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映画感想文「越境者たち」過酷な冬山よりもエゴ剥き出しの人間が悲しく恐ろしかった映画

どんな戦争も、結局は領地の奪い合いである。

何十年も前の高校時代。歴史の先生が授業の度、口にしていた。当時は全く刺さらなかったが大人になるにつれ身に沁みる。

それを本作でも思い出した。

妻を亡くし傷心のサミュエル。雪深い山小屋で週末を過ごす。そこで出会ったのはアフガニスタン難民のチェレー。彼女はフランスへ亡命するため、アルプスの山越えをしようとしていた。

しかし冬のアルプスの自然以外にも、あらゆる妨害がやってくる。

というお話。

エグい話も出てきて、ホラーでもないのに背筋が寒くなった。なにしろ、欧州諸国において、一般市民からいかに難民受け入れが忌み嫌われているか、がリアルに伝わる。

よそ者は俺らの領地にやってくるな。俺らの仕事や家や食べ物を奪うな。おまえらには権利がない。

という感じ。

いやー、気持ちわかるところもあるけど。それでも見てて辛い。そこに人の闇が見えるから。

こんな風に思うのは島国に住む日本人の能天気さなのか。地続きで国がより合ってる欧州の国境における過酷さを痛感する。

サミュエルの行動がある種の贖罪となっており、それも沁みた。

ということで、雪深い冬の雪山、という過酷な舞台であるアルプスの大自然以上に人間が恐ろしかったという感想である。

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