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映画感想文「市子」杉咲花が優勝。純真で妖艶、明るくて孤独。まるで万華鏡なひとりの少女の人生

杉咲花がともかく凄い。

純真で妖艶。あけっぴろげで明るく、なのに掴みどころなく謎めいてる。

そんな風に相反する面をみせる演技に引き込まれる。

少し前に公開された「法廷遊戯」でもぶっ飛びの演技であったが、本作も然り。凄い女優さんだ。

大竹しのぶの後を継ぐのは彼女に違いない。これから彼女の作品は全て観ることを誓う。

プロポーズした翌日に失踪した市子(杉咲花)。

彼女を探す恋人長谷川(若葉竜也)。だが、3年間共に暮らしてきた彼女の失踪に全く心当たりがない。

諦めのつかぬ彼は、次々と市子の過去を辿っていく。

その度に現れる、彼女の意外な顔。戸惑いつつも、会いたい一心で彼は探し続ける。

若葉竜也もうまい。

こういう、愚かさと紙一重の真っ直ぐな役がとても似合う。正に適役。キャスティングの勝利。

そして、驚いたのはノーマークだった中村ゆり。

紋切型の悪い母親ではない。だが、良い母親でもない。そんなどこにでもいそうな女が妙にリアルであった。

他にも宇野祥平、森永悠希など芸達者が出演。出演者の演技がいずれも素晴らしく、最後まで息を詰めてスクリーンを見守る。

何より杉咲花の一挙手一投足から目が離せない。シーンごとに表現の幅が豊かで沁み渡る。

観終わったあと、重くて切ないため息が漏れる。

ひたすら、生きる力に圧倒される。どこかにある、こんな現実。この人生の前にはどんな言葉も詭弁となり意味をなさない。

杉原花の凄さを再確認する作品

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