マガジンのカバー画像

シングルマザーのクッキー屋の話

20
シングルマザーの貧困や苦労話じゃなくて、こうやって楽しくやってきたよという希望の話。
運営しているクリエイター

2015年12月の記事一覧

シングルマザーのクッキー屋の話 【はじめまして 書いてもいいですか?】

某出版社より「ちいさなお菓子屋さんのはじめかた」的な開業実用書のような本の取材のお話があり、企画書を拝見したのだけど、迷っている。 こんな私(貧乏、技術なし、シングルマザー)でもお店を開けたから、誰にでもできるヨという希望の星になりたいという気持ちはある。 でも、でもだ。同時にわたしの話は何の参考にもならない。 偶然に次ぐ偶然で出来上がったし、そもそも別にお店をやりたかったわけではない。 時間を作りたかっただけ。 大工の同級生に偶然再会したり、熊本に引っ越したは

シングルマザーのクッキー屋の話【仕事とわたしのこと①】

中学2年生のときに「将来の夢」についての作文を書くという課題があった。 小さい頃から「大きくなったら何になりたいの?」と大人に尋ねられたとき他のこどもたちがお花屋さんとかお嫁さんとか野球選手とか何かしら答えることができるのを、本当にそう思っているのではなくて大人へのリップサービス的な 子供たるものこうでしょ を演じているのだと思っていた私は、14歳になってまだ演じることを望まれるのかと驚いたが、今後の進路が、などどうやら先生が本気で「将来」と言っていることに気がつき本当

シングルマザーのクッキー屋の話【仕事とわたしのこと②】

製菓の専門学校で勉強した先にケーキ屋さんで働くには、技術的な修行の場として味やセンスで選ぶだけではなくて、どんな規模の会社があってその仕事内容がどんなものか、業界の中の仕組みがどうなっているのか知りたかったけれど、先生は先生という職業であって業界の仕組みについて詳しいわけではないから、納得するほど知ることはできなかった中で、周りの同級生が個人店希望とかホテル勤務希望とかなぜ選べるのか全くわからなかった。 しかし父が倒れ、最短距離で仕事への道を探さなければいけなくなって、そも

シングルマザーのクッキー屋の話【仕事とわたしのこと③】

胃潰瘍と胆石の治療を終え、元気になってきたけど働くのが怖いなと思っていたとき、友人が働く某チョコレートショップからとにかく誰でもいいから手伝ってほしいというお呼びがかかり、リハビリだと思ってお手伝いに行った。 そのお店は開店一年目のバレンタインの時期で、とにかくグチャグチャで混乱しているところにポンと飛び込んだ。 そのときにわたしがしたことは、都内のデパートのバレンタイン会場で出店中だった各店の不必要な派遣やアルバイトを整理して勝手に帰したり、在庫を把握できる仕組みを作って各

シングルマザーのクッキー屋の話【仕事とわたしのこと④】

23歳で結婚、出産。その後1年で別居、離婚をした。 産後8ヶ月で仕事に復帰したのだけれど、当時わたしの周りに子育てと仕事の両立の見本がなくて、シングルマザーの見本はもっとなくて、それでもとにかく働いて生活費を稼ぐ以外の選択肢はなかった。 見本はなかったけれど、同時に子育てと仕事の両立ってこんなに大変!という情報も今のように溢れていなかった。なんせまだiPhoneのない時代だったから。 わかっていたことは保育園に預けている時間帯しか働けないということと、最低限の生活費を

シングルマザーのクッキー屋の話【仕事とわたしのこと⑤】

産後復帰から8年間働いた会社(某チョコレートショップ)は、その間にすくすく規模が大きくなり、年商5億円強の会社になった。 バレンタインデーの売上げが年間の3分の1をしめるので、1年を通してそこに向けて動く。 年間の製造数と製造場所と人数とペース配分、材料と包材の手配、保管場所の指示、新商品の企画とPR、全国の百貨店60社との商談交渉、受注集計、出荷管理、商品在庫の管理、人事、イベント時アルバイトの面接200人斬りとシフト管理、その全てをどういうわけかひとりで行った。 企業と

シングルマザーのクッキー屋の話【仕事とわたしのこと⑥】

退社を決めてからの2年間、会社では今まで好き放題広げた風呂敷を、後任に渡せるように全てのことをデータ化していく作業をした。PCを見ればとにかくなんでもわかるように数字にして表にしてグラフにしてリスト化した。 普段の仕事と平行してやったので、2年かかった。 同時に自分のこれからのことについても考えた。 将来のことを考えるとき、ケーキ屋さんで働くパティシエのひとたちは「自分のお店を開きたい」という目標を持っていることが多い。入社の面接でもうすでにそう言っている人も多い。 わ

シングルマザーのクッキー屋の話【こどもとわたしのこと①】

こども(あーちん)が0歳の頃から働いていたけれど、公立の保育園に預けることができたし、実母と一緒に住んでいたので深刻な問題はなかった方だと思う。 それでも保育園のお迎えや食事、お風呂、寝かしつけなどを母に頼んだことはほとんどなく、小学校に上がるまではどんなに忙しいときもお迎えから寝かしつけまでが終わってからまた会社に行ったりしていた。(それでも寝ている間家に誰かがいてくれるだけで本当に助かった) 実家はすでになかったので私が部屋を借りて、金銭面でも母に借りを作らないようにして

シングルマザーのクッキー屋の話【こどもとわたしのこと②】

23歳であーちんを産んだとき、周りにママ友もいないし子育ての見本もなかったからか、わたしの子育てはたぶん偏っていて、特に「教育」という視点があまりなかったように思う。 産まれてきたちいさな人は明らかに自分とは別の人間で、縁あってわたしのところにやってきたけれど、もともと持って生まれた人格を持っていると産まれてわりとすぐにわかったので、わたしが「教育」をして子供の人格を作り上げるという義務を感じたことがない。良くも悪くも。 この人はどんな人なのかなあという感心、興味、好奇心で接

シングルマザーのクッキー屋の話【こどもとわたしのこと③】

あーちんが小学生になってはじめての夏休み。 小学生の夏休みは40日間ほどあるのに対して、私(当時会社員)の夏休みはわずか3日間。ラジオ体操にプールなどやることはあれど、どう考えてもヒマだ。そして彼女には学校の外で遊ぶような友達がいなかった。 幼稚園や保育園での人間関係をそのまま持ち越している子供たちとマンツーマン主義のあーちんはすれ違い、そのころ彼女はよく「子供は誤解が多くてひとの話をあまり聞かないから大変だー」と言っていた。 なかなか同じ目線にはなれないのもわかるので、少