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ゾンビ論文の総括(2023年11月)


概要

2023年11月にGoogleスカラーのアラートに次の検索条件を設定して、ゾンビ論文の収集を行った。

条件は次の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」

  2. 「zombie -firm -xylazine -biolegend」(取りこぼし確認)

各検索キーワードの意図は次の通り。単語の前にハイフンをつけると、その単語を含まないものを探す検索条件となる。

  • 「zombie」:ゾンビ論文を探す

  • 「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する

  • 「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する

  • 「-DDoS」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する

  • 「-xylazine」:ゾンビドラッグことキシラジンに関する論文を排除する

  • 「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する

  • 「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する

10月中にメインの検索条件に引っかかったゾンビ論文は32本であり、私の目的に合致した論文が3本(実質2本)見つかった。

ただし、後者はごく短い上に、『ゾンビでわかる神経科学』を参照しながら書かれたものであったため、その場で解説を書いた。前者は別の機会に解説記事を書くつもりだ。

また、12月の検索条件を次の2つに設定する。ただし、検索条件1をメインの検索条件とする。

  1. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender -narrative -Netflix -network

  2. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」

  3. 「zombie -firm -xylazine -biolegend -DDoS」(取りこぼし確認用)

以下、11月の調査の詳細を記載する。



集計結果

まず、集計結果を示す。

2023年11月のゾンビ論文集計結果。最上行の日付はアラートメールが送られてきた日付。
ジャンルごとに集計結果が多い順にソート済

合計で32件のヒット。10月は26件だったため、若干多い。そして、「月の合計で30件以上のヒットがあった場合、各日で設定したジャンルを再分類する」という課題を課していたため、後でその検証をしておく。

最も多かったのは衛生学と情報科学で四件ずつ。続いて、評論、メディア学の三件。

日ごとの論文のヒット数は平均2件。11/4だけ突出して多く、これが他と同じく2件程度であれば、11月の合計ヒット数は26件だった。そうなればジャンルの再分類と排除キーワードの検討は必要なかったのに…。たまにこういうのが混じるのが辛いところだ。


11月の検証結果

11月は次を検証していた。

  • 月の合計で30件以上のヒットがあった場合、各日で設定したジャンルを再分類する。

ジャンル分けのそもそもの目的とは、似た傾向を持つ論文を集め、不要な論文を検索結果から排除することだった。たとえば、経済学でジャンル分けをしていたら"zombie firm"(ゾンビ企業)という文字列が多く見られたため、検索条件に「-firm」と入れることで経済学ジャンルのゾンビ論文をまるっと排除することができた、というように。

集計結果でひとつのジャンルにまとめられそうなものは、書評と評論くらいだろうか。医学と看護学は同じ医療系のジャンルではあるが、これを同じにすべきではない。人間の病気を治すのと、治療中の人間をケアするのとでは内容がまるで異なる。あとは、相変わらず社会学や比較文化学が範囲の広いジャンルとして存在しているが、一件ずつなので今回は見逃すこととする。

書評と評論だが、そういえばはじめは評論でまとめていたのになぜ別ジャンルとして書評を設けたのか覚えていない。まあ、覚えていないのならば一緒にしてもよいはずだ。書評を評論に加えると三件→四件。これらが排除できれば32件→28件だから30件を下回る。また、同率四件の衛生学、情報科学の論文の排除キーワードも設定すればもう8件減って月合計の論文数は20件にまで下がる。

20件だと、ひと月4週として週に五件。アラートメールが来るのが基本的に火木土の三日間。一日当たり1.7件の計算。アラートチェックがぐっと楽になる。ということで、評論、衛生学、情報科学の論文を排除できるキーワードを考える。


評論系ゾンビ論文の排除

評論系の論文は共通する単語が中々ない。しかも一目見れば本物のゾンビを扱わないことはわかるため、排除する必要性がなかった。ただ、多くの論文に触れてアブストラクトを読んできた経験から言うと、"narrative"という単語が頻出するように思う。したがって、12月は「-narrative」を検索キーワードに追加する

また、Netflixの韓国のゾンビドラマを扱うものもよく見る気がするため、「-Netflix」も追加しておく

11月に確認した評論ゾンビ論文は次の四件。

  1. マイケル・ウェックスのために、タルマディ ブルース II

  2. ネットフリックスは韓流に乗っかっているのか、それとも逆か?| 王国の文化: ゾンビの成長とNetflix Korea

  3. AMC のウォーキング・デッド シーズン 2 における道徳的相対主義と自己の恐怖

  4. AMC のウォーキング・デッドにおける致命的な暴力の表現: 正当性、グラフィック性、明示性の役割

このうち、「-narrative」で排除可能なのは4のみ、「-Netflix」では2のみである。なんとも心細いが、先述の通り評論系のゾンビ論文には、共通し、かつ固有な単語が中々見つからない。とりあえず、「-narrative」と「-Netflix」で様子を見る。


