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読書感想文 4「老いてきたけど、まぁ~いっか。」 野沢直子

僕と同年代、1963年生まれのコメディエンヌ、バンド歌手、作家。米国在住。
あの野沢直子も、もう還暦か。彼女が自分の老いについて、しっかりと向き合って書いた本。
宣伝を兼ねて来日し、清水ミチコさんと動画配信をしたのを見たが、あいかわらず爆笑させてくれる。
名曲「おーわだばく」でお茶の間を大いに賑わした頃から全然変わっていないその圧倒的存在感がうれしかった。
彼女がなんか一言しゃべるだけで、声を出して笑えるほどおもしろいのだ。
何かで見れば必ず面白いけど、普段はあまりお見かけできないのが残念だが、ずっとアメリカ在住で子育てされていたからだ。そのお子さん達も大きくなってみな巣立っていくことになり、今度は残りの自分の人生にあらためて向き合うことになった彼女。
本の冒頭はひたひたと忍び寄ってくる老いを見つめ、どう付き合っていくかの考察。まずは自分の体の『老い始め現象』に対する驚きが執拗に描かれる。そこは性別の違う僕もいろいろと共感するところ多く、寝床で爆笑しながら読んでそのまま幸せな気持ちで眠りにつく。
そんな感じで、毎晩ちびりちびりとナイトキャップのように読んでいる。
中盤に差し掛かると、お父様の実に個性的な「ローラーコースター人生」が語られる。野沢直子さんはお父様のことでそうとう苦労されたとのことだ。だから最後に介護が必要になるかどうかというときにもずいぶん頭を悩ませたという。このあたりも悲しいけれども大きく共感した。子が長年に渡って親の介護するってどうよ?という問題。その後、お父様が亡くなったあと、彼女は自分がいつかもし介護が必要になる時がきたとしても、子供に迷惑はかけたくないと強く思う。人間は誰かに迷惑をかけずに生きることなど出来るわけはないのだが、できる限り最小に抑えたいという気持ちはよくわかる。あえて子に自分の世話を強要したりはしたくない。それ以前に、年は取ってもできる限り元気で長く生きていきたいと思う。そのためには好きなことをやって楽しく生きるのが一番と彼女は考える。
「『死にたくないから生きておく』と『長生きしたい』は、違う。」と言い切る。
実は、僕はこの3年ほど、最悪のコロナ時代でもあったせいか、老いについて考え出すと暗くなる一方だった。だが同年代の野沢直子が「老い」について実に愉快で的確な見解を、気軽に読める「本」で示してくれた。
僕にも同じように還暦が迫っている。いろんな言い方がある。「自分を年寄りと思ったらほんとにそうなるよ」とか、「自分はまだ若いと思うのはそうでないことから目をそらしているだけだ」とか。だけどやっぱり、本当の気持ちを考えると、それは「できるだけ楽しく長生きしたい。そしてなるべくまわりに手間をかけないようにして最後を送りたい。」いろんなお年寄りを見ているとそれはそうとう難しいことに見える。だけど、実はそういうことは可能じゃないか。実はそんなに暗くならなくてもいいんじゃないか。この本は、そんな風に少し前向きな気分を僕にあたえてくれる。

終盤に差し掛かって、、、実はまだ最後まで読み終えていないのは、残りはちびちびと楽しみを先延ばししながら、長生きの最後のようにこの本を楽しもうと思うからだ。読み終わったら満足して忘れてしまってはいけないので、フライングして感想文を書いておくことにした。
遠いアメリカから、元気をくれる野沢直子さんに感謝。いつまでもお元気で。

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