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こんどこそ芋掘り! その収穫は…?

 先日、移住4日目のことでした。

 その2日前の芋のツルや葉っぱを切り払う作業につづく、こんどこそ芋掘りの誘いをいただきました。

 あさ9時前でしたでしょうか。上の家のお母様から電話が…。
「本来なら明日やるつもりだったんだけど、あいにく雨が降るみたいだから、今日にでもさっそくお芋を掘りにいこうかと思って…」

 2日前の作業では収穫なしのためお預けを食らったようだったので、喜んでお誘いを受けました。

 にしても、晴れたから急遽作業を…だなんて! 逆に、雨が降ったら予定していた作業を日延べしなくてはならないわけで、農家の生活がお天気次第だっていう、きっとごくごく当たり前のことに、あらためて感慨を覚えてしまいました。

サツマイモたちとの対面

 さて、先日うかがった畑に到着。3畝にわたって土の中に眠る紅あずまと紅はるかに、いよいよご対面です。ただし、事前に息子さんに言われていました。

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「掘り起こしたばかりの芋は非常にもろいんです。ちょっと指に力を入れただけで皮がむけてしまうほど。だからスコップで掘る際は注意が必要です」

 そんなことならばと、スコップ役は遠慮させてもらい、息子さんが深くスコップをいれる係、お母様がそこから芋を掘り起こす係、そして私が受け取った芋に生えてる余計な根っこをハサミで切り落としながらケースに入れていく係と、一応の分担が決まりました。

 いざ作業が始まりました。当初は受け取った芋のヒゲを払い、慎重にケースにいれていくことにばかり気が向いていましたが、やや慣れてくると廻りを見回す余裕がでてきます。

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 息子さんがスコップを入れ、お母さんが掘り起こすそのお芋たち。土の中にいてちょっと湿っているためか、芋の肌が輝いてるんです! 店にならぶ芋は紫色ですが、土から出たばかりのそれは、まるで紫は紫でも、しっとりとして、まるでビロードのよう。

愛くるしい子どもたち

 色もさることながら、この芋たちは初めて対応の光を浴びるのかぁ…とか、受けとった芋を大事にかかえて優しくケースにいれているうちに、自分が、生まれたばかりの子供を抱き上げる産婦人科の先生みたいだ、なんて考えてしまい、なんだか出てきたばかりのお芋さんが愛おしく思えてくるんです。

 息子さんは農家らしく、小さい芋がでてくると「クズ芋だな…」というのですが、お母さんは「クズなんてないわよね。ぜんぶ食べてあげなきゃ可愛そう」と、息子さんに抗議します。

 そう、その通り! 完全に同感ですッ!!

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 愛おしさが高じて、もうそのころには、芋の前後に伸びている細い根っこがシッポのようで、私には可愛いネズミ、そうミッキーマウスに見えています。

農家の息の長さに…

 きけば、おふたりとも葱を専門とされているとかで、サツマイモは試行錯誤の段階なんだそうです。

 だから今回、紅はるかより、紅あずまのほうが成長が早く、大きなモノがおおかったのですが、その原因についても、
「土かもしれないし、植えた場所かもしれないし、肥料を変えた方がいいのかもしれない。何ともいえないですね。次は別の方法を試してみます」

 はぁ~。息子さんのいう「次」とは、むろん来年の植え付けのころのこと。次の挑戦といっても、結果がでるのは来年の今頃の話です。なんて息が長いんでしょう。せっかちな私には、もうため息しかありません。

 息が長いといえば、収穫後の芋の扱いについても同様です。

 さきに説明があったように、堀りたての芋は表皮が薄く、このまま保存しても数ヶ月しか持たないそうです。そこでキュアリングという処理をおこなうんだそうです。

 サツマイモを温度30度、湿度90%以上の条件に100時間ほど置いておくことで、表皮の下にコルク層ができて、収穫時についた傷が自然治癒(=キュア。だからキュアリングなんですね)されるとのこと。これによって保存期間が大幅に伸び、さらにその間に甘みも増すんだそう。いわば芋にストレスをかけることで、おししく、長持ちさせることができるというわけですね。

 ということは、そう。この日に収穫したお芋は、別の場所にある専用の施設内に保管されるため、すぐに出荷、または食卓に上ることはないとのこと。

自然を相手にするということ

 またお預けかぁ…。なんて、こっちの物欲しげな表情を察してくれたんでしょう。

「でも、まぁ、堀りたてでも食べられないわけじゃない。こっちのクズ芋のほうは食べられますよ。ただしあまり細いと筋っぽかったり、甘みも今ひとつかもしれません」
 と息子さん。

 わ、うれしい! っていう、打って変わった表情もまた、農業知らずのせっかちなやつと思わせたかもしれません。

 おかげさまで、クズ芋とよばれる、生育不十分なもの、あるいは畑を外れて伸びた先にできた、ちょっと小さめのものを、分けてもらいました。

            ●

 天気に左右されること。工夫の結果がでるのが1年後であること。作物の十分な成長には時間がかかること…。
 
 自然を相手にするっていうのは、町中で育った自分とはまったく違った時間の流れのなかで生きることなんだと、なんだか深いところで理解させられました。

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 ちなみに、いただいた小さな芋たちは、蒸かして、つぶして、サツマイモのポテトサラダにしてみました。写真では筋っぽくみえますが、これは細く刻んだタマネギで、言われたような筋っぽさはまったくありませんでした。


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