見出し画像

じいちゃんへの手紙

3歳、4歳の頃。ばあちゃんは病院へ、お父さんもお母さんも仕事へ行って、じいちゃんと2人でお留守番をする日があった。

じいちゃんとのお留守番!お昼ごはんはあれだ!じいちゃんがお昼ご飯に決まって作ってくれたのは、おみそ汁だった。じいちゃんのおみそ汁には必ず卵が入っていた。
鍋にぽちゃっと卵を割り入れて少し煮つまったおみそ汁。半熟になった卵が、じいちゃんのお椀にひとつ、私のお椀にもひとつ入っていた。2人でのお留守番、特別にじいちゃんが作ってくれた卵と畑の野菜が入ったおみそ汁が大好きだった。
農家で働き者で、無口だけどにこにこしていたじいちゃん。じいちゃんは私が6歳の時に天国へ旅立った。私は小さくて、じいちゃんと何を話したのか、ほとんど覚えてない。
でもね、じいちゃんの笑顔と、一緒に食べたおみそ汁の味は覚えている。私の心の中で生きている。

じいちゃん、しっかり食べて大きくなれって思ってくれていたのかな、じいちゃんの世代だったら卵をひとりひとつなんて贅沢だったんじゃないかな、そういうことを想像するくらい、大きくなったよ。転んだり、悩んだりもするけど、起き上がって、笑って、大きくなったよ。

じいちゃんが、ばあちゃんが、お父さん、お母さんがあたたかい食卓をつくってくれたから、大人になってもしっかり食べてるよ。じいちゃん、大好きな人と食べるご飯はおいしいね。今、いっそう思い出す、じいちゃんとの時間。私も大切な人と食べるおみそ汁には卵を入れようと思うんだ。

よく食べること、人を想うこと、じいちゃんの姿をお守りにしながら生きていくよ。

つくることは、想い。
食卓は、願い。

文/イラスト Shino Sakamoto

#おじいちゃんおばあちゃんへ

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?