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夏休みを謳歌せんとす。

「人生足別離」

直訳すると、「人生にサヨナラはつきものだ」ということらしい。
しかし井伏鱒二はこれを、

「サヨナラだけが人生だ」
とあらわしなすった。

何たるセンス!!
いったい五臓六腑内どこの引き出しにそんなセンスが…と友人と恐れ戦く。

「サヨナラだけが人生だ」
ふつふつと呟きながら私は気づく、
「夏休みとのサヨナラが近づいているではないか!」

これはいかん、私は大学生最後の夏休み、否、人生最後の夏休みらしい夏休みを有終の美で終わらせるべく、友人に召集命令を出す。

【電報】海でおでんを食すぞ!

我が街は少し行けば海、湖、川、山と自然にあふれた素晴らしい立地にある。「都会の大学生にこんなことできないぜえ」と言ってる時点で負けなのかもしれないが、これは田舎学生の特権であると思っている。首都高で可愛い彼女とドライブしたくないか?だって?うるさい、そんなかわいい彼女は、私が都会でバキバキのベーシストになれてたとしてもできまい。話がイエローカットしている。そうこうして私たちは、コンビニでおでん並びに麦酒(ドライバーの私は青いカンカンの珈琲)を購入し海岸へと行く。

堤防の上に座り、乾杯。

大学生が「夏休みの悪足搔きだ」と叫んでいる一方で、夜の気配はすっかり秋のそれである。斯く言う私も久々に秋服を引っ張り出してきた。秋の夜風を浴び、海の波音を聞き、夏と秋を行ったり来たりしながら、わたしはおでんとスモークタンとスモークを頬張るのである。秋というのは非常に心がギュイーンと変な音を出す季節である。空き、否、飽きているのか?満たされたい、と友人は言う。金木製の香はそんな雰囲気のスパイスとなる。季節は確実に進んでいる。

堤防の上に座り、ぼんやり。

来春よりカメラを相棒とする仕事をする予定の友人にスナップをとってもらう。ええやん、ええやん、ええ感じやと盛り上がりをみせ、本会は撤収となった。

雰囲気に酔っていた我々も、帰りの車内は何時もの様に下品な会話を繰り広げ、あたかも夏休みが永遠に続くかのような錯覚を覚えた。しかしカウントダウンは常に刻まれ、大学生という名の大モラトリアムタイムトンネルの出口も見えつつある。コロナ禍を言い訳にはしたくない。

今ここに、夏休み終了を宣言する。

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