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【SaaSとは?】初学者が決算資料楽しめるまでに知っておくべき知識まとめ

こんにちは、橋本裕太です。
現在は大学4年生をしながら、内定先のSaaSのプロダクトを扱う事業部にて内定者インターンをしております。

内定者インターンに取り組んでいる中で、もっと上流から理解できるようになりたいというのと、シンプルな興味関心でSaaSの勉強をしていたのですが、思ったより知らない単語が多くありました。

2年前にSaaSに関してもはや一般教養と言われてるくらいなので、このnoteを見てくれているほとんどの人がSaaSとは”Softwear as a Service”の略であるとか、代表的な企業として名刺管理のSansanやチャットツールのChatworkなどが挙げられることなどは理解して頂けてるのではと思います。
(まだ知らないよって人は以下の記事が参考になると思います!)

しかし「ARR」「DAU」「ARPA」と聞いて意味を完全に理解できる人はどれくらいいるでしょう。

これらはSaaSの事業を分析するうえでかなり重要な単語・指標ではあるのですが知らない人も多いと思います。(実際僕も勉強する前はさっぱり知りませんでした)

今回のnoteは、これを読むことでSaaSへの理解度を一般教養レベルからIR読んでみておもろいと思えるようになるレベルになるというのをゴールとしています。

特に
SaaSに興味のある学生
★SaaSに関して一般教養レベルの知見がある方

に見ていただけると物凄く参考になるのではと思います。

SaaSの事業を深く理解するために必要な単語を解説していく形でまとめていますので、時間がない人は目次の方から気になる単語や知らない単語をクリックする形で見ていただけると幸いです。
もし間違いがあればご指摘いただけると大変喜びます)

SaaSを深く理解するための単語集

ARR

ARRとはAnnual Recurring Revenueの略であり、日本語訳すると「年次 繰り越し収益」の事を指します。
これは一年でどれくらいの収益を得ているかの指標になり、SaaS企業を見る上でとても重要な指標になります。

これまで売り切り型のビジネスモデルでは
「商品単価×商品数」で算出される売上
で評価されていたのが、SaaSのようなビジネスモデルであれば、解約率が一定以下という条件下においては収益が年々積み上がっていくことになります。
つまり最初に赤字を掘っても中長期的に黒字転換が見込めるかどうかがSaaS企業を見る上でとても重要な指標となります。
(実際にマネーフォワードは2017年に大幅な赤字を計上しつつもマザーズに上場しています)

そこで重要視されるのがARRであったりARRの成長率になります。

SaaS企業においてARRの変動や成長率が重要な指標となると話したのですが、ARRの成長要因としては①新規顧客獲得②既存顧客のアップグレート・アップセルが挙げられます。

アップセルとは、顧客が買おうとしている商品より価格が高い商品を進める販売手法であり、、クロスセルとは、商品を購入した方に別の商品も進めて買ってもらうことです。

普通のハンバーガー買いに来た人に期間限定黒ゴマバンズスペシャルバーガーを買わせるのがアップセルで、普通のハンバーガー買いに来た人にポテトのセットを買わせるのがクロスセル

ちょっと話それましたが、ARRについて詳しく知りたい人は以下noteで解説しているのでご覧ください。

MRR

MRRとはMonthly Recurring Revenueの略であり、日本語訳すると「月次経常収益」の事を指します。

ひとつまえで解説しているARRについて理解している人であれば簡単に理解していただけると思いますが、ARRが年間の経常収益であるのに対して、MRRは月次の経常収益になります。

Sansan株式会社 2022年5月期第2四半期決算説明資料より抜粋

決算資料には実際こんな感じで記載されています。

ここでは詳しく書きませんがMRRにも
①新規顧客から得られるMRR
②既存顧客のダウングレードによるMRR
③既存顧客のアップグレードによるMRR
④当月に解約した企業から得ていたMRR

の4種類に分解することができます。

SaaS企業の成長フェーズによって重要視すべき観点が異なる上に、MRRを大きく4つに分別する事で、現状の課題の分析と施策出しが可能になります。
MRRについてもっと詳しく知りたいという方は、以下のnoteで解説しているので、ぜひご覧ください。


チャーンレート(Churn Rate)

顧客がサービスを解約することをチャーン(Churn)と呼び、解約率を示すチャーンレートはとても重要な指標になります。

サブスクリプション型のビジネスモデルにおいて、解約率がなぜ重要な指標かというと、解約率が高い状態というのは、穴が開いているバケツに水を入れ続けているような状態で、マーケティングやセールスがいかに契約数を増やしていっても全体的な収益(MRR・ARR)の向上に至らないからです。

