2023/06/01(木)のゾンビ論文 ピーガガガ…ザーミンではなくゾンビではありませんか?

ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。

アラートの条件は次の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -DDos」(経済学・哲学・情報科学のゾンビ論文避け)

  2. 「zombie」(取りこぼしがないか確認する目的)

  3. 「zombie -firm -philosophical -DDos -company」(-companyの効果を図るため)

このうち、「zombie -firm -philosophical -DDos」の内容を主に紹介する。ただし、この検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないか、「zombie」の内容も確認する。また、4月まで経済学のゾンビ論文の排除を目的として「-company」を設定していたが、その効果があるのか改めて測定する。

それぞれのヒット数は以下の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -DDos」三件

  2. 「zombie」三件(差分ゼロ件)

  3. 「zombie -firm -philosophical -DDos -company」三件(排除ゼロ件)

「zombie -firm -philosophical -DDos」は考古学、情報科学、書評が一件ずつだった。


検索キーワード「zombie -firm -philosophical -DDos」


歴史的要塞であるミクについてザーミンの科学的研究活動

一件目。

原題:Scientific Research Work of the Zomin in the Historical Fortress of Miq
掲載:World of Science: Journal on Modern Research Methodologies
著者:Yesbergenov Begzod Yerjanovich
ジャンル:考古学

Zomin(ザーミン)はウズベキスタンのジザフ州にある町のこと。


ウズベキスタン、ジザフ州のザーミンの位置

そして、Miq(ミク)とはザーミンにある要塞のこと。「Zomin Miq」や「Zaamin Miq」で検索してもヒットが少ないところを見ると有名ではないらしい。

かろうじて出てきたYoutubeの動画を掲載しておく。動画のタイトルを和訳すると、「ゾーミン国立自然公園 - ミク城」。石垣の壁を見る限り、確かに要塞と言っても謙遜なさそうだ。

zombieの単語が出てくるのは、たとえばアブストラクトの次の文章。

Zamin and his rustaki are mentioned in written sources recorded in the first half of the 7th century BC. However, they also do not clearly indicate the age of the zombie. Earlier information suggests that the area had an ancient and ancient culture.
(ザミンとそのルスタキについては、紀元前 7 世紀前半に記録された文献に記載されています。 ただし、ゾンビの年齢は明確に示されていません。 それ以前の情報によると、この地域には歴史と古い文化があったことが示唆されています。)

Scientific Research Work of the Zomin in the Historical Fortress of Miq
本文より

意味がわかるだろうか。私にはわからない。おそらくだが、私たちが言うところのゾンビを指していないものと思われる。具体的には、”Zominsuv”という単語をウズベク語(ウズベキスタンの公用語)から英語に翻訳した際にzombieという単語が出てきたものと思われる。順番に説明しよう。

まず、"Zominsuv"というのはザーミンを流れる河川のこと。ウズベク語はキリル文字で表記され、"Zominsuv"は"Зомінсув"とつづる。これは"Зомі"と"нсув"に分かれ、"нсув"は水を意味する。(つまりZominsuvはザーミンの水。)一方、"zombie"はキリル文字で"зомбі"とつづる。一文字違いのため、精度の低い翻訳機を通すと"Зомі"が"зомбі"に間違えられ、その結果英語でzombieという単語が出てくる…と考えた。最近の翻訳ソフトは翻訳後の文章に違和感を覚えると勝手に元の文章の文脈を書き換えるそうだから、ミススペルを勝手に書き換える機能があっても(私にとっては)不思議ではない。

推測ではあるが、意味不明な文脈でzombieの単語が使われていることの説明にはなっていると思う。とにかく、この論文はゾンビに関係ないということだけは間違いない。

ジャンルは考古学。史跡についての論文のため。


展性に適用される MPI プロセスの動的生成

二件目。

原題:Dynamic spawning of MPI processes applied to malleability
掲載:The International Journal of High Performance Computing Applications
著者:Iker Martín-Álvarezを筆頭著者として、五名
ジャンル:情報科学

Googleスカラーのメールには、"zombie processes"という文字列があった。ゾンビプロセスは単語から内容が比較的想像しやすい。

ゾンビと無関係の論文と確認されたので、これで終わる。情報科学の論文は内容を理解できないし。


惑星の幽霊: 21 世紀の人種、移住、気候変動(ニール・アフジャ)

三件目。

原題:Planetary Specters: Race, Migration, and Climate Change in the Twenty-First Century. Neel Ahuja
掲載:Multi-Ethnic Literature of the United States
著者:Neel Ahuja
ジャンル:書評

zombieの単語が現れるのは要約内の次の一文。

In recent decades, politicians, journalists, security consultants, and nongovernmental organizations have advanced propagandistic narratives presenting climate refugees as tragically pathetic victims of Nature run amok, or, alternatively, as invading zombie hordes destined to destabilize the “civilized” Global North.
(ここ数十年、政治家、ジャーナリスト、安全保障コンサルタント、非政府組織は、気候変動難民を自然の暴走の悲劇的で哀れな犠牲者として、あるいは「文明化された」グローバル・ノースを不安定化させる運命にある侵略するゾンビの大群として提示するプロパガンダ的な物語を展開してきた。 )

Planetary Specters: Race, Migration, and Climate Change in the Twenty-First Century. Neel Ahuja
本文より

気候変動によって国や地域を追われた難民をゾンビと呼び、危機感をあおる連中がいるらしい。それもグローバル・ノース、つまり北の先進国に。しかも、その物語は単純化されたために、単純化されすぎて物事の本質を見失っている。

と、ニール・アフジャは彼の著書である「Planetary Specters: Race, Migration, and Climate Change in the Twenty-First Century」の中で記述しているらしい。そう、論文というよりはこの本の紹介である。だからジャンルは書評。リンク先にもそう書いてあるし、問題ないだろう。

ちなみに、難民をゾンビと呼ぶ事例は以前にも紹介したことがある。その時は難民自身が自分たちをゾンビを呼んでいたのだが。


検索キーワード「zombie」

このキーワードでは「zombie」ゾンビ論文がアラートに入ってくる。誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。

今回は取りこぼしのゾンビ論文はなかった。



検索条件「zombie -firm -philosophical -DDos -company」

ゾンビ企業には"zombie company"という表記もあることから、そういったゾンビ論文を排除するために設定した検索条件。

この検索条件では「zombie -firm -philosophical -DDos」にヒットした論文のうち、「company」の単語を含むゾンビ論文が排除される。その排除される論文が経済学の論文であれば、目的を果たしていることになる。

こちらも、今回は排除がなかった。



まとめ

「zombie -firm -philosophical -DDos」は考古学、情報科学、書評が一件ずつだった。

そしていずれもゾンビを比喩として扱うタイプの論文であった。

いや、考古学の論文だけは比喩ですらなくゾンビですらなかった。その推理は間違っていないと確信している。間違っていたら悲しい。"zominsuv"が"zomin-suv"に分解できると気づいたとき、脳に電流が走ったように大変気持ちよかったからだ。これで間違いない!と自分の推理に大満足だったのだ。その時の自分を疑いたくない。だから間違っていないという確信は撤回しない。あれは翻訳ソフトのおせっかいが原因だ。

今日はねらいのゾンビ論文はなし。

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