待つ勇気。

友人である通称「先生」がいつも以上にニヤニヤして、研究室の一角がより怪しげな雰囲気へと変貌しているのに気が付いたのは先日のお昼前のことである。いつもはウニウニして変なオーラを出している彼が、ウニウニに加えてニヤニヤデレデレして、研究室の湿度が5%(当社比)上がっているものだから私はたまらなくなって声をかける。

「何してんの、気持ちわりぃ」

そんな私の悪口も気にせず彼は言ったのである。

「とある女性と文通を執り行うこととなった。」
そして続けてこう叫んだ。
「必要なのは待つ勇気である…!」
と。

これに対して、我が研究室の面々は非常に冷静であった。
「大丈夫?騙されてない?」
「実は男なんじゃない?おじさんとか」
「出会い系かよ~」

「うるさいうるさい俺はこの子と文通するんだぁ~ダァ…ダァ……ダァ………」
彼は語尾にディレイをくっつけて大学の裏にあるビジネスパークの山中へと消えてしまった。

と、さんざん嘲笑してしまったが、どうやらこの文通相手、かなり面白そうな方であり、さらに都会のいいとこの大学であり、さらに本当に女性であるらしい。勝ち誇った顔で先生は再び唸る。「必要なのは待つ勇気である。」

「自分から声かけれないだけじゃん。」
と言うととても嫌な顔されたが、それに関しては大ブーメランである、と気づいたので声をそろえて叫ぶ。「必要なのは(以下省略」

そういえば、と、
以前高校の国語教師が、髪のない頭をポリポリしながら、
「僕昔文通してましてぇ~」
と、古典の時間に唐突話し始めたことや、
大学の師匠がニヤニヤしながら、
「手紙に香水つけるといいんだよぉ~」
と話していたことを思い出しながら、
文通、面白そうだなぁと正直感じた。
しかし私にも誰か文通に誘う勇気もないし、
なんせ三日坊主人間である。
なので最後にもう一度、ご唱和ください。
「必要なのは待つ勇気である!!!」

お手紙は向こうからスタートで、明日明後日には第一通目がご到着あそばされるらしい。これ以上は二人の世界なので私は外野で指をくわえて生暖かい目で見守ることとする。

P.S.香水必要なら貸してあげるよ。

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