また一般的に、既存顧客の維持よりも新規顧客の獲得の方が圧倒的にコストがかかるため、既存顧客の解約を防ぐことはとても重要視されています。

チャーンレートについてSaaS企業の実態やベンチマークすべき数値を知りたい方は以下の記事が参考になると思います。

LTV

Life Time Valueの略であり、日本語訳すると顧客生涯価値となります。
これはSaaSに限らずマーケティングについての知見のある人は何度も聞いたことがある言葉だと思います。

「顧客生涯価値」と聞いてもなんぞや?と思うかもしれませんが、分解していくと「購入単価×購買頻度×契約継続期間」で計算されます。
SaaSの場合だと「購入単価×契約継続期間」になりますね。

LTVは将来的な売上を予測し、マーケティング施策に反映させるという意味でとても重要になってきます。
もっと詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

CAC

Customer Acquisition Costの略であり、日本語訳すると顧客獲得費用という意味があります。
また、同義としてCPAもよく使われます。
CPACost Per Acquisitionの略で、顧客一人当たりの獲得単価の事を指します。

結構前の動画になるのですが、こちらで青汁王子がD2C・通販における広告戦略の話で、CPAについて話しているので興味ある方はぜひ見てください。

ユニットエコノミクス

1顧客当たり儲かっているか損しているかという概念のことをユニットエコノミクスと言います。

SaaSの場合は「LTV/CAC>3x」と言われます。
つまり、LTVがCACの3倍より大きいのが健全であるという事です。

ちょっと分かりにくいかもしれないので、Mr.childrenのファンクラブを例にとってみます。
年会費3000円で、もし平均継続年数が10年だとします。(LTVを正確に出そうとすると解約率なども計算に入れるべきですがこの場合は分かりやすくすべく解約率0%にしています。)
このケースだとLTVは30000円になりますよね。(年会費3000円×10年というシンプルな計算)

つまりCAC(一人当たりの獲得コスト)が10000円以下であればMr.childrenのファンクラブの収益体制は健全であるので、初年度年会費3000円の顧客を獲得するのに5000円かけちゃってもいいという事です。

分かりにくかった方は、以下の記事かちょっと前に載せた青汁王子の動画が参考になるかなと思います。

フリーミアム

基本的に無料で使えるが、より高度な機能であったり大人数で使いたい場合は有料プランでしか使えず、有料プランで収益を確保しているビジネスモデルのことをフリーミアムといいます。

ZoomやSlack,Chatwork,Zoom,Notionなどが例として分かりやすいかなと思います。(つい先日Zoomが、無料ユーザーで1on1のミーティングでも40分の時間制限が付きましたね)

以下の画像は実際のChatworkの料金体系です。
ただ、チャットツールに関してはユーザーではないのでSNS上での情報源にはなるのですが、広告でもマネタイズしているらしいです。
(一時期Twitterで、チャットツールが広告でマネタイズすることに対する議論がなされていた記憶があります)

Chatwork株式会社 2021年12月期第3四半期決算説明資料より抜粋

また、無料ユーザー95%・有料ユーザー5%でもビジネスが成立するという5%ルールは覚えておくといいかもしれません。

ARPU

Average Revenue Per Userの略であり、ユーザーひとり当たりの平均売り上げを示す指標になります。
日本語では「アープ」と呼ぶそうです。

SaaSのプロダクトで、さっきのChatworkのようにスタンダード・プレミアムなど複数プラン・料金体系を用意しているところがよくあると思うのですが、それらを平均してどれくらいの収益を得ているかの指標になります。

契約プランを複数用意している携帯会社でもこの指標は用いられているそうです。
計算方法はシンプルに「売上÷ユーザー数」で求めることができます。

またChatworkの決算資料においても実際にARPUの記載があります。
資料中にもありますが、プロダクト価値の向上がARPUの向上につながっているとしています。

Chatwork株式会社 2021年12月期第3四半期決算説明資料より抜粋

ARPA

Average Revenue per Accountの略であり、1アカウント当たりの平均売り上げを示す指標になります。

上記で説明したARPUとそんなに違いはないのですが、違いを知りたい方はこちらの記事が参考になるかもしれません。

ARPPU

Average Revenue per Paid Userの略で、有料ユーザーひとりあたりの平均課金額を示す指標になります。

ARPPUとARPUを比較することで、収益を一部のユーザーに頼っているのかの理解ができるので、サービスの現状理解に役立ちます。

ACV

Annual Contract Valueの略で、顧客が一年間に支払う合計金額の事を言います。
例えば、Zoomの有料プランは2000円とかだったと思うんですけど、この場合のACVは2000円×12か月で24000円になります。

