映画感想文「ブルーバック あの海をみていた」海辺で育った少女が自らのルーツを辿るリフレクション映画
親の影響は大きい。
関係性が良くても悪くても。
特に母ひとり子ひとりであれば、尚更のことだろう。
海上で仕事中の海洋生物学者のアビー(ミア・ワシコウスカ)。そこに海辺の村で暮らす母が倒れたという知らせが入る。
仕事を放り出し、母の元へ駆けつけるアビー。
海を一望する高台に建つ自分が育った家で、言葉が話せなくなってしまった母を看病しながら、子供時代を振り返る。
海を愛し自然を愛し、環境を壊す開発を防ごうと住民運動を続けていた母。
幼い頃はそんな母が少し恥ずかしかった。そしてもっと違うアプローチがあるのではないかと悶々とした。母との距離が近いだけに、その存在が息苦しかった。
しかし、気が付けば母とは異なるアプローチで海を守ろうとしていることに思い当たるのであった。
これはひとりの女性が子供時代を反芻し、親を理解し直すというリフレクションの過程を描いている。
誰でも大人になって、大なり小なりこんな経験をしている。私自身も彼女のリフレクションに自身のそれを重ね合わせ、なんだか気恥ずかしく少し苦い思い出が蘇った。
舞台となるオーストリアの海の美しさが素晴らしく、スクリーンを観ているだけでもまるでリゾート地にいったかのような爽快感が得られる。
更に彼女の生家の海辺の家がとても素敵で、こんなところに住めたらなと思う。よって開発したくなる側の気持ちも少し理解でき、改めて俗人である自分を自覚した。
爽快感のある作品である。
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