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シノイキスモス短編小説集

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フィクションです。
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2020年4月の記事一覧

短編小説|くるしみPay

 上司に理不尽に怒られた仕事の帰り、コンビニに寄って夕飯を買った。レジで「くるしみPayで」と言うと、店員は「かしこまりました」と言ってレジを操作した。残高、14,080円。今日もよくくるしんだらしい。

 クライアントに理不尽に怒られた仕事の帰り、コンビニに寄って夕飯を買った。やっていられない気分になって、缶ビールも買った。レジで「くるしみPayで」と言うと、店員は「かしこまりました」と言ってレ

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短編小説|ユニバース

 朝、軽くジョギングに出かけようとして、スマートフォンで音楽を探した。聴こうと思っていたバンドの曲が見つからない。この間再生した記憶があるのに、検索しても再生履歴を探してもどこにも、1曲もない。配信停止になったのだろうか。しかたなく別のバンドの曲をかけた。

 住宅街を抜けて、大通りに沿ってジョギングをはじめて、すぐに異変に気がついた。あたりがやけに静かだ。人が少ない、車も少ない。たまに鳥の声が寂

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短編小説|フラミンゴおじさんは死んだ

 少年がフラミンゴおじさんにはじめて会ったのは、朝から雨の降っている日曜日のことだった。おじさんは森の中でグリズリーベアとインディアン・ポーカーをしていた。少年はその時のことを今でもはっきりと思い出すことができる。でも、フラミンゴおじさんは死んだ。少年はホットミルクをすすった。

 少年はよくフラミンゴおじさんの小屋を訪ねた。ある雨の日も、少年はこっそり家を抜け出して、フラミンゴおじさんのもとへ向

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