見出し画像

【USG20th・725】オーケストラを観にいったよ

最愛のバンド・UNISON SQUARE GARDENの20周年アニバーサリー、武道館公演。あまりにも幸せで、忘れたくなくて、だけど全部言葉にしてしまうのはもったいなくて……という葛藤を2週間抱えたけれど、25日については自分なりの言葉でちゃんと残しておきたかった。夢中だったから細かいところは覚えていないし、記憶違いもあるかもしれないけれど、人生最高の幸福で胸がいっぱいだった、特別な夜の思い出。


7月25日、当たり前のように30度を超えた木曜。仕事終わりに、浮かび始めた汗はそのままにして……どころか、滝のように流れる汗を拭う暇もなく駆け込んだ、UNISON SQUARE GARDEN武道館公演「オーケストラを観にいこう」の記憶。

チケットもぎりをはじめ、この日の会場の案内スタッフは全員ジャケットを着用。なんてコンセプチュアルな1日……! とワクワクしながら、北西側の注釈席へ。メンバーの姿は後ろからしか見えないけれど、指揮者の表情やオーケストラの演奏風景がとってもよく見える席! そして、この日のSEはラヴェルの「ボレロ」。徐々に盛り上がっていく曲調にあわせて、こちらの心も高鳴っていく。

客電が落ち、オーケストラのメンバーと指揮の伊藤翼さん、キーボードの成田ハネダさんが入場。そして斎藤さんがステージに上がる。ジャケットがめちゃくちゃ似合う……!

長い拍手が終わり、静寂。すっと息を吸った斎藤さんが歌い始めたのは「アンドロメダ」。弦、木管、金管、ティンパニと歌に寄り添いながら、徐々に音が厚くなっていくさまは「美しい」以外の形容が見つからなくて。1曲目の時点で、この日のライブの特別感を十分すぎるほどに痛感した。

終盤で田淵さん・鈴木さんがステージ上へ。そして2曲目の「フルカラープログラム」で大歓声! 『DUGOUT ACCIDENT』で死ぬほど聴いた曲順! もともと大好きな曲だけれど、フルオケの迫力はあまりにも別格! USGラジオで「ジャンプ原作アニメのOPタイアップみたいな仕上がり」と言っていたけれど、まさしくそんな風格。楽曲の持つキラキラが何百倍にも増幅されて、武道館は一気に祝祭ムードに。

ここで最初のMC。「こう見えてUNISON SQUARE GARDENです」と笑う斎藤さんが、この日のためだけに編成された“USGフィル”を得意げに紹介する。このタイミングで明かされた「前後半に分け、間に休憩をはさむ」という構成もオケコンさながらで、改めて今日がどんな日かを実感した。

ストリングスと木管のみの編成になり、「さわれない歌」。ストリングスのスタッカートが良すぎる……。聞き慣れた同期と同じアレンジではなく、半音の絶妙な上下が加わるなどしていて、メッセージ性も特別感も増し増しに。途中、ギターとベース、ストリングスがユニゾンで鳴るのも耳慣れない音で面白い! そして「君はともだち」は田淵さん・鈴木さんが一度ステージを降り、ストリングスセクションとボーカルのみでしっとり聴かせるアレンジに。武道館中を満たすあたたかな音と歌を、永遠に聴いていたいと思うほどの名アレンジだった。

続けてナリハネさんのキーボードソロ、絶妙な不協和音の畳み掛け。当たり前なんだけど、めっっっちゃくちゃ巧い……。北西スタンドからはナリハネさんの手元が見えなかったので、ピアノ弾きの端くれとしては、円盤が出たらしっかり観たい。

お次は「harmonized finale」「kaleido proud fiesta」と、普段のライブでは同期を使う2曲。貴雄さんが同期用のヘッドフォンをつけていないという、それだけで感極まりそうになる……。当たり前なんだけど同期と生オケとでは音の広がり方が全然違っていて。しかも注釈席は、ストリングスの音圧がそのまま飛んでくる位置取り。前日も注釈席だったので、正直23日まで「2日とも後頭部か~」という気持ちが消えなかったんだけど、蓋を開けてみたらこの日は「注釈席でよかった!」と心底思えた。

