2023/08/23(水)のゾンビ論文 ゾンビナショナリズムにゾンビカトリック
ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。
アラートの条件は次の通り。
「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -philosophical」(取りこぼし確認)
「zombie」(取りこぼし確認その2)
検索条件は次の意図をもって設定してある。
「zombie」:ゾンビ論文を探す
「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する
「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する
「-DDoS」/「-bot」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する
「-xylazine」:ゾンビドラッグに関する論文を排除する
「-viability」/「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する
「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する
また、「zombie」の内容も確認するのは、上記の検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる目的である。ただし、条件4の通り、ゾンビ企業と哲学的ゾンビは完全な排除をねらう。
それぞれのヒット数は以下の通り。
「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」一件
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」二件
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -biolegend -gender」二件
「zombie -firm -philosophical」二件(差分ゼロ件)
「zombie」六件(条件4との差分四件)
「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」は医学が一件だった。また、「zombie」の検索条件に興味深い論文が人文学に一件あった。
検索キーワード「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」
学術開発における公平性の探求: 私たちが創造しているのは知識を蓄えるゾンビなのか、それとも好奇心旺盛で創造的で重要な医療専門家なのか?
一件目。
原題:Exploring Fairness in Scholarly Development: Are We Creating Knowledge Storing Zombies or Curious, Creative and Critical Healthcare Professionals?
掲載:Advances in Medical Education and Practice
著者:Charlotte R den Bakkerを筆頭著者として、四名
ジャンル:医学
zombieの単語が出てくるのは次の文章。
この論文は、関心をもって医療の課題に取り組むのではなく、ただ機械的に知識を身に着けて治療行為をするだけの医師が量産されることを憂えている。そして、そのような医師になるべく訓練されている医学生をゾンビと呼んでいるようだ。
これをゾンビと呼ぶのは、医学の発展に寄与しないことを無機質・無関心・非人間的と認識しているからだろう。あるいは、教科書的な知識に支配され操られている様子を自由意思のないゾンビと見たか。
ただ、医学の発展は誰かに任せてただただ目の前の人間を治す医師も必要であるはずだ。そういう意見に対しては、ちゃんとアブストラクトでも反論している。学術的な分野で活躍しようとしている医師に限定した批判なのである。
ちょっと違うかもしれないが、「知識とスキルより」も「好奇心、創造性、批判的思考」を称揚する辺り、日本のゆとり教育批判を思い出させる。詰込み型教育よりも生徒の自発的なナントカカントカを重要視していたら、知識が足りずに逆に学力が下がってしまったという。どこまで本当かしらないが、散々ゆとりゆとりと煽っておきながらゆとり世代が(私もだ)成人したらなんの訂正もないのだから、きっとある程度の効果はあったのだろう。悪いものがそのまま悪くなったら、日本のマスコミが放っておくわけがないからだ。
ジャンルは医学。医学生に焦点を当てた論文のため。
検索条件1-3の差分
「DDoS/bot」と「viability/biolegend」で検索結果に差異が生じるか調べる。
今回は「DDoS/bot」で差分が見られた。
「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」一件
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」二件
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -biolegend -gender」二件
差分だったのは次の論文。
リビング ウォール ディスプレイ: 自律移動ディスプレイを使用したインタラクティブ コンテンツの物理的な拡張
原題:The living wall display: Physical augmentation of interactive content using an autonomous mobile display.
