2023/09/30(土)のゾンビ論文 ホラー映画と信仰心

ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。

アラートの条件は次の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -botnet -xylazine -biolegend -gender」

  2. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -viability -gender」

  3. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」

  4. 「zombie -firm -philosophical」(取りこぼし確認)

  5. 「zombie -firm -consciousness」(取りこぼし確認その2)

検索条件は次の意図をもって設定してある。

  • 「zombie」:ゾンビ論文を探す

  • 「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する

  • 「-philosophical」/「-consciousness」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する

  • 「-DDoS」/「-botnet」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する

  • 「-xylazine」:ゾンビドラッグに関する論文を排除する

  • 「-viability」/「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する

  • 「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する

また、検索条件4と5では、上記の検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる。

今回、それぞれのヒット数は以下の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -botnett -xylazine -biolegend -gender」ニ件

  2. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -viability -gender」ニ件

  3. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」ニ件

  4. 「zombie -firm -philosophical」五件(差分三件)

  5. 「zombie -firm -consciousness」四件(条件4との差分一件)

検索条件1-3は感染症学と評論が一件ずつだった。


検索条件1「zombie -firm -philosophical -botnet -xylazine -biolegend -gender」

適時観察:すべての感染症ではなく、新型コロナウイルス感染症のみの懸念

一件目。

原題:Only COVID‐19 and not all infectious diseases are of concern: A timely observation
掲載:Health Science Reports
著者:Rehnuma NasimとJannatul Ferdous Tisha、Syed Masudur Rahman Dewan
ジャンル:感染症学

zombieの単語はゾンビウイルスとして出てくる。悠久の過去に永久凍土に封印され、地球温暖化によって溶けてはい出てくる未知のウイルスのことだ。

たとえば次の論文に概説が載っている。

今回の論文は多くの感染症を紹介し、その症状や社会に対する危険性を検討するもの。ただもちろん、ゾンビウイルスの症状の紹介はない。ジャンルは感染症学。


エクソシストの影響:ホラー、宗教、悪魔の信仰

ニ件目。

原題:The Exorcist Effect: Horror, Religion, and Demonic Belief
掲載:このタイトルの本がある
著者:Joseph P. LaycockとEric Harrelson
ジャンル:評論(宗教的批評)

本の紹介文を引用する。非常に端的に本の目的を示しているからだ。

Examines the effect of horror movies on religious practices and beliefs
(ホラー映画が宗教的慣習や信仰へ与える影響を調査します)

The Exorcist Effectより

確か以前、ゾンビ映画を好むほどキリスト教への信仰心が薄まるという論文を紹介したことがある。悪魔的思想に親和的になる、とも書かれていたように記憶している。

信心深いキリスト教徒の若者の信念と行動の一貫性: NSYR への定量的支援

原題:Consistency in Beliefs and Behaviors of Highly Religious Christian Youth: Quantitative Support for the nsyr
掲載:Journal of Youth and Theology
著者:Ronald G. BelsterlingとDonald Shepson
ジャンル:宗教学

2023/05/13(土)のゾンビ論文より

キリスト教の観点からホラー映画を分析する場合、大体はキリスト教→ホラー映画という一方向的な影響を分析することが多い。要はキリスト教の直接的な描写や暗喩されているキリスト教的要素の読解だ。しかし、今回はホラー映画→キリスト教という逆方向の影響を分析する。珍しい。

ジャンルは評論。深堀するなら、宗教的批評だろうか。いやむしろ、上述したようにホラー映画→キリスト教という影響を調べると評論でもなく、宗教学としてもよいかもしれない。ただそれも違和感があるので、評論とする。



検索条件1-3の差分(差分なし)

「DDoS/botnet」と「viability/biolegend」で検索結果に差異が生じるか調べる。

今回は差分がなかった。



検索条件4と5「zombie -firm -philosophical / consciousness」(差分なし)

上記の条件で誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業と哲学的ゾンビは意図的に取りこぼすこととする。

また、哲学的ゾンビのみを排除するには「-philosphical」(哲学的な)と「-cousciousness」(意識)のどちらが良いかを探るために、検索条件の4と5を比較する。

前者は哲学的ゾンビが英語でphilosophical zombieとつづることから、後者は哲学的ゾンビが人間の意識の有無に注目した概念であることから、それぞれ排除可能と想定している。

今回は、検索条件4に検索条件1-3と三件の差分が、検索条件5に二件の差分があった。

躁病の歴史: 子どもの喪失、記憶の喪失

原題:Manic History: Losing Children, Losing Memory
掲載:Critical Times: Interventions in Global Critical Theory
著者:Christopher Bracken
ジャンル:評論

何で排除されたかは不明。検索条件4でのみヒット。

『Rhymes for Young Ghouls』という先住民族に起こった惨劇を描く映画の評論。Wikipediaを読む限りゾンビは出てこないようだが、論文中には"zombie priest"(ゾンビ司祭)という文字列が見える。まあ、比喩としてそう表現しているのだろう。

検索条件5に引っ掛からなかったためconsciousnessという単語があったが、もちろん哲学的ゾンビを扱う論文ではない。検索条件5は今回も目的を達成できていなかった。


イライラを楽しむ?TikTokインフルエンサーの感情表現がCOVID-19ワクチン接種メッセージへのユーザー関与を予測する

原題:Fun with Frustration? TikTok Influencers’ Emotional Expression Predicts User Engagement with COVID-19 Vaccination Messages
掲載:Health Communication
著者:Ellie Fan Yang
ジャンル:健康医学

何で排除されたかは不明。検索条件4と5でヒット。

TikTokインフルエンサーの感情的な表現がTikTokユーザーに与える影響、特にコロナワクチン接種行動に与える影響を定量的に解析した論文。その結論が「イライラを楽しむ」なのだろうが、イライラを求めるのはTwitterユーザーだけではなかったのか…?


マルチパラメトリックフローサイトメトリー解析を使用した肺マウス CD4+ T 細胞の機能表現型解析

原題:Functional Phenotyping of Lung Mouse CD4+ T Cells Using Multiparametric Flow Cytometry Analysis
掲載:Bio Protocol
著者:Céline M. MaquetとLaurent Gillet、Bénédicte D. Machielsの三名
ジャンル:医学

「-viability」と「-biolegend」で排除。検索条件4と5でヒット。

久しぶりのゾンビ試薬が出てくる論文。



まとめ

検索条件1-3は感染症学と評論が一件ずつだった。

キリスト教とホラー映画の論文は興味を引いた。なぜなら、フィクションで信仰心に影響を与えられるならば、フィクションは悪用できるからだ。プロパガンダ映画をそれとわからないように作り、流し、キリスト教に限らず文化の精神の中心を毀損することができる。その可能性を定量的に示した論文であると推察する。

ただ、「他者」に慣用的な文化でしか通用しない気もする。たとえばだが、イスラム文化でそんな映画を作ったらすぐにねらいに気づかれて焼かれてしまうのではないか。そこの塩梅も興味がつきない。

今回はねらいの論文がなかった。


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