続かないあかずの扉
あまりによくあるシチュエーションだ
内容のわからない高級バイトの面接に朴訥で気の弱そうな学生が古びた洋館に向かうなど
ホラーゲーム、推理小説、幻想文学、怪奇譚、その他諸々
ミルクティーの中で揺蕩うタピオカのように見飽きた光景
今、ただ一つ違うのは
僕は金に困ってなどいない
いや、僕は、などと言うことではないだろう
あの物語の書き出しは真を捉えていないのだ
金に困ったからと言って人はこんな不明瞭なものに手を出したりなどしない
金というまるで実質的な困窮を不可解な物で解決しようとなどしない
それはただひとえに
粗野で野蛮な好奇心、血走って見開かれた目
そこに何があるか見たいという卑しい情熱と沸き立つ征服欲、いわば、本能
それ以外に、この冒険に人を駆り立てるものなどありはしないのだ
その全く卑しき野次馬根性によって今僕はこの白く物言わぬ可憐な少女のような扉を今まさにこじ開けるのだ
…
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