2024/1/24(木)のゾンビ論文 ゾンビ・アポカリプスを生き抜くメタ認知人工知能

ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。

アラートの条件は次の通り。

  1. 「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network」

  2. 「zombie -firms -philosophical -xylazine -biolegend -gender -narrative -network

  3. 「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS」(取りこぼし確認用)

検索条件は次の意図をもって設定してある。

  • 「zombie」:ゾンビ論文を探す

  • 「-firms」:ゾンビ企業を扱う論文を排除する

  • 「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う論文を排除する

  • 「-drug/xylazine」:ゾンビドラッグに関する論文を排除する

  • 「-network」:とにかく情報科学の論文を排除したい

  • 「-DDoS」:ゾンビPCを扱う論文を排除する

  • 「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する

  • 「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する

  • 「-narrative」:ゾンビ映画・小説などを評論する論文を排除する

検索条件2は「-drug」と「-xylazine」の差分を見るためにある。また、検索条件1と2には一般性の高い排除キーワードが含まれているため、それらが不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる。

今回、それぞれのヒット数は以下の通り。

  1. 「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network」三件

  2. 「zombie -firms -philosophical -xylazine -biolegend -gender -narrative -network」五件(差分二件)

  3. 「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS」六件(検索条件2との差分は一件)

検索条件1は評論、教育学、不明が一件ずつだった。


検索条件1「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network」


アンデッドを操作する

一件目。

原題:Handling the Undead
掲載:Journal of Religion & Film
著者:Christopher R. Deacy
ジャンル:評論

『Handling the Undead』というゾンビが出てくる映画のレビュー。2024公開の映画らしい。

ということでジャンルは評論。


サニーベールの私たちの街

二件目。

原題:Our Town at Sunnyvale
掲載:Ploughshares
著者:MARY GRANFIELD
ジャンル:評論?小説?

内容不明。評論や小説を掲載する雑誌に載っているので、そういう系の論文だと思う。


異なる実践経験 – 異なる視点?

三件目。

原題:Different Practical Experiences – Different Views?
掲載:An Analysis of the Views of Future Teachers in Austria on Research Needs in Response to the Covid-19 Pandemic
著者:Ricarda Derler と Lisa-Maria Lembacher、 Heike Wendtの三名
ジャンル:教育学

コロナ禍で普及したオンライン学習が子供の教育に与える影響を調査した論文。本文にはzombieの単語がなかったが、referenceの論文のタイトルにzombieがあったために検索に引っ掛かった。

その論文はGale M. SinatraとNeil G. Jacobsonによる"Zombie concepts in education"(教育におけるゾンビ概念)というものであり、過去に扱ったことがある。ゾンビ概念はゾンビアイデアと概ね同じものと捉えれば良い。

教育学におけるゾンビも頻度よく見るようになってきたので排除したいが、「-education」ではあまりに多くの論文が該当してしまうだろうから、キーワードの選定が難しく、踏み出せないでいる。

ジャンルは当然教育学。


検索条件2「zombie -firms -philosophical -xylazine -biolegend -gender -narrative -network」(差分なし)

検索条件1との差分を調べ、「-drug」が「-xylazine」よりも論文を排除しているか確認する。

A2およびA72 J-Lat 細胞株における薬剤誘導性 HIV-1 転写活性のフローサイトメトリー分析

原題:induced HIV-1 Transcriptional Activity in A2 and A72 J-Lat Cell Lines
掲載:Bio-protocol
著者:Daniela Boehmと Melanie Ott
ジャンル:医学

ゾンビ試薬が出てくる論文。7AAD、あるいは Propidium iodideと呼ばれる試薬を使っており、biolegend社は今回関係ないようだ。


現実主義的評価におけるユーザーと利害関係者の関与

原題:User and Stakeholder Involvement in Realist Evaluation
掲載:SciencePro
著者:Ana Manzano
ジャンル:社会学

「現実主義的アプローチ」という考え方があり、その概念を用いて社会プログラムや政策を評価することの是非を調査する論文。

なぜ「-drug」で排除されたのか、よくわからない。薬物が社会に与える影響がどうのこうのという話なのか。



検索条件3「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS」

上記の条件で誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業とゾンビ試薬、ゾンビPCは排除されるように設定してある。

必要なのはメタ認知だけですか? 生成エージェントでイントロスペクションを使用して目標指向の行動を改善する

原題:Metacognition is all you need? Using Introspection in Generative Agents to Improve Goal-directed Behavior
掲載:arXiv
著者:Jason Toy と Josh MacAdam、 Phil Taborの三名
ジャンル:情報科学

「-network」で排除。タイトルを説明すると、まず「生成エージェント」というのはコンピュータ上でシミュレーションされた人間のこと。正確には人間というか、アルゴリズム通りに動く"ヤツ"くらいの意味だが、人間の代替が多いので間違いではない。「イントロスペクション」は直訳すると「内省」で、論文中では以下のように説明される。

In this paper, we introduce a metacognition module for generative agents, enabling them to observe their own thought processes and actions.
(この論文では、生成エージェントが自身の思考プロセスと行動を観察できるようにするためのメタ認知モジュールを紹介します。)

同論文より

つまりこの論文では、コンピュータ上で作られた人間が、自分自身の考え方を顧みながら、設定された目標を達成するために、思考や行動を改善するシステムを紹介するのである。特筆すべきは目標すらも設定するシステムの開発である、という点だ。

検索に引っ掛かったのは、舞台のひとつをゾンビ・アポカリプスに設定したためだ。ほかにはクリスマスパーティや殺人ミステリーなどがある。もちろんゾンビ・アポカリプスでエージェントたちに設定した目標は生存である。しかし、そのシミュレーションに触れているのは次の部分のみであり、論文の多くはアルゴリズムについての解説に割かれている。

In the zombie apocalypse simulation, zombies are non playable characters that are allowed to kill nonzombie agents. Agents initially have no goal but can develop them over time. Zombies randomly walk and move towards non-zombie agents when seen. Survivors most often self-discovered a strategy of hiding in zombie-free areas. We found that in 73% of zombie scenarios, agents would not survive.
(ゾンビ黙示録シミュレーションでは、ゾンビは非プレイアブル キャラクターであり、ゾンビ以外のエージェントを殺すことが許可されています。エージェントには最初は目標がありませんが、時間の経過とともに目標を発展させることができます。ゾンビは、ゾンビ以外のエージェントが見つかると、ランダムに歩き、その方に向かって移動します。生存者はほとんどの場合、ゾンビのいないエリアに隠れる戦略を自分で発見しました。ゾンビ シナリオの 73% では、エージェントは生き残れないことがわかりました。)

同論文より

この記述だけでは、本物のゾンビを扱った論文とは言えない。ゾンビからサバイバルする手段も非常に初歩的であるし、今回はノーカンとする。


まとめ

検索条件1は評論、教育学、不明が一件ずつだった。

検索条件を1と2に分けてから初めて差分が得られた。差分の二件は医学と社会学の論文だった。

医学の方が「-drug」で排除されるのは半ばねらい通りであった。本命のゾンビドラッグではないにしろ、医学系の論文がこのキーワードで排除されるのは予想していた。一方、社会学の論文までもが排除されたのは想定していなかった。が、確かにゾンビドラッグが危険視されているのは社会に対する影響が大きいからだ。であれば、政治的な話をする際にゾンビドラッグの話題が出てきてもおかしくない。なぜ気づかなかったのか。

ということで、「-drug」の有用性を確認できて、ちょっとうれしい。とりあえず検討してみるというのは大変良い手法であった。

今回はねらいの論文がなかった。


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