そんな壮大なサウンドの中央で、埋もれることなく輝くのが斎藤さんの歌とギターであり、田淵さんのベースであり、貴雄さんのドラム。特に「harmonized~」のラスサビ前キーボードだけになるところや、「kaleido~」のラスサビ出だしの歌だけになるところなど、音が一瞬薄くなるパートでの歌の美しさが際立つ。それにしても惚れ惚れするくらい、唯一無二の歌声だ。

この流れで何が来るかと思ったら「カオスが極まる」! このセクション、1曲くらいわけわかんない曲が聴きたいと思ってたけど(個人的予想は「天国と地獄」だった、これはこれでいつか聴きたい)、想像以上のやつが来た……。どなたかがSNSで言っていたけれど、ラスボス戦を思わせる荘厳な凶悪さ。カオティックな間奏のとことか、ストリングスもぐりんぐりんに歪ませててめちゃくちゃ気持ち悪かった! オーケストラの持つ狂気、大好き。

さらに、畳みかけるように「オリオンをなぞる」もうね、カタルシスがえげつない。9年前の武道館ではやらなかったこの曲が24日に演奏されたときも心震えたけれど、オーケストラでも聴けるなんて、喜びを超えて半ばパニック。FCツアーでキーボードが生演奏だったときにも思ったけれど、どんな編成であっても、筆舌に尽くしがたい名曲だ。

前半のあまりの壮大さに「印税が減るけど、来年以降は30人編成になるかも」と笑みをこぼす斎藤さん(後ろで指揮者の翼さんがガッツポーズ)。このセクションの最後の曲は「春が来てぼくら」。絶対に聴きたかった曲。生のストリングスの音には世界がこじ開けるような迫力があって、よりやわらかくて美しい曲に。音楽って、最高だ。

ここで15分の小休止。クラシックのファンにとってはお馴染みのブザー音を合図にホーンセクションが入場開始。ブザーに拍手するユニゾンファンたち、かわいい。

ホーンセクションの1曲目は「like coffeeのおまじない」。ホーンと言ったらこの曲、絶対に聴きたかった! パーンと弾ける、金管やサックスにしか出せない気持ちの良い音。木管吹きとしては羨ましくなってしまう。斎藤さんの歌も、いつもより気持ちテンション高めに感じた。そういや、昔なにかのライブのサウンドチェック時にこの曲の同期が流れてネタバレしたことがあったような……。そんなことを思い出して、今日は生音~! と喜びをかみしめるなどした。

続く「フライデイノベルス」は予想外。だけど、この曲の持つ多幸感やときめき感には、ホーンがものっすごく合う……! 意外性と親和性ではこの日一番だったかも。リズムに合わせて体を左右に大きく揺らす田淵さんも、こころなしかいつもより楽しそうな。

ホーンセクションだけでも有り余るほど幸せなのに、「友達がお祝いに来てくれました」と言う斎藤さん。最初に呼び込まれたのは、SEでお馴染みのイズミカワソラさん! ぴょこぴょこと猛スピードで駆けてくるソラさんに、ぶんぶんと手を振る斎藤さん・田淵さん。

ソラさんが「はい」しか言わないので、「お祝いの言葉など……」と促す斎藤さん。「おめでとうございます」と言うソラさんと、「MC聞こえないんだ……」と呟く斎藤さんの噛み合わなさが、今年頭のFCツアーを彷彿とさせてほっこり。そして「何度でも言います」と祝ってくれるソラさんにまたほっこり。

ソラさんの「mix juceの言うとおり(小声)」の曲振りから、軽快なイントロへ。これこれー! わたしはソラさんの鳴らす軽やかな鍵盤の音色が大好きだ。ナリハネさんは間違いなく素晴らしいキーボーディストなんだけど、ソラさんじゃないんだ……という一抹の寂しさは拭えずにいたので、うれしかったな。キーボードの周りをチョロチョロする田淵さんも楽しそうで、ほっこり幸せ空間でしかなかった。

