2023/05/23(火)のゾンビ論文 教育現場にひそむゾンビの概念
ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。
アラートの条件は次の通り。
「zombie -firm -philosophical -DDos」(経済学・哲学・情報科学のゾンビ論文避け)
「zombie」(取りこぼしがないか確認する目的)
「zombie -firm -philosophical -DDos -company」(-companyの効果を図るため)
このうち、「zombie -firm -philosophical -DDos」の内容を主に紹介する。ただし、この検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないか、「zombie」の内容も確認する。また、4月まで経済学のゾンビ論文の排除を目的として「-company」を設定していたが、その効果があるのか改めて測定する。
それぞれのヒット数は以下の通り。
「zombie -firm -philosophical -DDos」三件
「zombie」三件(差分一件)
「zombie -firm -philosophical -DDos -company」三件(排除なし)
「zombie -firm -philosophical -DDos」の三件は教育学、医学、文学が一件ずつだった。
検索キーワード「zombie -firm -philosophical -DDos」
教育におけるゾンビの概念 なぜ彼らは死なないのか、なぜ殺せないのか
一件目。
原題:ZOMBIE CONCEPTS IN EDUCATION Why They Won’t Die and Why You Can’t Kill Them
掲載:Misinformation and Fake News in Educationの第二章
著者:Gale M. SinatraとNeil G. Jacobson
ジャンル:教育学
フェイクニュースに関して教育現場がどのように対応すべきかを示した本のイチ章。ゾンビが現れたというフェイクニュースを例題に教育現場へ指針を示す論文かと思いきや…。ゾンビの扱いは次の文章で説明されている。
本物のゾンビについての論文とは言えない。ゾンビを単なる比喩として使っているのみだ。
ジャンルはもちろん教育学。
短鎖脂肪酸は黄色ブドウ球菌の嚢胞性線維症分離株に反応したヒト好中球の呼吸バーストを減少させる
二件目。
原題:Short chain fatty acids reduce the respiratory burst of human neutrophils in response to cystic fibrosis isolates of Staphylococcus aureus
掲載:Journal of Cystic Fibrosis
著者:Arthur Millerを筆頭著者として、六名
ジャンル:医学
"Zombie Aqua"という死んだ細胞を染色する試薬に引っ掛かった。久しぶりの登場である。ジャンルは医学。この手の論文の内容には絶対に立ち入らない。
『The Last of Us』に向けたストーリテリング:ルドナラティブなトラウマ分析
三件目。
原題:Telling Stories for The Last of Us: A Ludonarrative Trauma Analysis
掲載:The University of North Carolinに提出された修士論文
著者:Holly Buescher
ジャンル:文学
最近ゲームの(あるいはドラマの)『The Last of Us』に関する論文が多い気がする。これはゾンビが出てくるゲームであるため、必然的にフィクションの中のゾンビを相手に議論を展開することになる。したがって、本物のゾンビの論文ではない。
しかし、"Ludonarrative"という単語に興味が出たので、その紹介だけしておく。
詳しくはリンク先の記事を読んでいただきたいが、現実とゲームのギャップをならともかく、「ゲーム上の物語と実際のプレイ上での不調和」まで学術的調査の対象とするのは驚いた。
たとえば、ファイアーエムブレムエンゲージというゲームで、歴代の英雄が主人公の力を試すべく試練を与えて、主人公が勝てば絆が深まるというストーリーがあるのだが、英雄たちがガチのガチで主人公を殺しにかかってくるため、仲間が普通に死ぬのだ。本気でやるとしてもみねうちで撤退させるとかあるだろと理不尽に投げ出しそうになったのを鮮明に覚えている。これがルドナラティブ…。
それだけだ。
ジャンルは、「ナラティブ」を研究対象とするため、文学でいいだろう。
検索キーワード「zombie」
このキーワードでは「zombie」ゾンビ論文がアラートに入ってくる。誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。
情熱とセックスの現象学: 心の活動としての快楽の種類を解明する
原題:The Phenomenology of Passion and Sex: Ascertaining the Species of Pleasure as an Activity of the Mind
掲載:De La Salle Universityに提出された博士論文
著者:Rodrigo Emil Carreon
ジャンル:哲学
端的に言えば、セックスという快楽的行為に情熱という変数を入れて分析してみたといったところだろうか。zombieの単語は"Can Zombies have Sex?"という節で使われる。
「-philosophical」に引っ掛かっていることから、ここでいうゾンビというのは哲学的ゾンビを指す。
私たちの「恐ろしい子孫」: アメリカ映画、文学、大衆文化の続編映画における怪物的な女性性
原題:Our" Hideous Progeny": Monstrous Womanhood at the Advent of the Film Sequel in American Cinema, Literature, and Popular Culture
掲載:Florida Atlantic Universityに提出された博士論文
著者:Stephanie M. Flint
ジャンル:女性学
博士論文であることを示す"Doctor of Philosophy"が「-philosophical」に引っ掛かったのだろうか?ほかに心あたりがない。
1930年代のホラー映画にみられる"Woman-gendered monsters"に関する調査論文。具体例として挙げられているのは『フランケンシュタインの怪物』『恐怖城』『女ドラキュラ』。
ちなみに、フィクションにおける差別を調査するという論文があるとき、女性とゾンビなら『恐怖城』、黒人とゾンビなら『私はゾンビと歩いた!』が鉄板の組み合わせとなっている。発展性がなさそう。
サールの心: 脳、被験者、システム
原題:Searle's Mind: Brains, Subjects, and Systems
掲載:Bowdoin Digital Commons(Bowdoin Collegeの学生用デジタルアーカイブ)
著者:Saul Cuevas-Landeros
ジャンル:哲学
"philosophical zombie"の文字列がみられる。
検索条件「zombie -firm -philosophical -DDos -company」
ゾンビ企業には"zombie company"という表記もあることから、そういったゾンビ論文を排除するために設定した検索条件。
この検索条件では「zombie -firm -philosophical -DDos」にヒットした論文のうち、「company」の単語を含むゾンビ論文が排除される。その排除される論文が経済学の論文であれば、目的を果たしていることになる。
今回は排除がなかった。
まとめ
「zombie -firm -philosophical -DDos」の三件は教育学、医学、文学が一件ずつだった。
今回は「zombie」も含めると様々なジャンルからゾンビ論文を確認することができ、大変楽しい記事になったと思う。内容も一読で理解できたため、頭を悩ます必要もなく書き上げることができた。
というか、キリスト教系の論文が出てこなければ大概は書きやすい気がする。
今日はねらいのゾンビ論文なし。
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