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映画感想文「燈火は消えず」時代の変化に巻き込まれる母娘の悲哀と希望

夫が亡くなった。

腕ききのネオン職人だった。

若かりし頃、夫婦が出会ったのもネオンの前だった。いまは撤去されてしまった「ネオンのあった場所」を見上げ思い出に浸る妻(シルヴィア・チャン)。そこに夫の弟子を名乗る見知らぬ青年が現れる。

そこから、親子のような2人の互いの孤独を分かち合う旅が始まる。

かつて100万ドルの夜景と揶揄された香港。私の記憶にあるのもわい雑なほどのギラギラしたネオンに溢れた姿だ。しかし現在では、法律でネオンは取締られ、いまや面影はないという。

時代の変化と共に無くなっていく仕事。そして変わりゆく街。

抗いようのないその変化に、ちくりと胸が痛む。

初老の妻役のシルヴィア・チャンがあまりに可憐で美しく。そして、繊細な心情を表す演技も秀逸で感動した。

そして、この人、他に何出てたっけな?とググって知った、御年70歳。いや、見えない‥かつての八千草薫なみに可憐だ。とまた感銘を受ける。

相手役の青年役のヘニック・チャウも良い。気の利いた感じではなく。少し抜けたところのある朴訥とした役を好演。

この人の抱える事情もまた切ない。

どこの街にもいそうな、時代の流れのなかで懸命に生きる市井の人々の姿に胸打たれる。

またそこに好対照なプチエリート、シルヴィア・チャンの娘(セシリア・チョイ)を持ってきたのも高ポイント。

香港を捨てて海外移住を夢見る新世代。親子でありながら価値観の異なる母娘を配することにより、分かり合えない悲哀と、世代が受け継がれていく希望が混ざり合い、時代の変化に翻弄される人々を描く普遍的な作品に仕上がっている。

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