曲が終わるなり、またぴょこぴょことものすごい速さで帰っていくソラさん。見送った斎藤さんが「妖精さんだったのかな(笑)」とこぼしたけれど、ソラさんは本当にそういうところがある。

続くゲストは、BIGMAMAのドラマー・ビスたん! 鼓笛隊のようにバスドラムを抱えて登場。となると次の曲はたいがい予想がつくけれど、ここからの展開は想像のはるか斜め上。「20年間、お二人が動くのを後ろからうらやましがって見ていた」という貴雄さんにバスドラムを渡すと、なんと貴雄さんがステージ上を縦横無尽に動き回ることに! もちろん、楽曲は「恋する惑星」だ。

足を上げて楽しそうに練り歩く貴雄さん、なんだか見慣れた動きをしていて(笑)。もうね、動く動く。そしてコーラスパートになると、マイクの前に駆け戻ってくる。すごく……すごく知っているぞ……。20年も後ろから見ていたら、自然と染み付くのかな。

決めフレーズの箇所では、ドラムを指すかのように貴雄さんも決めポーズ! さらに中盤では斎藤さんのマイクで爆音コーラス(終わった後に手を合わせるみたいなジェスチャーをしていた)、終盤は田淵さんのマイクでも一緒にコーラス。それに、ユニゾンのライブではすごく珍しい光景なんだけど、曲中のバスドラムに合わせて自然と手拍子が起こったりなんてして。

アウトロでは、ベース、ギター、ドラム(ビスたん)のソロフレーズのときに一人ひとりをしっかりと指し示す場面も。そして「御歳39歳、がんばりました!(斎藤さん)」の声を最後に再びビスたんと入れ替わり、貴雄さんがドラムに戻る。まったく申し訳ない話なんだけど、この瞬間までビスたんがドラムを叩いていることをすっかり忘れていて……。普段ご自身が叩いているドラムと配置も違うだろうに、まったく違和感のない演奏をしていたビスたんにも拍手喝采だ。

続くゲストは「友達というか……ファンが紛れ込んでいる」と斎藤さん。「桜のあと(all quartets lead to the?)」のMVにも出ていた、UNICITY市民のukicasterさん(ハンブレッダーズ)だ。とすると当然、演奏される曲は「桜のあと」。

わたしはハンブレッダーズのことは正直よく知らないんだけど、上から見ているだけでも、ukicasterさんがどれだけユニゾンを好きなのかはよく分かる。楽しそうに歌い、弾き、でもどこか「主役は3人だから……」と前に出るのをためらうような。そんな彼に、田淵さんが「いいんだよ、真ん中に行きなよ」と促すようジェスチャーで示す。それを契機に、メンバーと向かい合ったり、ステージの中央でギターを高らかにかき鳴らしたり。演奏中に”先輩“として振る舞う姿も、20年続けてきたからこそ見られた景色だなと思うと感慨深かった。

貴雄さんのスーパーかっこいいドラムソロに続けて演奏されたのは、耳馴染みのあるあのイントロ。何度も繰り返しながら「もう一組」ゲストがいることを告げる斎藤さん。焦らして焦らして……、出てきたのは東京スカパラダイス・オーケストラのホーン隊。もうね、叫んでしまった! 始まったのは「君の瞳に恋してない」。田淵さんと遊ぶように楽器を振り回すスカパラの4人、そして田淵さんもそれに呼応するかのようにベースを振り回す。音の厚さもとんでもないし、目で見ても楽しい。

さらにさらに、同編成のままで「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」。そうか、それをホーン隊とやる手があったか……! 音があまりに圧倒的だから、普段は田淵さん・貴雄さんだけがコーラスする中盤の<東の空から夜な夜なドライブ>(1~2回目)、斎藤さんも早めにユニゾン(斉唱)で加わる。それを煽るように不穏な音をかき鳴らすサックスや金管。

そうしたすべてをかき分けて、いや従えて、斎藤さんのギターソロが炸裂する。ユニゾンのライブはもう何十回も見ているし、この曲のギターも数え切れないほど聴いているけれど、ぶっちぎりで過去一のかっこよさだった。何もかもを従えて絶対的王者となったあのギターソロ、一生忘れないと思う。

