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故郷のこと、知っていますか?
僕は自分の生まれ育った土地が好きだ。水は綺麗で空気は澄みわたっている。住む人たちは勤勉で、優しく、親切で、小さな頃から地域に育ててもらったという感覚がある。
親友も多く残っている。会えばいつでも小学校の頃にも、高校の頃にでも戻れる。もちろん時間を戻す必要のないことも多い。
でも、みんながみんな故郷が好き、と言うわけじゃないと思う。
嫌な思い出が詰まっている人もいるだろうし、単純に不便だったり、人が嫌だったりもするだろう。
けど、人は生まれたところからは逃げられないと思う。
必ず誰かに聞かれて、その都度思い出す。
嘘をついたとしても、自分は思い出す。
「どうやったら故郷が好きになれるの?」
以前付き合っていた女性から聞かれたことがある。
彼女は都会に生まれ育って、いい家族に恵まれ、不自由はないらしい。けれど、その街に生まれたからいまの自分がある、と言うほどには影響を受けていないそうだ。
僕にはこの問いに答えを持っている。もちろん自分にしか通じないものかもしれないけど。
それは、
「自分の人生は抜きにして、なんで先祖はその土地に住み始めたかを調べてみよう。そうすれば愛着が湧く。」
と言うことだ。
僕の故郷は山に囲まれた、現代では不自由と言われる田舎だ。けど、水は豊かで、山には果物や獣がいて、作物もよくできる。
作物が実りやすく、食うに困らない、人が住みやすい土地ということだ。
でも、最初から住みやすかった訳でもないらしい。
町史を見ると、かつては木々が鬱蒼と茂り、土地には大岩がごろごろしていたようだ。川は中世まで氾濫を繰り返していたらしい。
町で発掘された遺跡や少しずつ削られていった山裾を見れば先祖の苦労が目に見えるようである。
僕は何を言いたいのかというと、
「自分にとって愛着のない土地であっても、何百年もの間、人々が住み続け、改良を重ね、発展させてきたからこそいまがある。」
ということだ。
そういう先祖のたゆまぬ努力の後を感じれば、簡単に故郷は嫌いになれない。
調べることは難しいことじゃない。各県や町には歴史をまとめた本がある。図書館で借りればわざわざ買う必要もない。
いま、全国で「田舎」が危機的な状況に陥っている。
仕事がない、不便、つまらない、様々な理由で人が出て行っている。町はどんどん老いていっている。
今度は僕から皆さんに問いたい。
「皆さんの故郷は元気ですか?故郷のこと、知ってますか?その上で、無くなってもいいですか?」
いまは都会にいても、好きな地域に納税することができる。しかも、その土地の特産品や工芸品なども金額に応じて貰える。
手元にはもうすぐ給付金がやってくる。
自粛生活で疲れた自分や家族にご褒美もあっていい。けど少しだけ、少しだけでいいから、故郷にも分けられないだろたか。
かつて日本人は山と川と少しの平野しかないこの国を自らの手で切り開き、自然と共存してきた。
その証があなたの故郷の田舎のはずだ。日本に最初から都会地があった訳じゃない。
僕は、自分の子どもに、孫に、遙かな子孫にこの風景を残したい。あなたはどうですか?
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