映画感想文「海がきこえる」王道青春アニメ。あの頃をやっと理解、甘酸っぱさに満ちた作品
甘酸っぱさに、胸がいっぱいになった。
王道のThe 青春映画。
30年前に公開されたスタジオジブリのアニメ作品。少女向け小説コバルト文庫で名を馳せた氷室冴子の小説が原作。
高知県の高校が舞台。進学校のなかで成績は中の上、反骨精神もそこそこの杜崎。親友は真面目で優しい学級委員の松野。
そんな2人の高校生活に、東京からの転校生リカコが現れる。
美人で成績優秀、スポーツも万能の彼女は注目の的となる。しかし学校に馴染めず浮いた存在だ。
しかし彼女にも事情がある。誰にもそれを語らない。そもそも自分でもよく整理できていないから。
劇的なドラマはない。
だけど、杜崎と松野の男子ふたりの言葉に出さないがお互いを思い合う固い絆(男子ってこうだよね)、そして男子特有の良くも悪くも鈍さ。一方で女の子の妙な潔癖さや残酷さ、脆さ、不安定な気まぐれ。
そんなあれこれが、余す所なく表現されてる。
こういう普遍性はアニメだからこそリアルに描ける。演じ手の個性が邪魔しないのでかえって普遍的なものが伝わるのだ。
瑞々しさが、じわりと沁みる。
初見。しかし公開時に観ても、この良さがわからなかったかもしれない。
だいぶ大人になり、遠のいてこそわかる。あの頃が、二度と戻らないかけがえない時間だったこと。当時の自分の気持ち。そして相手の気持ち。
甘酸っぱさを追体験できる、貴重な作品である。青春から遠のいた人にこそ、おすすめ。
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