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映画感想文「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」昭和の熱い青春に胸打たれる、案外良くて超おすすめ

こんな作品を送られる人生に嫉妬する。

なんて素晴らしい生き様なのか。

今は亡き若松孝二監督への愛が溢れてて、胸がいっぱいになった。

助監督を務めていた弟子達。作品によく登場していた俳優。彼が1982年に名古屋に作ったミニシアターの支配人。

そんな彼らが若松監督と出会った青春の日々の物語である。

1980年代の名古屋。映画を仕事にしたいと夢見て文芸坐へ。しかし結婚を機に故郷に帰りセールスマンをしていた木全(東出昌大)。

夢破れ悶々とした毎日を送る彼の前に現れたのは、ピンク映画全盛期に名を馳せ、その後は「水のないプール(1982年、内田裕也主演)」等の商業映画で活躍していた若松監督(井浦新)であった。

飄々とした調子で、今度自分が作る映画館の支配人になって欲しいという若松監督。

勢いに押され引き受ける木全。だが、二つ返事で引き受けたものの、経営はなかなかうまくいかない。

それでも嬉々として映画を提供する側にたち、映画に関わり続けることに誇りを持つ木全。

そんなシネマスコープには、映画監督を目指す浪人生井上(杉田雷麟)、映研に所属する大学生金本(芋生悠)など、映画を愛する若者たちが次々と引き寄せられてくる。

彼らが心の中のモヤモヤをぶつけ合う様が正に青春で、どのセリフも的確すぎてジーンとなる。

そして映画作りに妥協はなく、弟子を容赦なく怒鳴りつけ蹴り飛ばす若松監督。しかし時に見せる不器用な温かさが、めちゃくちゃチャーミングである。

自分のもとにきた弟子を4年で監督として育て上げると決めていたらしい。それが故の厳しさだったんだろう。愛の鞭、ってやつだ。今どきは流行らないけど。

でもねー、これはほんとに大好きになっちゃう。と、納得。

でもって、演じている井浦新。

最初は誰だかわからなかった。それくらい化けてびっくりした。この人、すごい俳優だ。見た目を寄せてるのは勿論のこと、微妙な東北訛りや仕草が(みたことないので多分、だけど)板についてて、井浦新に見えない。

昭和の無秩序で暑苦しい感じが満載。ある種の郷愁を感じるし、むしろもはや新しい感じも受ける。

何より底抜けにあったかく、ほろりとされられる映画でおすすめ。何より、没後にこんな作品を弟子達が作ってくれる人生が、本当に本当に素晴らしい。

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