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映画感想文「トゥー・レスリー」圧巻の演技。些細なキッカケで人生は変わる

あれが転機だったと、振り返ればわかる。

小学生の時、スカートめくり(今もあるのかは知らないが当時は流行ってた)されても何も言えずに涙を浮かべるような、内気な子供だった。

それなのに。ある日、何かの拍子にクラス内のミーティングの司会進行をやる羽目になった。

いやー、無理でしょ。と我ながら思った。

だけど。実際にやってみたら意外とスムーズにできて、さしたる問題も起きなかった。

それから、私の人生は180度変わった。

なぜだかチャンスをくれた先生には、心から感謝をしている。

そんな風に。人は些細なきっかけで這い上がったり転落したり、する。

ハリウッドのメジャースタジオ作品ではないインディーズ映画にも関わらず、主演のアンドレア・ライズボローがアカデミー賞主演女優賞にノミネート。という快挙を成し遂げた作品。

そのニュースに興味を持ち、観に行った。

米国アリゾナ州に住むシングルマザーのレスリーは、高額の宝くじに当選。なのに酒に使い果たしてしまい、やがて家賃が払えず住む場所さえ失ってしまう。そんな彼女がある出会いをきっかけに変わろうと奮闘する姿までが描かれてる。

物語の中盤過ぎまでだいぶ長い時間は、彼女がとことん落ちていく様が、これでもかと描かれる。典型的なアル中でだらし無い母親でふしだらな女で嘘つき。周囲からも蔑まれている。

その姿が息を呑むほどリアルで苦しい。そして毎回の彼女の間違った選択を前に、なんでそうなるのか?と激しい怒りすら覚える。あーあ、と。何度もため息をつく羽目になる。

でもそれは、きっと。そんな危険が自分の周囲にもあることを無意識に悟ってるからだ。自分もいつ、そちら側にいくやも知れぬ。そんな恐怖を誰しも抱えており、それが怒りに転換されてく。

宝くじに当選し、テレビクルーのマイクを前に彼女がはしゃぐ姿が冒頭に出てくる。知性のかけらも感じられないそのはしゃぎぶりが、その後の人生を予兆してるようで、限りなく物悲しい。

この映像が最後に伏線回収されてく様が小気味良い。

そして何より、アンドレア・ライズボローの演技。

息子を思う母の姿。酒を求めて街を彷徨う姿。バーで男を誘惑する姿。周囲に嘘を重ねる姿。人の情けに気付きやり直そうと決意する姿。

七変化する姿が見事に演じられており、これは確かにアカデミー賞ノミネートだわ、と納得。

ティーンエイジャーの息子を演じるオーウェン・ティーグ(次回作に主演作が控えてるらしい)、古い友人を演じるアリソン・ジャネイ(過去にアカデミー助演女優賞受賞歴あり)らの演技も非常に印象に残る。

地味ながらとても良い作品。

些細なことで人は変わる。自分も誰かに少しでも、良い方の転機を与える事のできる行動を取りたいと、強く思った。

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