて行ってみよう」

てくてく前を歩く猫に着いていくと、
途中で住宅の方へと曲がっていった。

猫が曲がった方を見ると、
停めてある車の前に座っている。

私は、そこにはいけないな。
猫だからみんな不審に思わない。

猫と私は違うんだなと思いながら
「ご案内どうも」
とお礼をして
猫とは違う人間が歩いても気にならない道を行った。

細い道の前に着いた。
やっぱり緊張する。
けど、私は猫だ。よし、散歩するぞ。
と心に唱えて、一歩を踏みだした。

住宅の壁の横を通り、カーブを抜けると
知っている風景が見えた。

「駅だ」

本当のことを言うと、駅ではなく
駅近くの交通量の多い道なのだが。

あっという間に、知っている道に出た。
小さな旅だった。
たぶん1分ほどの旅。

だけど、緊張のドクドクと
好奇心のワクワク感があった。

次は、あの気になる細い道に足を踏み入れてみるか。
気ままに散歩する猫のように。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?