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シングルマザーのクッキー屋の話【仕事とわたしのこと⑤】

産後復帰から8年間働いた会社(某チョコレートショップ)は、その間にすくすく規模が大きくなり、年商5億円強の会社になった。

バレンタインデーの売上げが年間の3分の1をしめるので、1年を通してそこに向けて動く。
年間の製造数と製造場所と人数とペース配分、材料と包材の手配、保管場所の指示、新商品の企画とPR、全国の百貨店60社との商談交渉、受注集計、出荷管理、商品在庫の管理、人事、イベント時アルバイトの面接200人斬りとシフト管理、その全てをどういうわけかひとりで行った。
企業とは違い分業ではないけれど個人店というには規模が大きかったのでそういうはめになったのだけど、わたしは携わるものは把握してからじゃないとさわれない性分だったので、社内のあらゆることをしつこく把握した。

経理の事務作業やレシピ管理を通して材料代や原価と利益、各店舗の必要経費を知り、製造と在庫の管理を通して販売個数や時期や人件費と効率を知り、広報の仕事を通してお客さんやマスコミの需要や反応を知った。

そしてそれらは仕事として誰にも頼まれていなくて、社長までもが「そんなにやらなくていいのに」と言っていた。会社のためとか認められたいとかいう思いもなく、単なる性分としか言えない。

全体が見えてくるとどうなるかというと、自分の意見が出てくる。
もっとこうしたらいいのに わたしならこうする、と善かれと思って意見を言うようになる。それが社長の考えと異なるときは自分の考えを飲み込んで折り合いを付けてガマンをする。そしてそのクセがつく。

そのことに気がついたとき、続けることは難しいなと思い、社長に「わたしならこうするのにっていうことが溜まってきて、じゃあ自分でやれよと思うのでそうすることにします」と話し、2年後に退職することを決めた。

それからの2年間で考えることは、中2のわたしが考えても答えが出せなかったテーマ「大きくなったら何になりたいの?」だった。
2年後に何になるか、自分にできることは何か、ようやくスタートラインに立ったのは、31歳だった。


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