YoY

Year Over Yearの略で、前年比・昨対比のことを表します。
下のMoMと合わせて決算資料でよくでてくるので意味を押さえておきましょう。

MoM

Month over Monthの略で先月比のことを表します。
上記で説明したYoYと合わせて決算資料でよくでてくるので意味を押さえておきましょう。

DAU

Daily Active Userの略で、1日あたりのアクティブユーザーの事を表します。
この数値がなぜ重要視されるかは以下記事が参考になると思うので興味のある方はぜひ。

Chatwork株式会社 2021年12月期第3四半期決算説明資料より抜粋

MAU

Monthly Active Userの略で、月間アクティブユーザーの事を表します。
DAUのところで紹介している記事からこの指標についても知ることができますのでぜひ。

PLG

Product Led Growth(プロダクト‐レッド‐グロース)の略で、プロダクトの圧倒的価値をもってユーザーを増やしていくことを指し、SlackやZoomなどがPLGでユーザーを拡大してきた代表例になるかなと思います。
少し前に触れたフリーミアムで説明したように、無料プランでユーザーを拡大していき、機能拡充の際に課金するようにしてマネタイズします。

Chatworkの決算資料において詳しく説明されているので参考にしてみてください。

Chatwork株式会社 2021年12月期第3四半期決算説明資料より抜粋
Chatwork株式会社 2021年12月期第3四半期決算説明資料より抜粋
Chatwork株式会社 2021年12月期第3四半期決算説明資料より抜粋

もっと詳しく知りたい方は以下の記事や書籍が参考になるかと思います。

また、最近Twitterで話題になったように、PLGの対の考え方であるSLG(Sales-Led-Growth)や、コンテンツ主導で伸ばすCLG(Content-Led-Growth)に関しても知識を入れておくといいと思います。

こちらのnote記事、個人的にはめっちゃ面白かったです


ホリゾンタルSaaS・バーティカルSaaS

ホリゾンタルSaaSというのは、業種に関係なく特定の業務に使用されるようなSaaSの事を指します。
採用周りのSaaSや会計労務周りのSaaSなどがこれに該当します。


反対に、バーティカルSaaSとは、特定の業界で使用されるようなSaaSになります。
スマレジなんかが該当するかなと思います。

ちなみにSEOツールのような幅広い業界で使用されているが、特定の業務でしか使用されないものに関してはホリゾンタルSaaSの方に該当するのかなと思います。

もっと詳しく知りたい方はこちらの記事が参考になるかと思います。

TAM

TAMはTotal addressable Marketの略で、製品やサービスが獲得可能な最大の市場規模の事を指します。

このTAMについてはNewspicksの記事が個人的にめちゃくちゃ参考になったのでぜひ読んでみてください。(記事のURLがなぜか貼れなかったので、僕のTwitterで勘弁してください)

まあ簡単に要約すると、SaaSの特性上、特定の分野しかカバーできないというのもあり、シェアを取りまくるとプロダクトの将来性(成長率)という観点では高く評価されない。
SaaSで規模を拡大しながら高い成長率を維持しようとすると、どうしても狙いに行く市場の大きさそのものを大きくしていく必要がある
この「狙いに行く市場の大きさそのものを大きくしていく必要がある」というのがまさにTAMの拡大

実際にラクスルやChatworkの決算資料においても解説されているので、以下画像を参考にしてみてください。(ラクスルすごい笑)


ラクスル決算資料より
あと下の動画もおもろいです。
Chatwork株式会社 2021年12月期第3四半期決算説明資料より抜粋

まとめ

今回はSaaSをより詳しく理解する上で大事になってくる単語を中心にいくつか紹介しました。
もっと詳しく知りたい方は、下の方に応用編という事で記事コンテンツをいくつか紹介しています。
そちらを読んでさらにSaaSについての理解を深めてもらえばと思います。
また、もっと読みたい記事や本があるのでこの記事は定期的にアップデートできたらと思っています。(もし書いてある内容に間違いを発見した場合はご指摘いただけると嬉しいです。)
また、いいね押していただけると大変喜びます、、!

参考記事



応用記事


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