スカパラがはけるとき、谷中さんがメンバーに声をかけてくれて。斎藤さんには「奇跡みたいな3人だよ! スカパラは9人だから、ユニゾンは3倍のちからを出してるっていつも話してるんだ。さざんがきゅう!」、たかおさんには「ドラムソロすごかったよー!」田淵さんには「曲も良いし、パフォーマンスもすごいね!」って。同じ事務所で長くユニゾンを愛してくれる、そして異次元にかっこいい音楽を鳴らし続けているスカパラからの惜しみない賛辞、自分がなにかを褒められるよりもずっとうれしかったな。斎藤さんも「かっけ~」とため息交じりに。

ここから再度、USGフィルがフルオケ編成に。華やかすぎる最新曲「いけないfool logic」だ。弦、木管、金管、すべての楽器がとにかく目まぐるしく動く、動く。わたしこの曲の譜面渡されたら多分泣いちゃう……できなくて……(笑)。続く「シュガーソングとビターステップ」は、オブリガートがあまりに美しい多幸感あふれるアレンジ。今後のライブ全部このアレンジの同期を使いませんか、と言いたくなるくらいに化けていた。最後の大サビではオケのメンバーが全員立ち上がって演奏。会場の熱狂と狂騒も、否応なく最高潮に達した。

「特別すぎる夜を一緒に過ごしてくれてありがとうございました。次で最後の曲です」。斎藤さんの声を皮切りに、一瞬の静寂が訪れる。チューニングをするかのように鳴らされたAの音が、少しずつハーモニーへと切り替わり、聴き慣れたイントロを奏で始めた。あんなに聴きたいと熱望した「オーケストラを観にいこう」だけど、この曲が始まってしまえば、この夢のような時間は終わってしまう。

1サビと2サビで鳴らされている楽器の数が結構違っていて、少しずつ音が重なって厚くなっていくんだなとか。<タクトみたいに揺れ動く>で思わず翼さんの指揮棒を凝視してしまったりとか。ああ、オーケストラが背景になると斎藤さんの声もより深みを増して響くんだなとか。どこか冷静に、だけどずっとずっとフルオケで聴きたかったこの曲を一音たりとも逃すまいと、全神経を集中させる。

そして迎えたアウトロ。これは武道館にいた1万人超のなかでわたしだけの感情だと思うけれど、最後のピッコロの連符を生演奏で聴けたことで涙をこらえきれなくなった。初めてこの曲を聴いた瞬間からわたしの心を鷲掴みにして離さなかった、キラキラとした軽やかな連符。中学・高校時代に文字通り命を削って吹き続けた、なんの衒いもなく「わたしの青春だった」と言い切れる大好きな楽器の音が、最愛のバンドの楽曲をさらなる煌めきで彩る。しかも、視界には黄色と白の紙吹雪が美しく舞う。別の曲だけれど、<綺麗すぎて忘れられないような景色になる>とはこのことだろう。

あまりにも特別な夜を終え、ステージ上で互いを称え合う3人+ナリハネさん、翼さん。ちなみに、翼さんと田淵さんは握手、貴雄さんはハグ、斎藤さんはハイタッチを交わしていて。この三者三様さがUNISON SQUARE GARDENだなと笑みがこぼれた。マイクを通さない「ありがとうございました!」の声に続いて起こった盛大な拍手は、USGフィルの最後の1人が舞台を降りるまで鳴り止むことはなかった。


長く書き散らしてきたけれど、実際のところは「本当に幸せだった」の一言に尽きる。大好きなUNISON SQUARE GARDENの音楽を、大好きな鍵盤楽器や管楽器がさらに輝かせていたのは、想像の何億倍も幸せなことだった。斎藤さんが「今日が生きてきて最大のご褒美かもしれない」と言っていたけれど、わたしも同じ思いだ。

音楽を、管弦楽を、UNISON SQUARE GARDENを好きでいて、本当に良かった。ありがとう、わたしは本当に幸せ者だ!

ロックバンドのファンも、やっぱり楽しい!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?