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情報のアクセシビリティと情報格差 新しい社会で生活してくのは大変だ! in スウェーデン


研修はあったものの現場で覚えてね!と働き始めて早一ヶ月、手探りですが、苦手だった電話対応にも慣れ、できることが増えてきて楽しい日々です。

自分が実際に経験したスウェーデン語学校の登録やプロセス、大学や大学院申し込みインターン中に学んだ難民受け入れと定住支援に関してはどこの省庁の何を見ればいいのか、どことどこの省庁が協力してるのか、どんな市民団体が支援してるのかなどわかります。

が、その他の社会システム(失業手当とか生活保護申請とか)に関しては毎日毎日先輩に聞いたり、検索したり… 

という日々を過ごしながら、

自分の仕事 Samhällsvägledare 社会の道案内人 の基本は、市民の人が情報にアクセスするのをサポートすることを通して、情報格差を縮める、というものかなという理解にいたってます。

これは、

最近読んだ

目の見えない人は世界をどう見ているのか

という本がヒントになりました。(ヒントと言うかそのまんまですが)。

アクセシビリティは施設やサービスへのアクセスのしやすさ、その度合いを指す言葉だが、最近は情報に対するアクセスのしやすさの度合いを指す言葉になりつつある。
アクセシビリティと情報格差がセットで用いられる時にある考え方は
「ハンディキャップのある人とそうでない人の情報量の差、すなわち情報格差をなくすことが社会的包摂には必要だ、という考えです。こうした考えのと、アクセシビリティを高めるためのさまざまな福祉活動がなされます。伊藤 36頁」

伊藤 


市民サービスオフィスで手伝う事が多い案件は

1 生活保護申請

2 失業手当申請

3 労働組合への定期報告や問い合わせ

4 様々な行政カスタマーサポートへの電話

5 保育園・学校への申し込み

6 色々な支払い手続きのサポート

7 ビザ手続きなど移民局案件

です。

7は移民局の管轄ですが、移民局にたらい回しにされた方がどうしたら良いのー!とよく駆け込んできます。
些細な間違いで手続きが遅れたり、移民局ホームページに書いてある内容の解釈が難しいという理由により、市民サービス課は手伝えません。
なので、NGOや法律事務所が行っているビザ手続き相談窓口(無料)を紹介します。移民局に聞いたらなんとかなりそうなことは、相談しに来た方と移民局に電話したりもします。

主な仕事は、1-6 のことを市民が自分でできるようになるようサポートすることなのですが、

A そもそも行政側が情報をどれだけアクセスしやすくしてるのか

B 市民個人個人が、情報にアクセスする技術をどれだけ持ってるか

が相まって一筋縄にはいかない…と感じています。

A そもそも行政側が情報をどれだけアクセスしやすくしてるのか


日本のお役所ホームページ群に比べるとまだマシではあるものの、それでも見にくいスウェーデンのお役所ホームページたち。


移民局
年金局


税務署

移民局Migrationsverketが最悪で、Pensionsmyndigheten年金局 がなかなか使いやすいです。

とっても大事な情報です。
しかし、デジタル化が進んで久しいスウェーデンなので、この情報にアクセスするためにはデジタル技術の基礎知識、例えばパソコンやスマホを使える、を習得していることが大前提です。

情報に至るまでのアクセシビリティは色々ハードルがあるというのが現状です。

B 市民個人個人が、情報にアクセスする技術をどれだけ持ってるか


市民個人個人が、情報にアクセスする技術をどれだけ持ってるか に関しては

スウェーデン語や英語を読めるか

カスタマーサポートに電話したりメールしたりできるか

デジタル技術 パソコン、スマホ をこれまで使ったことがあるか

情報を使う技術があるか
得た情報が示す意味を理解し、自分の状       況に当てはめて使っていく技術

などなどが壁だなと市民サポートをしていて感じます。

スウェーデンは公用語がスウェーデン語、ほとんどの人は英語もできますが英語版ホームページだとスウェーデン語版に比べてガクッと情報量が減ります。他言語では更に減る…。

また、カスタマーサポートもしかりで、移民局だとスウェーデン語で電話しないとなかなかちゃんと対応してもらえないという公然の秘密が存在します。
加えて、最新の情報がホームページに載ってないこともよくあるので、電話やメールで問い合わせしないといけない状況はよく生じます。なので、市民課のサポートを受けて電話したい方がよく来ます。

スウェーデンでは、役所と銀行、インフラ会社などで自分の情報を見たり支払いをしたりするには、デジタル本人認証ID(Bank ID)が必要です。

Bank ID


そう、スマホが必需品なんですね。
毎度毎度ながーい待ち時間が苦にならないなら、役所に直接行くこともできますが 営業時間が短かったり、そもそも予約しないといけなかったり。
手紙で通知が来ても、詳しくはホームページにある Mina Sidor自分のページ を見てね!! と書いてあって、日々の手続きや支払いはデジタル技術が使えることが前提なのです。

最後にもう一度伊藤さんの本に戻ります。
伊藤さんが「道」について書いた文章が、Samhällsvägledare 社会の道案内人 の仕事を説明するのにちょうどいいです。

「「道」は「こっちに来なさい、こっちに来てこうしなさい」と、(人々の)行為を次々と導いていく環境の中に引かれた導線です。」53

伊藤 53頁

Samhällsvägledare 社会の道案内人 は、市民の人が情報にアクセスして使えるように 導きます。
すでに各省庁やインフラ会社などは、情報への導線を引いているが、その導線が何処にあって何処へつながるのかわかりにくいのです。 
言語の壁があると難しいですし、社会システムがどう機能してるか知らないと理解するのが大変です。
また、そもそも自分が何処にいるのかわからない市民も多いです。
Samhällsvägledare 社会の道案内人は、市民の人に、ここに導線があるよ、と見せ、あなたの現在地はここだから、情報A B Cのうち、AとBが当てはまりますよ。Cはもう少し先で必要な情報ですよ、と説明します。
例えば、
「社会保険局が、失業手当受け取りや仕事探しのために、あれこれしろって言ってるけど、どこの役所に聞いたらいいのかわかんない!」
という方がよく来ます。
その方には、まず、失業してから再就職するまでの道のりを案内します。
その道のりで、どの役所がどんな支援を提供していて、その支援を受けるためにはどのタイミングで 何をしないといけないのか を 図やホームページを見せながら説明します。
迷子になっても、またここに来て一緒に歩こうね、あなたならできるよ!!と応援しながら、はじめの道を並走します。
そして、途中からSamhällsvägledare 社会の道案内人のgpsが無くても、市民の人が一人で歩いていけるようになるのがこの仕事の目標です。




参考

伊藤亜紗 2015 目の見えない人は世界をどう見ているのか 光文社新書



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