見出し画像

映画感想文「人間の境界」ポーランド国境で起きている難民問題を世に問う衝撃作

衝撃。

こんなことが起きてるなんて知らなかった。

欧州の入り口となる、ポーランド。ベルラーシとの国境は約200キロに渡り、鉄条網が張りめぐらされてる。この国境を目指し、中東やアフリカなど、政情不安定な国から違法に亡命してくる人が後をたたない。

ベルラーシはロシアから戦闘員も受け入れているという。よってベルラーシからの受け入れはポーランド、そして欧州にとって大きな脅威となる。

2021年ポーランド政府は非常事態宣言を発令。国境警備隊が見張り、違法者はベルラーシに送り返されることになっている。

それでも年間2万人もが亡命しようと試みるという。

そんな国境を超えようとする難民家族を中心に、国境警備隊、難民を支援しようとする活動家達をそれぞれの立場から描く。

終始モノクロ映像。まるでドキュメンタリーのように撮影された映画である。

命からがら祖国を抜け出し、国境付近の極寒の森を越えようと試みる。その結果、捕まったり、射殺されたり、森の中で亡くなる人々。それでもそこに希望を持たざるを得ないくらいに祖国の惨状は酷い。自分たちはもはや仕方ない。でもせめて子供達の未来をなんとか変えたい。そう考え子連れで挑む。

悲惨さに、胸が痛む。

そして、それぞれの言い分に納得もしてしまう。

未来を変えようと国境越えする難民たちのことはもちろん、国を守ろうとする政府の言わんとすることもわからないではない。

確かに非人道的だ。あってはならない。それでも危険な工作員も混じってる可能性がある越境者。自分がその立場なら両手をあげて受け入れることができるだろうか。いや、やはり苦悩するに違いない。

それは国境がない日本に生まれた身には理解できない恐怖だ。

ジャーナリストや支援団体の立ち入りも禁じられているという国境。ここでなにが行われているか、物語とはいえ映画という形で表現することには大きな意味がある。

多くの人に知らしめること。映画はそれを成し遂げる有効なツールである。あらゆる障害や困難があっただろう。それでもこの現実を取り上げた監督はじめ関係者の皆様の勇気を讃えたい。

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?