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映画感想文「アイアンクロー」愛と束縛は紙一重。マッチョな家族の悲劇。ため息漏れる力作

プロレスは詳しくない。

辛うじてジャイアント馬場とアントニオ猪木がわかる程度だ。よって、当然ながらこの映画で取り上げられている、プロレスラーのフォン・エリック家のことは全く知らない。

父親は元チャンピオン。しかし自分が果たせなかった夢を息子4人に託し鍛え上げる。それは愛なのか束縛なのか。妥協を許さないその執念は知らぬ間に子供達を追い詰める。そこに愛があるだけに尚更やっかいだ。

一家はとても仲良しだ。

兄弟4人で筋トレし試合に出て、また家で共にトレーニングする。団結力がすごい。

オフもフットボールをしたり、川下りしたり、いつも一緒だ。彼らのじゃれあう様は微笑ましい。この平和が永遠に続きますようにと思わず祈りたくなる。

しかし次々に不幸が襲う。そして世間から呪われた一家と呼ばれる。

ひたすら強さを目指すマッチョ思考。プロレスで成功すれば幸せになれると信じる父親。暴君な夫から子供を守ろうともせず何かあればひたすら祈るだけ。神の御心に従えば幸せになれると信じる母親。

そして親を愛し、期待に応えようとし、逃げ場がなくなっていく子供達。

父も母も子供達を愛し、家族を愛していた。それでもこれは毒親だ。

後半は次男のケビン(ザック・エフロン)視点で描かれる。家族を愛し、家族に呪われた彼が、妻であるパム(リリー・ジェームズ)と出会い、自らの家族を作っていく様が興味深い。

最近、大躍進のA24制作。愛と束縛は紙一重だと深いため息が漏れる力作。

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