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世界地図の次は、国旗を作っている。

150人超との共同生活を始めて、ひと月が経った。
決してイイネが欲しくて掃除機をかけたわけではないが、イイネされるとスルスルっと木に登ってしまう。いよっ、たまやー。
家事では、家人からイイネされても腹が立つだけなのに対し、なんとも不思議なものである。

研修施設周辺はクマが出没するため、研修生が外出する時間は延々とラジオが流れている。ラジオの音でクマを追い払おうという算段である。

最近では研修生手づくりの15分くらいのミニラジオ番組が延々とリピート再生されていて、宗教の洗脳の体を強めてきている。休日の早朝、静寂を切り裂き、朝靄のなか響き渡る「イエーイ!!(唱和)」。
何事もTPOである。本日の学習事項クリア。いえーい。

今日は訓練中唯一の連休。
正確には1.5連休なのだが、みんな脱兎の如く家に帰ったり、仙台へ繰り出したりして羽を伸ばしている。スタバや無印へ行ったという同期の報告ラインに文明の香りを感じる。文明が好きだ。文明堂はもっと好きだ。研修には3時のおやつは無い。

気力・体力ともに業界最下位をリードするリーディングカンパニーを自負している。昨日から、自室で『精霊の守人』を第1話から見て過ごしている。最高に楽しく、充実感を感じている。昨日の夜には珍しくお酒を飲み、それから毛虫の観察をした。ポメラニアンのような毛虫や、ナイキのスニーカーを思わせる緑と青の毛虫もいた。

休日の訓練所は意外にも嫌いではない。
登山などに出かける人が出発しきると、空気が一変する。
靴音も話し声もない。
ひんやりとした廊下、鳥と虫の鳴き声、木々の擦れる音。

そんな日は、いつも話せない人と静かにゆっくり話すことができる。
高校生の時、図書館でいつも会う人たちがいた。名前は知らない。話したこともない。その人たちと、今ゆっくり話しているような感覚といったらいいのだろうか。

(あと、来客時ベッドの下に隠れていた猫が、客人が帰った後に這い出して来る様にちょっと似ている。なぜかみんな猫っぽい。)

ここでは朝礼で国旗を掲げることになっている。
国旗は日替わりとなっていて、掲揚前に国旗の説明が入る。

先日、アフリカ地域に入った。
「赤は独立戦争で流された血を表現しています」「赤は革命で流された血を意味しています」
こんな具合に。

月1でシーツに国旗を作っているので、感慨深いなあ、と思いながら高原の風に吹かれている。

確かに独立だし、革命である。あれ?結構偉いじゃんか。


いとエモし(味がある、粋、染みるの意?)日々も残り1月。
1か月前、廊下の自販機でジャスミン茶を買った。
麦茶が飛び出してきた。鶴瓶の。
「ああ……今は鶴瓶の気分じゃないんだよな……。」
試されているのか。我がストレス耐性よ。

そして今日。
あの自販機に張り紙がしてあった。

『ジャスミン茶と麦茶のボタンが入れ替わっています。注意。』

それぞれのボタンにもサイズ合わせた付箋がセロテープでピッチリと貼ってあった。

この張り紙をしてくれた人と私とでは、来世はおそらく振り分けられる世界が違うんだろうなと思いながら、野菜ジュースのボタンを押した。

野菜ジュースは何かの免罪符か。

今日も今日とて徳は低いけれど、掃除機をかけたからよし。

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