掲載:Transactions of the Virtual Reality Society of Japan
著者:Yuki Onishiを筆頭著者として、五名
ジャンル:情報科学
相互干渉的な拡張現実(AR)の研究、と言えばよいだろうか。ゾンビがゲームの中におり、プレイヤーが何かするとそれに応じてゾンビが何か動作するというもの。ゲーム関係の、特にARやVRの研究にゾンビがよく出てくるのはなぜなのだろうか。
「-bot」に引っ掛かったのは参考文献の著者にBotがいるため。人名にBotがあるとは考えもしなかった。やはり「-bot」は「-botnet」に変更しなければならない。強くそう思う。
しかし、この論文の報告は2018年のようだ。なぜ今アラートに引っ掛かったのだろうか。
ちなみに、日本の研究室から報告されている論文である。責任著者は東北大学の北村喜文教授。研究室にはインタラクティブコンテンツ研究室という名がついている。そういうのは企業でやるものだと思っていた。
検索キーワード「zombie -firm -philosophical」(差分なし)
上記の条件で誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業と哲学的ゾンビは意図的に取りこぼすこととする。
今回は差分がなかった。
検索キーワード「zombie」
「zombie -firm -philosophical」との差分を確認する。上記条件からも排除され、こちらの条件でのみ引っかかった論文がゾンビ企業・哲学的ゾンビの論文であれば、ねらい通りといえる。
銀行競争とゾンビ企業:中国の実証的証拠
原題:Bank competition and zombie company: Empirical evidence from China
掲載:Economic Analysis and Policy
著者:Yu ShenとMeixu Ren、Jingmei Zhaoの三名
ジャンル:経済学
「-firm」で排除。ゾンビ企業について言及。
スイス経済の最高潮の状況はどうなっているのでしょうか? 資本主義プロジェクトの核心からの証拠
原題:How fares the commanding heights of the Swiss economy? Evidence from the Crux of Capitalism project
掲載:Rux of Apitalism
著者:Magaly Abboudを筆頭著者として、六名
ジャンル:経済学
「-firm」で排除。ゾンビ企業について言及。
宗教、ポピュリズム、現代性:白人キリスト教徒のナショナリズムと人種差別との対峙
原題:Religion, Populism, and Modernity: Confronting White Christian Nationalism and Racism
掲載:このタイトルの本がある
著者: Atalia OmerとJoshua Lupo(著者というか編者)
ジャンル:人文学
「-philosophical」で排除。
"zombie nationalism"(ゾンビナショナリズム)や"zombie Catholicism"(ゾンビカトリック)といった文字列が出てくる。タイトルの通り、(アメリカの)白人キリスト教徒のナショナリズムと人種差別について論じている。
"zombie nationalism"はたとえば以下の記事では次のように定義されている。
本来ならば死んでいて然るべき民族的宗教的ナショナリズムが死にもせずに生き続けている。そんな憤慨の気持ちが聞こえてくるようだ。
次に、"zombie Catholicism"はフランスで生まれた概念。下記記事によれば、フランスはヨーロッパにおけるカトリック教大国であり、50%の国民が自信をカトリック教徒であると自認しているが、ミサなどに出ているのは5%程度であるとのこと。
死後の世界で救済されるカトリック教を信仰しておきながら、教義的に重要な催し物には参加しない様子をもってゾンビとしている、と考えてよいだろうか。
どちらもキリスト教が絡んでいるところを見ると、日本で「ゾンビナショナリズム」という言葉を使うためには日本の歴史・文化を鑑みて言葉を再定義する必要があるだろう。たとえば、単に日本の保守派を「ゾンビナショナリスト」などと呼ぶのは「ゾンビ」があってもなくても変わらない。アメリカのポリコレ支持者がわざわざ「ゾンビ」と名付けた意図を組むべきだろう。
最適な破産制度: 文献レビュー
原題:Optimal bankruptcy regime: a literature review
掲載:Future Business Journal
著者:N.V.V. Satyanarayana PuchakayalaとRamanujam Veluchamy
ジャンル:経済学
「-firm」で排除。ゾンビ貸し付けのレビューがメイン。
まとめ
「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」は医学が一件だった。また、「zombie」の検索条件に興味深い論文が人文学に一件あった。
人文学の一件は大変興味深かった。キリスト教徒に人種差別主義者がいるとは今まで全く白人が我々日本人にポリコレを押し付けてくるのはキリスト教の宣教師マインドからくるものと思っていたからだ。キリスト教の教義がポリコレに沿う→宣教師マインドを発動して人権後進国に教えを輸出するというステップを踏んでいるものと思っていたのだ。
しかし、どうやらキリスト教の中にもアンチポリコレなナショナリストにしてあらゆる世界で忌み嫌われるべき人種差別主義者とかいうのがいるらしい。キリスト教とポリコレがセットではないとすると、白人の宣教師マインドのみがもとより欧米人に組み込まれていて、たまたまキリスト教の宣教師アクションと相性がよかっただけなのだろうか。あるいは、当然だが、ポリコレ支持のキリスト教徒がいて、そういった人間のみが教えを輸出していただけか。
今日はねらいのゾンビ論文なし。
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