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映画感想文「共に生きる」ダウン症の書家、金澤翔子のドキュメンタリー映画

共に生きる、が上手じゃない。

些細な言葉にひとり勝手に傷付いたり、ちょっとしたことが気になってイライラしたり。

親も先生も煩わせない、自律した子供だった。それが、長じてからは私を苦しめる欠点ともなった。

だけど、もはやどこから直していいのか分からない。手探りで試行錯誤の訓練中だ。

だからこの映画の主人公、書道家金澤翔子の笑顔はひたすら、眩しかった。

彼女は生まれてすぐにダウン症と診断された。普通の小学校に通えず友達もいない中、母に師事し、5歳から書を始める。

めきめきと頭角を表し、20歳の時に開いた初めての個展は2000人が訪れ、大盛況。それがきっかけとなり、大河ドラマの題字を任されたり、京都の建仁寺をはじめ国宝級の神社仏閣に書を求められたりと、いまや、引っ張りだこの大人気だ。

大勢の前で書を書き上げるパフォーマンスでは、周囲ににこやかに手を振り、時に戯けた姿を見せる。

個展では訪れる人と笑顔でハグしあい、全身で喜びを伝える。

ビジネスシーンでは口論になる大人たちを前にし、仲良くしようと涙を浮かべる。

うまく書こうという欲なんてない。ひたすらみんなが喜んでくれるから書く。そして、好きだから書く。

常に無心で真っ直ぐで周囲を魅了する。

まさに「共に生きる」だ。

絶望の中で我が子の可能性を信じ続け、二人三脚でここまで辿り着いた、母の凄さにも圧倒される。

79分のドキュメンタリー映画。上映館少ないけどかなりおすすめ。じわりと知らぬ間に頬を涙が伝う。

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