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映画感想文「前科者」世の中には2つの世界がある。有村架純と森田剛の演技を堪能

16歳の時、世の中には二つの世界があることを知った。

ファミレス、ファーストフード、工場の配送等々、学校で禁止されていたアルバイトで出会った同年代の友人たちは、片親だったり家が裕福でなかったり、いわゆる経済的に恵まれない家庭に育った人ばかりだった。

給食費の月2700円さえ四苦八苦した私も、ご多分に漏れず貧しい家庭に育った。

しかし学校に行くと、そこには大学進学を目指し高額の塾に通う同級生ばかり。生活の心配をせずに毎日を暮らしているみんなが、ひたすら眩しかった。

犯罪や非行の人の更正を助ける「保護司」の阿川佳代(有村架純)は、コンビニで働きながら様々な前科者に寄り添い更正させることにやりがいをもって取り組んでいた。 彼女の担当する工藤誠(森田剛)は過去に重い罪を犯していたが、服役後は真面目に自動車整備工として働き、もう少しで仮釈放期間が明けようとしていた。

しかし順調に見えた復帰を前に、忽然と姿を消してしまう。

なぜ、工藤は消えたのか。彼の過去が明らかになると同時に保護司になった阿川の壮絶な過去も明らかになる。

阿川が初めて担当した斉藤みどり(石橋静河)の語る「世界でいちばん不幸な家庭に育ったと思ってた。でも服役したら私みたいな人ばかりだった」がしみた。

親は選べない。そして過去も取り戻せない。それでも憎しみの連鎖を自分のところで終わらせることが、本当の勇気なんだとしみじみ思う。

そして信じてくれる人がひとりでもいることが、その勇気を与えてくれる。

有村架純の持つ、真面目さと弱さも垣間見える個性が、役にリアリティーを生んでいる。もともといい女優さんだが、こういう少し薄幸な役をやらせると抜群にいい。昔の山口百恵的な匂いを感じる。

そして森田剛、若葉竜也が好演。

地味だけど良き映画でした。

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