2023/11/23(木)のゾンビ論文 キャッシュに残り続けるゾンビデータ

ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。

アラートの条件は次の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender

  2. 「zombie -firm -xylazine -biolegend -DDoS」(取りこぼし確認)

検索条件は次の意図をもって設定してある。

  • 「zombie」:ゾンビ論文を探す

  • 「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する

  • 「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する

  • 「-DDoS」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する

  • 「-xylazine」:ゾンビドラッグに関する論文を排除する

  • 「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する

  • 「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する

また、検索条件2では「-philosophical」と「-gender」という一般性の高い検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる。

今回、それぞれのヒット数は以下の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」二件

  2. 「zombie -firm -xylazine -biolegend -DDoS」三件(差分は一件)

検索条件1は社会学、情報科学が一件ずつだった。また、関連性の低い結果に興味を引く論文があった。


検索条件1「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」

クロスフィットとサバイバル主義

一件目。

原題:CrossFit and Survivalism
掲載:Make America Fit Again
著者:Shaun E. Edmonds
ジャンル:社会学

Greg Glassmanが創立したCrossFitというフィットネス団体があり、生存主義運動なるものと密接にかかわっているらしい。以下、アブストラクトから説明を引用する。

CrossFit's former leader and co-founder Greg Glassman argued that CrossFit participation prepared its adherents for the “unknown and unknowable”—the unplanned and unanticipated problems in life. In this and other ways, CrossFit presents itself as a solution to the constant sense of precarity associated with what Beck (1999) describes as modern risk discourse.
(CrossFit の元リーダーで共同創設者のグレッグ・グラスマンは、CrossFit に参加することで、参加者は「未知かつ不可知」、つまり人生における計画外、予期せぬ問題に備えることができると主張しました。このような方法やその他の方法で、CrossFit は、Beck (1999) が現代のリスク言説として説明しているものに伴う絶え間ない不安感に対する解決策としての役割を果たしています。)

同論文より

生存主義という言葉の意味するところは不明だが、「人生における計画外、予期せぬ問題」がゾンビアポカリプスとつながり、検索に引っ掛かったのだろう。「人生における計画外、予期せぬ問題」からゾンビアポカリプスが出てくるのは「晴天の霹靂」という故事成語を彷彿させるが、外国ではゾンビアポカリプスをどのくらいあり得る危機として捉えているのだろうか。

ジャンルは社会学とした。範囲が広すぎてよくわからないため。


Catalyst: 大規模なインメモリ Key-Value システムのキャッシュ管理の最適化

二件目。

原題:Catalyst: Optimizing Cache Management for Large In-memory Key-value Systems
掲載:Proceedings of the VLDB Endowment
著者:Kefei WangとFeng Chen
ジャンル:情報科学

zombieの単語は"zombie data"という文字列で出てくる。以下のように説明されている。

A well-known limitation of LRU is on handling one-time-access data. Once being admitted into cache, these data becomes “zombie data” and stays in the cache for a long period of time until reaching the end of the LRU list. It negatively affects the caching performance, since these data occupies valuable cache space and causes unnecessary eviction of other more useful data.
LRU のよく知られた制限は、1 回限りのアクセス データの処理に関するものです。 これらのデータはキャッシュに一度許可されると「ゾンビ データ」となり、LRU リストの最後に到達するまで長期間キャッシュ内に留まります。 これらのデータは貴重なキャッシュ領域を占有し、他のより有用なデータの不必要な削除を引き起こすため、キャッシュのパフォーマンスに悪影響を及ぼします。)

同論文より

LRUはLeast Recently Used(一番最近使われた)の略。上の引用から推測するに、LRU何とかという特殊なデータ処理方法があり、「1回限りのアクセスデータ」を処理するものである、と。ただその処理方法に課題があり、LRUリストにデータが載るとずっと残ってしまうために、他のデータを消してしまうということらしい。たぶん、そんな感じ。

過去にもゾンビとキャッシュが出てくる論文は扱ったことがある。そのときはゾンビとキャッシュの関連がわからずに完全敗北を喫したが、今回はきちんと説明があった。助かる。

