見出し画像

特別支援とコミュニケーションの難しさ

こんにちは。

先日、アフガニスタンから移民して来た女児のIEP (Individualized Education Program, 個別学習計画)のミーティングがあったのですが、彼女のIEPには『通訳必要なし』にチェックされていました。最初のミーティングの際に、通訳の必要性が問われます。必要だと言われた場合、学区は無料で通訳をつける義務があります。しかし、約1ヶ月前に最初のIEPミーティングがアセスメントチームと保護者との間で行われた際にも、通訳は参加していなかったようです。今回は、私がその子ケースのケースマネージャーになってから初めてのミーティングなので、担任の先生に聞いても『通訳はいらない』とお母さんが言っているとのことなので、通訳なしで行いました。

ところが、ズームでのミーティングの際、こちらからの質問に対するお母さんの返しの的が大きくずれていて、ちょっと不安が過ぎったのですが、とりあえずその日のミーティングはやり過ごして、後から必要に応じてもう一度ミーティングを開くしかないと思っていました。しかし、質問、コメント等ありますか?という問いかけにも、『大丈夫です、ありがとうございます、本当に助かります』とひたすら感謝して頂きまして、ますます不安になりました。

私は大体、IEPミーティングの後直ぐに『同意のサインしますか?』と前のめりで聞かないタイプなのですが、今回のように質問もコメントもなく、ひたすら『大丈夫です』を繰り返す保護者に対しては、特に注意が必要です。仮に保護者の方から『同意します』と言ってこられても、『とりあえず全ての書類を送りますから、1度目を通してから決めて下さい』と言います。そして数日後、『何か質問ないですか?』的なメールを送信し、なければ

  • 全ての内容に同意するか、

  • 部分的に同意するか(その場合はどの部分か書き込まないといけません)、

  • それとも全て拒否するか    

というチョイスがある旨説明し、E−サインにアクセスできるメールを送ります。E-サインにアクセスするにはパスワードが必要なので、いつもどこからそのメールが来て(私からではないので)、パスワード、後同意の仕方を画像付きの説明を付け加えて送らせて頂きます。ミーティングの後には、このような大層なプロセスが待っておりまして、コロナ前のように紙の書類にサインするというシンプルなものと違って、一手間二手間必要になって来ます。それでも、今の世の中、どこからでもミーティングにアクセスできるオンラインミーティングは便利ですし、こちらも参加者全員のサインをもらうために走り回る必要もなくなりました。

ただし、保護者の方で慣れてらっしゃらない方たちは、大体『ドラフト(仮)』とウォーターマークの入ったPDFの書類にサインして送り返してこられたりして、更に説明が必要になって来ます。しかも私のドラフトには、赤字で説明入りなので、絶対にサインすべきオリジナルの文書ではありませんが、その辺の説明もしているにも関わらず、きっちり読んでくださっていない場合がたまにあります。。。

ここで落ち着いて考えなければならないのが、アメリカに来る全ての保護者が英語を理解し、更には義務教育を受けられていたかも分からないということ。そして今回の件も、漏れなくこの状態に陥っております。通常、保護者の同意を得られても得られなくても、一度開いたIEPに関しては、1週間以内に処理せねばならないのです。仮に同意が得られなかったとしても、パート2と言って、続きのようなミーティングをすぐにスケジューリングしないといけないのですが、今回の場合、保護者の方がメールをチェックして、パスワードでセキュリティーかけられた文書を開けるというところまでたどり着くのにも1週間ぐらいかかってしまい、もうミーティングをしてから2週間が経ってしまいました。私はいつ学区から注意が来るかヒヤヒヤしています。

本当に、ただでさえ特別支援というのは複雑なものに年々なって来ているので、英語が分かるから理解ができるというものではなかったりします。古株の先生の話では、昔のIEPは10ページぐらいしかなかったそうなんですが、今なんて一人につき軽く30ページは行くんですよ!これにオフィシャルなアセスメントのレポートがついたら、40ページは超えます。どれだけ色んな書類が足され、複雑化して来ているかページ数だけでも読み取れると思います。(それもこれも、後から訴訟を起こされないためという気がしてならない、訴訟社会アメリカです)

以前、珍しく日本人の保護者の方のミーティングで、通訳が急に来れなくなったとかで、私が代わりに呼ばれたことがあります。国際結婚されている方で、英語でのコミュニケーションは問題なさそうでしたが、一応念のため通訳を付けてもらっていたそうです。普段は私がケースマネージャーとしてミーティングを回す立場なのですが、初めて通訳という参加者の立場で、言われたことを言われた通りに通訳するのみの形で参加しました。が、その経験で気付いたのが、IEPミーティングって結構ペースが速いので、保護者の方が質問を思いつくまでに至らないのではないか?と思ったのです。

しかも、その私がピンチヒッターで入ったミーティングのケースマネージャーというのが、結構新しい先生だったので、説明不足な点が多々あり、その都度勝手に日本語で説明を付け足す形になり、他の参加者は恐らく『日本語になると随分長い説明になるんだなぁ』と思ってたかもしれません!しかし、この経験から、私がケースマネージャーとしてIEPミーティングの進行をする際も、細心の注意を払って詳しく説明するようになりました。後、頭文字を取って単語を略すのも、必ず書類に毎ページ1回目に出てきた時は、全て書き出すようにしています。例えば、Extended School YearというのはESYという略し方をするのですが、ちゃんと1回目に出てきた時は正しい名前で書き出し、ミーティングではそれが何なのか説明もします。これは論文とかでは当たり前のことですが、IEPの書類になるとすっ飛ばす教員の多いこと!(ちなみにESYとはサマースクールのことです)

日本では殆どの参加者は日本人だと思いますが、それでもしっかり保護者にわかりやすく説明する必要があると思います。本当にこちらには慣れ親しんだ当たり前の内容でも、保護者にとっては初めて聞くことばかりだったりしますし、あまり速くミーティングが進むと、質問するまでの状態に追いつけない保護者や、分かったような分かってないような、それすら分からない保護者や、分からなくても分からないと言えない保護者など、色んな方がいらっしゃると思います。後、大きな声では言えませんが、保護者自身が支援が必要な方かもしれないという可能性もなきにしもあらず。

しかし、ちゃんと説明し切ったと感じても、最後には、『もし、もう一度ミーティングの場を設けたいと思われたら、書面でリクエストして下さいね。30日以内にスケジュール組みます』と付け加えておきます。全ては、保護者の方たちに気持ちよく同意しサインして頂くためです。(そこまでしても、揉めるケースは毎年あります、残念ながら)

今回の件、明日でE−サインの期限が切れてしまいます。今日は電話でお母さんにパスワードから、同意するにはどこをクリックしたらいいのか等、コーチさせていただいたのですが、サインまでたどり着いて、なぜかコンプリートできないと。。。もう力尽きてしまいそうです!最後の手段は、携帯からではなく、ちゃんとコンピュータからアクセスしてみてくださいとお願いしました。『絶対期限までにサインしたいので、仕事の後家でコンピュータからやってみます!』とおっしゃったのですが、今夕方6時半で、まだサインはされていません。明日の朝ダメだったら、もう紙の書類持ってその支援児が通う学校まで行って来ます!!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?