映画感想文「雪豹」高山に暮らす人間と動物の共生を描くチベット映画
幻想的な作風に魅せられた。
そして、チベットの山村の美しさにひたすら敬服した。
先日行われた東京国際映画祭でグランプリを受賞した作品、チベット映画「雪豹(ゆきひょう)」である。
初めて名前を聞く動物である。この雪豹が、いわば主人公の作品だ。
実は、この映画を観ようと思っていたわけではない。
東京国際映画祭のグランプリ受賞作品に申し込んでいたら、この作品が受賞したというわけだ。
この映画祭では、受賞作品はいずれも1900からの上映であり、その直前に受賞作品名が発表される。
ギリギリまで会社で仕事をしていた私は、自分がこれから何を観るのかも知らずに、バタバタと映画館に向かったのである。
そして、入り口にもなんの告知もなかったので途方に暮れ、もぎりのお姉さんに「あの‥これから、何が上映されるんですか」と聞き、初めてこれから何を観るのか知った次第である。
(蛇足だが、映画チケットはQRコードである。なので、映画チケットをもぎることは基本的にしない。よく考えればもぎる、という言葉自体、つい使ってしまったが、もう死語なのかもしれない)
雪豹は、中央アジア山岳地帯に生息するという、白いヒョウである。肉食動物だ。
だから、高山に住む人々の飯のタネである、羊を襲ったりもする、いわゆる迷惑な生き物でもある。
この物語は、山で修行し高僧になったある青年が雪豹と出会い、テレパシーを交わし合うかのように心を通い合わせていく話である。
余計なものを削ぎ落としていく青年はいつの間にか、この気高く神秘的な生き物と通じ合える次元へと到達しつつある。
俗世間に生きる、彼の兄、テレビ局の撮影隊の存在との対比が鮮やかだ。
どうやって撮影したのかと息を呑むような雪豹の姿が堪能できる。
こんな風に普段観ないジャンルの映画を観るのもオツなものである。東京国際映画祭、おすすめ。
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