大容量オブジェクトのための全フラッシュ配列のキー・バリュー・キャッシュ

論文タイトルにある、キャッシュというのはインターネットでどこかのページにアクセスした際の履歴のようなものだと記憶している。もちろん違うかもしれない。で、たまにキャッシュを削除しないか?とPCやスマホが問いかけてくる。だからしている。キャッシュがメモリを圧迫しているのだそうだ。そのキャッシュデータがゾンビとして生き残ってしまう?ということなのだろうか。

2023/05/13(土)のゾンビ論文 ゾンビは…研究者のおもちゃじゃない!
四件目の論文、『大容量オブジェクトのための全フラッシュ配列のキー・バリュー・キャッシュ』より

また、前回も「Key-value」という文字列が論文のタイトルにあったらしい。やはり意味はわからないが…。

ジャンルは情報科学。



検索条件4「zombie -firm -xylazine -biolegend」

上記の条件で誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業とゾンビドラッグ、ゾンビ試薬、ゾンビPCは排除されるように設定してある。

到着の条件

原題:CONDITIONS OF ARRIVAL
掲載:Working with Theories of Refusal and Decolonization in Higher Education
著者:Asilia Franklin-PhippsとRobyn Stout-Sheridan
ジャンル:教育学?

「-gender」で排除されたと推測。掲載誌の和訳が「高等教育における拒絶と非植民地化の理論に取り組む」であり、経験的に「-gender」で排除されていると感じたから。



まとめ

検索条件1は社会学、情報科学が一件ずつだった。

特にコメントすることのない検索結果だったが、Googleスカラーのアラートメールに付属している関連性の低い結果に興味を引く論文が一件だけあった。

次世代動的プログラミング言語Julia: その特徴と生物科学への応用

原題:A next-generation dynamic programming languageJulia: its features and applications in biological science
掲載:Journal of Advanced Research
著者:Soumen Palを筆頭著者として、五名
ジャンル:情報科学

Juliaというプログラミング言語が存在し、生物化学への応用が期待できるという論文である。ほかの言語との比較(ベンチマーク)もある。具体的な話はわからないが、私の興味を引いたのは次の文章だ。

Furthermore, Julia is beneficial in investigating the fractional SIZR model of zombie infection [44], which integrates epidemiological dynamics with a zombie population. In this unique modeling scenario, Julia allows researchers to proficiently define and solve the differential equations that describe the fractional SIZR model. By incorporating fractional derivatives, which capture memory and non-local interactions, Julia's numerical solvers can provide valuable insights into the complex dynamics of human and zombie populations over time. This modeling approach is of utmost importance in comprehending the potential outcomes of a zombie outbreak and devising effective containment strategies.
さらに、Julia は、疫学動態とゾンビ集団を統合するゾンビ感染のフラクショナルSIZRモデルの調査にも有益です[44] 。このユニークなモデリング シナリオでは、Julia を使用すると、研究者はフラクショナル SIZR モデルを記述する微分方程式を巧みに定義して解くことができます。Julia の数値ソルバーは、記憶と非局所相互作用を捕捉する分数導関数を組み込むことにより、人間とゾンビの集団の時間の経過に伴う複雑なダイナミクスに対する貴重な洞察を提供できます。このモデリング アプローチは、ゾンビ発生の潜在的な結果を理解し、効果的な封じ込め戦略を考案する上で最も重要です。)

同論文より

SIZRモデルはSZRモデルを発展させたもので、私も解説記事を書いたことがある。そのときはExcelで単純にシミュレーションをしただけだったが、"fracitonal SIZR model"という発展したモデルを解析するにはJuliaが良い。と言っているのだ。

上の引用の最後の文、「ゾンビ発生の潜在的な結果を理解し、効果的な封じ込め戦略を考案する上で最も重要」というフレーズがなんだかうれしい。ゾンビが本当に存在しているような気にさせてくれる。ちなみに、引用文中のref.44は"fractional SIZR model"に関する論文である。Googleアラートのチェックでは扱ったことがないが、存在は知っていた。

こんな感じで、気になるものがあれば都度関連性の低い結果をチェックすればよさそうだ。

今回はねらいの論文がなかった。


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