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映画感想文「AALTO」2人の妻と共に仕事を成し遂げた密度濃い建築家の人生

もう10年ほど前になる。

フィンランドのアアルト邸を訪ねたことがある。とびっきり居心地良く、すっかり気に入ってしまった。

恥ずかしながらそれまでずっと、彼を家具デザイナーとして認識していた。本来建築家であることは、フィンランド観光で買い求めたガイドブックで知ったのだった。

自ら建築した家にあつらえるために家具も手がけることとなったという。

そんなアアルトのドキュメンタリー映画。

まず、印象的なのは、彼が非常に人たらしであったことである。

米国で有名になったのは最初に大富豪のロックフェラー家がバックについてくれたから。周囲の友人たちへのインタビューでも、会う人を次々と魅了した彼の人たらしぶりが語られている。

確かに外見だけ見ても、パリッとした出で立ちで好男子の彼は誰からも好かれただろう。

やはり才能だけではなくやり手であったからここまで名を残すことができたのか。

そして、この映画で登場する彼の2人の妻。いずれも彼の有能な仕事のパートナーであった。この時代(1898年生まれ)の夫婦にしては珍しい関係である。

まず、最初の妻アイノ。彼と同じ工科大学を出た4歳年上の建築家。

彼の妻として陰に隠れているが、共に家具デザインのアルテック社を興し、イッタラのグラスで高い評価を得た人物。アアルトの建築する家のテキスタルデザインを手がけインテリアデザイナーとして活躍した。

彼の功績には彼女の力が欠かせなかったに違いない。

しかしアイノは40代で病に倒れる。悲嘆に暮れた後、3年後に再婚したエリッサ。彼の事務所で働く建築家の卵であった。

年齢はだいぶ若いものの、彼女もまたアイノと同じように彼の右腕となった。一心同体で共に精力的に仕事を成し遂げた。

78歳で亡くなるまで現役で働き続けたアアルト。個人の住まいのみならず、大型の公共建築も多く、200を超える建築物を残している。凄い仕事ぶりである。

この映画の素晴らしいところは、彼の建築した多くの建築物を時系列に見ることができることだ。しかも、ドローンを駆使したであろう俯瞰ショットで。なんと贅沢なことか。

機能的でありながら温かい。という相反する特徴を持つ彼の建築を訪ね、またフィンランドを旅したい。

フィンランド観光したくなる映画である。

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