衛生学系ゾンビ論文の排除

11月の衛生学の論文は次の四件だった。

  1. マールブルグウイルスの発生と新たな陰謀論: ウェブ行動の包括的な分析からの発見(二件分)

  2. 幻覚を見せる幻覚剤

  3. ポリオワクチンとがん: 神話の誤りを暴く

1と2は陰謀論という共通項があるため、排除キーワードとして何かいい単語があるように思う。一方、2と3は「-drug」でくくれそうだ。

今「-xylazine」でゾンビドラッグとも呼ばれているキシラジンを排除している。キシラジンを扱う論文が「zombie」に引っ掛かるとき、必ず"zombie drug"という文字列が出てくるはずだ。となれば、「-xylazine」という範囲が非常に狭いキーワードから「-drug」に変更しても良いかもしれない。

また、最も重要なことだが、ゾンビ論文が陰謀論を扱う場合、本物のゾンビを仮定しても矛盾しない可能性が高い。現に1はそうだった。私が求めていた論文としてカウントしたのだ。

ということで、陰謀論を排除するようなキーワード探しはやめて、危険薬物とゾンビをつなげる「-drug」を使用するのがよさそうだ。ただ、まず「-drug」でキシラジンが排除可能か調べ、可能であれば「-xylazine」を「-drug」に変更する作業が必要だ。これをほかのキーワードの検証と一緒にやると手間がかかって大変だ。そこで、12月ほかのジャンルのキーワードがねらい通りに働くかを検証し、1月になったら「-drug」を採用してアラートチェックを行おうと思う。


情報科学系ゾンビ論文の排除

11月の情報科学の論文は次の四件だった。

  1. 統合されたリテラシーとデザイン活動がコーディングに対する学生の態度に及ぼす影響

  2. トラフィック分析のためのクロスネットワークエンベディング転送

  3. Lumos: 統合データ、モジュラー設計、オープンソース LLM を使用した学習エージェント

  4. Catalyst: 大規模なインメモリ Key-Value システムのキャッシュ管理の最適化

タイトルからもう何を言っているのかわからない。だから今まで放っておいたのに。ああ、嫌だ。

…適当にタイトルからそれらしいものを拾ってしまおう。もっと適切なキーワードはあるだろうが、それは気づいたタイミングで修正すればよい。

論文内をいくつかの単語で適当に検索した結果、「-network」がよさそうだ。これで2と4が排除できる。そもそも1は情報科学にジャンル分けしてはいるが、情報科学と教育学のあいの子みたいな構成だから、排除できないのも仕方がない。3は「学習エージェント」という言葉の通り機械学習?に関係した論文で、同じようなものはまあまあ見かける。これも気づいたタイミングで修正すればよい。

ということで、12月の検索キーワードに「-network」を追加する。これで情報科学のゾンビ論文が少しでも減ってくれれば良いが。



12月の検証

12月は以下の検証を行う。

  • 月の合計で30件以上のヒットがあった場合、各日で設定したジャンルを再分類する。

  • 評論の論文を排除するためのキーワードとして「-narrative」と「-Netflix」を設定し、効果を確認する。

  • 情報科学の論文を排除するためのキーワードとして「-network」を設定し、効果を確認する。

あってはならないことに、キーワードを追加したために本物のゾンビを扱う論文を排除してしまうことが挙げられる。narrativeは物語や語りという意味(動詞にnarrate:ナレート、その派生語にnarration:ナレーションがある)であるから、この単語が出てきた時点でゾンビが出てくるフィクションを扱っていることはほぼ確定する。networkはどうかわからないが、うまく機能してくれることを期待している。

ただNetflixは不安だ。もし参考文献にNetflix限定のゾンビドラマ・映画が挙げられていたら、それだけで私の探し求めるゾンビ論文は私の手元に来ない。そして、大概のゾンビ論文はゾンビフィクション作品を参考文献に持ってくる。ゆえに、私の懸念は大いにあり得ると言わざるを得ない。だが、やってみないことにはわからないので、とりあえずやってみようと思う。

ということで、12月の検索条件は次の3つに設定する。

  1. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender -narrative -Netflix -network

  2. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」

  3. 「zombie -firm -xylazine -biolegend -DDoS」(取りこぼし確認用)

もちろん検索条件1がメインで確認する条件である。これらの検索条件で本物のゾンビ論文がヒットすることを期待する。

検索条件2は当然、1との比較対象として確認する。こちらの検索結果にはnarrative、Netflix、networkの単語が含まれない論文がヒットするため、検索条件1の効果を測ることができる。

検索条件3は引き続きの取りこぼし確認用検索条件。

変更は12/2(土)以降のゾンビ論文に適用される。

以上。


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