"そうやって悲しい日を越えてきた"
aikoはこじらせている。
先日放送のTV番組「関ジャム 完全燃SHOW」で「aiko特集」が組まれ、改めてこれまでの楽曲を聴き直してみると、そのどろっとした深みと混沌とした精神世界を遅ればせながら理解してしまった。
あれ・・・こんなヤバい歌詞、ナチュラルに聴いていたの・・・
という驚きの連続だった。正直こじらせというか、ドのつくメンヘラだと思う。メンヘラこじらせ激重女のわたしがこんなにも世界感にハマってしまうのだから間違いない。(ファンの方ごめんなさい)
中でも特にヒヤリとしたのがこの曲だ。
「キラキラ」という楽曲の歌い出しの一節。
有名な曲なので敢えて説明する必要もない気がするが、聴けば聴くほどその恐ろしいほどまでの執着心と病みメンヘラに満ち満ちている。
イントロからタイトルに違わぬ爽やかで甘酸っぱいアップテンポのメロディで、相手の帰りを健気に待つ男性への思いから歌詞は始まる。
しかし、である。
段々とその爽やかの裏にある違和感が顔を出す。
はじまった・・・
帰りを待っているはずの相手だが、どうやら近くにいるわけではなさそうなことがここで匂わされ始める。
そして、極めつきはサビのこちら。
各所で語られている有名な話ではあるが、この”シルバーリングが黒くなる”という一文で、長いこと相手とは会っていないことを表している。
つまり、冒頭で「待ってるねいつまでも」というのは、決して同棲相手や現在進行形の恋人に言っている言葉ではなく、別れ、もしくは死別のようなものを迎えている、すぐに会える関係性ではない相手なのだ。
そう思うと、続く言葉がとても怖いことだとわかる。
近くない距離感の相手にも関わらず、「今日は遅くなるんでしょう?」と、その日の予定を把握していることを匂わしているのだ。
・・・実はこの心境、よく分かってしまう自分がいる。
たとえば、同じ会社であれば相手のスケジュールは社内ツールで案外簡単に把握できる。
今日は遅い時間に会議があるんだな、とか、予定ブロックしているからなにかプライベートでしているんだろうな、とか、あれこれ想像を巡らせることができる。
同じコミュニティでなくても、SNSの書き込みでなんとなく想像できる部分もあるだろう。
つまり、会えない相手に対して言う「遅くなるんでしょう?」は、
あなたが何しているか今でも見てますよ。
知ってるんですよ。
ということを暗に示している、とっても恐ろしいセリフなのだ。
男性諸君、執念深い女の思いに震えることだろう。
しかし、これはあくまで一端に過ぎない。
スケジュールの把握レベルであれば、日常のネットサーフィンと同じくらい軽いレベルの行動だと思った方がいい。(個人の見解です)
そんな思いつめた女性の重すぎる愛ですが、この曲の一番の要はこのフレーズに集約されるのではないかと思います。
色々暴走してしまうのも、付き合っていた頃を忘れられないのも、見方によってはみっともないような、かっこ悪いような、未練がましいように映ると思うんです。
「めんどくせー女だなあ」みたいな。
女友達がそんなこと言ってたら、優しいあなたは「そんな男忘れなよ!次の出会いに目を向けよう!」と励ますと思うんです。
でも、この彼女はそんなこと望んでないんです。
いつまでも、めまいがするほど長い年月がかかったとしても、どんなに遅くなっても、彼が帰ってくるのが彼女の望む「キラキラ」の未来なんです。
ポジティブな曲調で、前向きに彼を待つ彼女。
会える日まで、話したいことをたくさん並べる彼女。
ときには友達に、目に映る美しい景色に癒やされながら、それでも自分の中に残る消えない想いを道標に、彼との美しい思い出を抱いて前を見る彼女。
だけど、悲しくないわけがない。
毎日、毎晩、毎朝、どんなときも、いなくなった彼を思って苦しくならないはずがない。
手にしていたはずのぬくもりが消えた事実に引き裂かれそうになりながら、捨てたほうが楽になるとわかっていながら、それでも、彼だけは忘れたくない。
その切実な想いを抱いているにも関わらず明るく見せている彼女は「そうやって悲しい日を越えてきた」んです。
むちゃくちゃイタい彼女にも見えるかもしれません。
たぶん、こんなに執着している彼女は世間一般からしたらメンヘラです。
だけど、それだけの熱量で誰かを好きになれる、素敵な女性でもあります。
恋をして輝いている、紛れもなくキラキラしている女性です。
そしてそんな姿を一曲におさめてしまうaikoさん、本当に凄いクリエイターですね。それに尽きます。最新曲も魅力いっぱいのようなので、これから聴き込みたいと思います。
なお、この曲、「彼女が既に他界している」説もある模様。
今回はそっちの説ではなくあくまで別れた彼を思い続ける女、という分析です。他界説も結構当てはまる節が多くて、いろんな見方ができるこの曲の奥深さに感嘆。
そんなわけで、この曲を胸にわたしは今日も彼が戻ってくる日を待つのです。(一番怖い話)
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