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下北沢と映画の話
先日の朝「今日はママとポケモンセンターに行くんだけどパパは来ないでね」と子どもに言われた。まるで「今日の晩ご飯はカレーだよ」くらいにさらっと言われたので、思わず「は、はい」と言ってしまった。言った後で、ついにうちの子も反抗期的なものがやって来たんだ(ちょっと寂しい)。と思っていたら「開店前から並んでゲットしたいものがあるんだけど、パパ歩くの遅くて足手纏いになるし、腰痛いから大変でしょ」という。
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ディスられつつ優しい気遣いも含まれている、どう反応すればいいのかわからない言葉に僕の脳みそがフリーズしている間に、3人はぱーっと出かけて行ってしまった。「ぱーっと」という言葉がこれ以上似合うシーンにはもうお目にかかれないのではと思うくらい見事なぱーっとっぷりで、(これは確かについていけない)と思った。
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ということで「ひとり時間」という超貴重な贅沢オプションを与えられたので、洗濯と掃除を普段の3倍のスピードで終わらせて、一人ぶらっと出かけることにした。
みんなで出かけるのも楽しいけど、自由なひとり行動はやっぱり格別。何をしようか考えるだけでわくわくする。
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妻と子どもたちはご飯も食べて来て帰りは夕方になると行っていたので、時間はたっぷりある。
気になってた展覧会を観に行こうか。新しいカフェをハシゴして開拓してみようか。カップラーメンとお菓子を買い込んで家に帰りベッドの上で食べながら映画を見ようか。。。どれも間違いなく最高だろう。
ああ自由だ。『アーレントと革命の哲学』の筆者の森さんが「自由の原義は移動の自由」と書いていた。
今ならその意味がよくわかる。どこに行ってもいい。その自由が嬉しい。今日が雨でもきっとショーシャンクの空のように両手を広げて飛び出していただろう。
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駅に着いたらちょうど電車が来た。車内で路線図を見ながら、そういえば下北沢の駅前にある映画館には一回も行ったことがないことを思い出す。いいかも映画。何がやっているかわからないけど、その時にやっているのを観よう。せっかくなので、遠回りをして街並みをスナップ撮影しながら映画館へ向かう。
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「朝になるとむなしくなる」という映画を観た。
会社を辞めた主人公がバイトするコンビニに昔同級生だった人が来て再会し、少しずつお互いの話をして理解していく。その過程を丁寧に時間をかけて映していた。
登場人物が全員優しかった。全ての具が体に優しい温かいスープみたいな映画だった。
一人で映画を観るのは好きだが、観終わった後に感想を言い合える人がいないのが寂しい。二人で映画を観たいと思った。
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映画館の外に出るとちょうど夕焼けが綺麗でしばらく空と街並みを見ていた。
水色、オレンジ、紺と黒、まだ少し残る昼の気配が夜に飲み込まれていく夕方のグラデーションはこの世で最も綺麗なものの一つだと思う。
写真を撮ったけど、見た通りには撮れなかった。きっとどれだけいいカメラとレンズを使ってもその全ては写しきれないと思う。
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帰りの電車に乗る。
家に着いたら、妻と子どもたちに今日見た映画の話をしよう。
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